知ってた? センターアップにミッドシップ、バイクのマフラーの位置にもトレンドがある!?

バイクのマフラー(サイレンサー)と言えば、大抵は「後輪の右横」に配置されているイメージがあります。しかしかつてはシートの真下だったり、近年ではエンジンの真下など、マフラーの位置にもトレンドがあるのでしょうか?

2000年代初頭のスーパースポーツは「センターアップ」!

 近年のスポーツバイクの多くは、後輪の右横にマフラーを配置しており、車種によってはサイレンサーが2本出しで、後輪の左右に振り分けている場合もあります。ところがかつてのスーパースポーツ系では、サイレンサーをシートの真下に配置した「センターマフラー」がトレンドだった時期がありました。

センターアップマフラーを世に広めたドゥカティ「916」(1994年)。ドゥカティのスーパーバイクは「1199」(2011年)までセンターアップマフラーを採用
センターアップマフラーを世に広めたドゥカティ「916」(1994年)。ドゥカティのスーパーバイクは「1199」(2011年)までセンターアップマフラーを採用

 センターアップマフラーを採用するバイクをよく見ると、エンジンのシリンダーヘッドから延びるエキゾーストパイプが、スイングアームのピボット(フレームに取り付ける軸)付近を通り抜けたりと、かなり複雑に取り回しています。設計の難易度も高そうで、単純にデザインのためにセンターアップにしたわけではなさそうです。

 じつはエキゾーストパイプの長さ(管長)は、エンジンの性能に密接に関係しています。特に性能重視のスーパースポーツ系では、適切な長さを確保することで排気ガスの「抜けの良さ」や「吸い出し効果」によって、高い排気効率を得ることが必須。これによりエンジンを高回転まで回してパワーを発揮できるからです。

 とはいえバイクは寸法上の制約があるため、従来からのサイレンサーの配置(後輪の横)だと、エキゾーストパイプの管長を稼げません。

 そこで考案されたのが、センターアップマフラーです。そして史上初ではありませんが、センターアップのトレンドを作ったのは、ドゥカティが1994年にリリースした「スーパーバイク916」と言えるでしょう。

 またセンターアップマフラーのメリットは、重量物であるサイレンサーを車体の中心軸に置く(左右に張り出していない)ことで、ハンドリングの良さにも貢献しています。これにより2000年代中頃には、国産の1000/600ccクラスのスーパースポーツ系はこぞってセンターアップマフラーを採用しました(スズキを除く)。

マスの集中を狙った「ミッドシップ」

 メリットいっぱいのセンターアップマフラーですが、前述したようにエキゾーストパイプを取り回すうえでの設計の難易度のほかにも、重量物のサイレンサーが車体の重心から遠くて高い位置にあるため「マスの集中に反する」というデメリットがあります。

 レース用の軽量なサイレンサーならともかく、市販車においては排出ガス規制や排気騒音規制が年を追って厳しくなり、以前よりもマフラーやサイレンサーの構造が複雑化して重量が増すと、その影響も大きくなります。

 そこで登場したのが「ミッドシップ」や「アンダーエンジン」と呼ばれる、エンジンの真下にサイレンサーを配置する方式です。一見すると、エキゾーストパイプの長さを求めたセンターアップに反するように感じますが、実際はエンジン下で複雑にパイプを取り回すことでしっかりと管長を稼いでいます。

 その代表例がドゥカティ「1199パニガーレs」(2012年)でしょう。ちなみに現行モデルの「パニガーレV4 S」も、エンジン下にマフラーを装備しています。

従来の位置に戻った……のか?

 ところが最近の多くのスーパースポーツ系は、マフラーがかつての後輪の右横に戻った感があります。しかしよく見ると、エンジン下に大きなボックスを備え、そこにサイレンサーがつながる「ミッドシップ+サイレンサー」といった方式が少なくありません。ヤマハ「YZF-R1」(2015年~現行モデル)はこのタイプです。

 ちなみに、ホンダ「CBR1000RR」は、前身の「CBR954RR」(2002年)までは後輪の横に大きなサイレンサーを配置していましたが、2004年登場の「CBR1000RR」でセンターアップに、2008年モデルではミッドシップタイプになっています。

 そして2017年のモデルチェンジで後輪の横に戻りましたが、軽量なチタン素材を使うことで大幅に軽量化して、マスの集中化を図っています。

 さらに2020年からの「CBR1000RR-R」では、レースで有名なアクラポヴィッチ社とマフラーを共同開発し、より軽量で車体の内側に追い込んだ形状になって、一層のマスの集中化と深いバンク角を確保しています。

スポーツバイクは、ミッドシップがトレンドかも?

 このように、スーパースパースポーツ系のマフラーはエンジン性能とハンドリングを追及し、技術の進化とともにサイレンサーを配置する場所が変わってきました(他にエキゾーストパイプの構造や排気デバイスなどの進化も目ざましい)。

カワサキ「W230」のエンジン下に備わるマフラーのボックス
カワサキ「W230」のエンジン下に備わるマフラーのボックス

 じつはスタンダードなネイキッドやネオクラシック系も、サイレンサーの位置やルックスが従来通りの「後輪の横」でも、スーパースポーツ同様に技術が投入されています。

 たとえばカワサキ「W230/MEGURO S1」のエキゾーストパイプは、一見するとエンジンからサイレンサーまでまっすぐに伸びていますが、実際はエンジン下に大きなボックスを備えてマフラーの容量を稼いでいます。

 ちなみに大人気の「Z900RS」のマフラーは、いわゆるメガホンタイプに見えますが、構造的にはミッドシップに近いと言えます。

 スズキの「GSX-8S」や「KATANA」も含む「GSX-S1000」シリーズは、後輪の横に小振りなサイレンサーが見えますが、これもミッドシップタイプと言えます。

 ちなみにヤマハ「MT-09」も、2014年の初代では小振りなサイレンサー付きに見えましたが、現行モデルは完璧なミッドシップ型マフラーになっています。

 というワケで、現在のロードスポーツ車のマフラーのトレンドはミッドシップ(アンダーエンジン)タイプと言えますが、一体「次」はどんなカタチや配置が流行するのでしょうか……。

【画像】え、こんなに!? 時代によって配置が異なるバイクのマフラーを見る(25枚)

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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