ド迫力!! やっぱりバイクの「6気筒エンジン」は凄い!? 多いほどエラいというワケではないけれど……
バイクのエンジンには様々な形式があり、近年の中~大排気量モデルは2~4気筒が主流ですが、世の中には「6気筒エンジン」を搭載するバイクも存在します。ド迫力のルックスが魅力的ですが、6気筒にはどんなメリットがあるのでしょうか?
並列6気筒はメリット盛り沢山!
バイクやクルマのエンジン(内燃機関)は、ガソリンと空気を混ぜた混合ガスをシリンダー内に吸い込み、ピストンで圧縮して点火・爆発(燃焼)することでエネルギーを生み出しています。
そのシリンダーとピストン、および吸排気をコントロールする動弁系など1セットが「1気筒」になり、2セットなら2気筒、4セットあれば4気筒……となります。
現行バイクは125cc以下の小排気量だと1気筒(単気筒と呼ぶのが慣例)が主流で、中型クラスだと2気筒、大排気量だと2~4気筒がメジャーです……が、中には6気筒エンジンも存在します。
エンジンは、同じ排気量なら一般論として気筒数が多い方が高回転まで回しやすく、大きなパワーを得られます。1気筒当たりの排気量が少なくなるため、ピストンなど各部品が小型・軽量になり、圧縮工程で反発力が小さく、専門的には「ピストンスピード」も遅くなるので、総合的に高回転まで回りやすくなるわけです。
そのため、かつてホンダは世界GPロードレース用に6気筒のレーシングマシンを用意し、排気量250ccクラスの4ストローク6気筒エンジンを搭載する「RC166」が、1966年と1967年にWGP250クラスを連覇したのも有名です。

多気筒エンジンは、高回転まで回して大きなパワーを稼げる以外にもメリットがたくさんあります。なかでもシリンダーが一直線に並んだ並列6気筒エンジン(直列6気筒と呼ぶこともあり)の場合は、スムーズで滑らかに回転し、振動が少なく乗り味が快適です。
少々専門的になりますが、エンジンは様々な「振動」を発生し、クランクシャフト1回転に対して1回発生する「一次振動」や、ビリビリとクランクシャフト1回転に対して2回発生する「二次振動」が有名で、他にもクランクシャフトを捩じるような「偶力振動」もあります。
これらの振動は「バランサー」と呼ぶ錘(おもり)を装備することで抑制できますが、厳密に言えば、バランサーを回転させる分のパワーが無駄になります。
ところが並列6気筒エンジンの場合は、バランサーを装備しなくてもピストンとクランクの配置や点火順序などの構造によって、一次振動も二次振動も偶力振動も、(完璧なゼロではないが)問題ないレベルに抑えられます。
この振動が非常に少ない構造が、滑らかな乗り味を生み出し、スムーズに高回転までレスポンスする特性にも貢献しています。
と、前置きが長くなりましたが、ここからはそんな6気筒エンジンを搭載する市販バイクを紹介します。
市販量産車初6気筒は、イタリアの「ベネリ」
1950年代、60年代のレースシーンでは、モト・グッツィのV型8気筒エンジンのレーシングマシンが存在し、ホンダの「RC166」以降も、MVアグスタの並列6気筒エンジンのマシンが登場しました。しかし市販量産バイクにおいては、ホンダが1969年に発売した「ドリームCB750FOUR」の並列4気筒エンジンがもっとも多気筒でした。
1973年に、イタリアのベネリが並列6気筒エンジンを搭載する「750 Sei(セイ)」を発売し、これが市販量産車初の6気筒バイクになります。

