3年目の挑戦は計画的だった!? 日本人ライダーとして世界GP初優勝!! 高橋国光選手とホンダ「RC162」の軌跡とは

1960年にホンダのワークスライダーとなった髙橋国光選手(1940~2022年)は、20歳でホンダ世界GP参戦2年目の派遣ライダーを務め、1961年の西ドイツGPで「RC162」を駆り、日本人ライダーとして世界GP初優勝を記録しました。

世界GP参戦3年目のワークスマシンは、250ccクラスの直列4気筒

 2025年シーズンからMotoGPクラスに昇格した日本人ライダー、小椋藍選手の活躍を応援しているファンも多いことでしょう。かつて日本人ライダーとして、世界GP(MotoGPの旧名)で初めて優勝を飾ったバイクはホンダのファクトリーマシン「RC162」であり、この記念すべき初優勝は1961年、西ドイツGPの250ccクラスで、ライダーは高橋国光選手(1940~2022年)でした。

1961年の世界グランプリ、西ドイツGPで、日本人ライダーによる初優勝をもたらしたホンダ「RC162」(#100/高橋国光選手)
1961年の世界グランプリ、西ドイツGPで、日本人ライダーによる初優勝をもたらしたホンダ「RC162」(#100/高橋国光選手)

 この年、ホンダにとって世界GPへの参戦は3年目でした。と言っても、初年度はマン島TTの125ccクラスに1戦のみの参戦で、2年目は250ccクラスにもエントリーしたものの、それぞれ3~4戦の参戦に留まっています。ホンダ勢に優勝はありませんでしたが、250ccクラスで田中健二朗選手の3位入賞も含めて、3回表彰台に上っています。

 世界GPの厳しさと手応えを感じながら「勝負は3年目のシーズン」と考えていたチームに、歓喜の瞬間はいきなり訪れます。3年目のシーズン開幕戦スペインGPの125ccクラスで、「RC143」に乗るトム・フィリス選手がホンダに世界GP初優勝をもたらしました。ライバルのトラブルに助けられた優勝でしたが、2位以下を20秒以上離す速さを見せました。

 高橋選手がこれに奮起したことは間違いありません。125ccクラスよりも250ccクラスに投入された新型マシンの方が調子が良く、続く第2戦西ドイツGPではホンダ勢が予選の上位を独占します。高橋選手は2位のグリッドから決勝をスタートします。

 戦いの舞台となったホッケンハイムは、長いストレートとシンプルな卵形レイアウトの超高速サーキットでした。バイクの性能がそのままタイムに現れますが、勝負は最後まで分かりません。

 決勝レースが始まると、ホンダのジム・レッドマン選手と高橋選手が上位を走ります。20周のレースの半ばでMVアグスタに乗るゲイリー・ホッキング選手がトップに出ますが、エンジントラブルによりリタイアとなりました。

 2ストロークエンジンのMZも、4ストロークシングルエンジンのモト・モリーニも、ホンダの4気筒マシン「RC162」に対抗する力は持っていませんでした。

 高橋選手のライバルは前を行くチームメイトのレッドマン選手だけです。森の中を貫く長いストレートを4気筒の排気音が駆け抜けます。最終ラップまでチャンスをうかがっていた高橋選手は最終コーナーでイン側に抜け出し、数メートル差でレッドマン選手を振り切って優勝しました。

「RC162」のコックピット。SMITHS社製のタコメーターには5000rpm以下の目盛りがない
「RC162」のコックピット。SMITHS社製のタコメーターには5000rpm以下の目盛りがない

「RC162」のエンジンは直列4気筒DOHCで、1気筒あたり4本、合計16本の吸排気バルブはカムギアトレインで駆動されています。ホンダお得意の精密なメカニズムのエンジンでした。前年の「RC161」に比べてエンジン下部にオイルパンを持たないドライサンプで、低重心となっています。

 車体も大きく変わりました。メインフレームが2本となり、エンジンを囲むように回り込み、スイングアームを外側から挟み込む現代的な構造です。

 高橋選手による初優勝の後、「RC162」は10連勝を記録し、1961年の世界GP250ccクラスのチャンピオンを獲得しました。個人タイトルは最多勝のマイク・ヘイルウッド選手です。ここからホンダの第1期世界GP参戦の黄金時代が始まります。

 高橋選手はこの年のランキングで4位となりましたが、1962年のマン島TTレースでの転倒でダメージを負い、数年後に4輪レーサーに転向しました。長年に渡り日本を代表するトップドライバーとして活躍し、1999年の引退後も監督としてレース界に尽力しました。

 ホンダはすでに世界GPで800勝以上を記録していますが、その長い一覧表の2番目に、高橋選手の名前が刻まれています。

■ホンダ「RC162」(1961年型)主要諸元
エンジン種類:空冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ
総排気量:249cc
最高出力:45PS/14000rpm
車両重量:126.5kg

【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)

【画像】当時のワークスマシンと言えばコレ!! MotoGPにつながる世界GPで圧倒的な強さを見せたホンダ「RC162」を見る(12枚)

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Writer: 柴田直行

カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員

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