ホンダやカワサキなど日本製4気筒に対抗するべく登場し、片側3本出し計6本のサイレンサーも6気筒エンジンを強くアピールしましたが、大ヒットには至りませんでした。OHC2バルブのエンジンの構造(ボア×ストロークや軸配置など)が、ホンダ「CB500FOUR」にあまりに似ていたのが理由とも言われています。
とはいえ1979年には、排気量を拡大した「900 Sei」に進化し、1980年代中盤まで生産されました。ちなみに、ベネリは1977年に250クラスで世界初の市販量産4気筒モデルの「250 Quattro(クアトロ)」を発売しており、多気筒メーカーとして歩んでいました。
そして1978年、ホンダから「CBX1000」が登場します。国産初の並列6気筒エンジンは、排気量1047ccの空冷DOHC4バルブで105psを発揮しますが、コレは市販量産車で世界初の100ps超えになります。
その「CBX1000」に対抗し、1979年にカワサキが放った6気筒バイクが「Z1300」になります。こちらは排気量1286ccの水冷DOHC2バルブで120psの最高出力を誇りました。
こうしてホンダとカワサキのフラッグシップに6気筒エンジン搭載車が揃いますが、ライバル社がそれに続け……とはなりませんでした。
そしてホンダ「CBX1000」は1981年に大型カウルを装備したツアラー系にモデルチェンジし、1982年が最終モデルになり、意外と短命に終わりました。
またカワサキ「Z1300」は1984年にFI化(電子燃料噴射)し、その6気筒エンジンは1983~88年まで大型ツーリングモデルの「ZN1300Voyager(ボイジャー)」にも搭載されました。カワサキの方が若干長寿ですが、国産バイクの並列6気筒エンジンは、これが最後になります。
それからしばらく間をおいて、2005年に開催された東京モーターショーに、突如スズキがコンセプトモデルとして1100ccの並列6気筒エンジンを搭載する「STRATOSPHER(ストラトスフィア)」を展示しました。
デザインは「GSX1100S KATANA」の未来版にも見えて、6気筒エンジンもいわゆるモックアップ(形だけで稼働しないモデル)ではなく、東京モーターショーでは同社の竜洋テストコースでの走行シーンも放映されました。
そのため、久々の並列6気筒バイクとして大いに注目を集めましたが、残念ながら続報は無く姿を消してしまいました……。
前述したように、並列6気筒エンジンはスムーズに高回転まで回りハイパワーを発揮し、振動が極めて少ない滑らかな乗り味といったメリットがあります。
その反面、1気筒当たりが小型・軽量になるとはいえ、シリンダーが6本も並ぶためにエンジンは幅広になります。当然ながら部品点数が多いのでエンジン重量も重くなります。これはスポーツバイクにとっては大きなデメリットといえます。
その点スズキの「STRATOSPHER」では技術的にかなり頑張って、同クラスの並列4気筒並みのエンジン幅に収め、重量もかなり抑えたと言われます。なぜ「お蔵入り」になったのかは不明ですが、もしかすると製造コストと価格のバランスが難しかったからかもしれません。
並列6気筒の現行モデルはBMWのみ
並列6気筒エンジンは、カワサキ「ZN1300ボイジャー」以降、長らく姿を消していましたが、BMWモトラッドが2009年に新型の並列6気筒エンジン「コンセプト6」を発表し、翌2010年にその6気筒エンジンを搭載した大型ツアラーモデル「K 1600 GT」および「K 1600 GTL」を発売しました。

じつはクルマ(4輪車)は、かつてはスポーツタイプや高級車では直列6気筒エンジンはメジャーな存在でしたが、近年は激減しています。理由はバイクと同じで「大きさと重さ」によるデメリットで、部品点数の多さによるメンテナンス費用なども影響しているようです。
そんな4輪界の中でも、BMWは直列6気筒エンジンを守り、低振動で滑らかな特性から「シルキーシックス」と呼ばれてきました。
このことからも、バイクの大型ツアラーに、上質な乗り味を追求した並列6気筒エンジンを採用したと考えられます。
6気筒最長寿は「ゴールドウイング」
現在販売される並列6気筒エンジンのバイクはBMWの「K 1600 GT/GTL」シリーズのみです。……が、6気筒エンジンでは水平対向6気筒を搭載するホンダの「ゴールドウイング」が存在します。

水平対向6気筒エンジンは、並列6気筒と同様に一次振動と二次振動はほぼゼロで、偶力振動はあるものの問題にならないレベルのため、乗り味はやはり、極めてスムーズで滑らか、日本を代表する大型クルーザーにふさわしいエンジンといえます。
ちなみに「ゴールドウイング」は、1988年発売の「GL1500」で初めて水平対向6気筒エンジンを搭載し、進化・熟成を重ねながら現行モデルの「Gold Wing Tour」まで継続しています。その意味では、「世界最長寿の6気筒エンジン」になります。
並列6気筒、そして対向6気筒も、バイクのエンジンとしてはかなり特異な存在と言えます。それだけに搭載できるバイクのカテゴリーに制限があるのは事実で、現実的に市販の小~中排気量車では重量やサイズ、またコスト的にも難しいと言えます。
とはいえ6気筒ならではの乗り味や迫力あるルックスは、他にない魅力があります。もっと多くのメーカーから6気筒エンジンが登場したら、いっそう選択肢が広がって楽しいのではないでしょうか……。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。














