タイヤのロックを防いでくれるABS 「チャンネル」ってナニ? あえてオフにもできる?
ブレーキをかけた際にタイヤのロックを防いでくれるABS(アンチロック・ブレーキ・システム)は、いまやバイクにも標準装備が一般的です。しかし「1チャンネルABS」とか「デュアルABS」など、ちょっと意味不明かもしれません。
前輪のみか、両輪に装備か
2018年以降に新型車で発売される排気量125ccを超えるバイクには、ABS装備が義務付けられました。
また125cc以下のバイクにはABSまたはCBS(コンバインド・ブレーキ・システム=前後連動ブレーキ)の装備が義務付けられています。
そのため現在買える新車や、近年のほとんどのバイクはABSを装備しています……が、カタログ(メーカーのHPなど)を見ると、ABSには「1チャンネルABS」とか「デュアルABS」など様々なタイプがあるようですが、これはどういう意味なのでしょうか?

「1チャンネルABS」または「シングルABS」と呼ばれるタイプ(どちらも同じ意味)は、基本的に前輪にのみABSを備えているバイクになります。
そして「デュアルABS」または「2チャンネルABS」(両方とも同じ意味)は、前輪と後輪の両方にABSを装備しているバイクを指します。
「1チャンネルABS」は、125cc以下のレジャーバイクやビジネスバイクに装備されるパターンが多いようです。これは車両のコストを抑えながら安全性を確保するのが目的でしょう。
また日本においては125cc以下のバイクは高速道路を走行できないので(高速走行しない)、それも関係しているかもしれません。
ちなみに1チャンネルABSを前輪に装備するのは、前輪がロックすると一瞬で転倒する可能性が大きいためでしょう。後輪のロックもドキッとはしますが、瞬間的なら転倒する危険は低いと言えます。
そして多くのスポーツバイクは2チャンネルABSを装備しており、何らかの異常があるとメーターのABS警告灯が点灯します。
ブレーキ時のタイヤロックによる転倒の抑制が目的の安全装置なので当然かもしれませんが、走行中はずっとABSが作動しているのが一般的です。……が、中には意図的にABS機能をOFFにできるバイクもあります。それはオフロードモデルです。
オフロードでは、ABSをOFFにしたい!?
繰り返しになりますが、ABSはブレーキ時のタイヤのロックによる転倒を防ぐ機能です。仕組みとしては、回転センサーがタイヤのロック(する兆候)を検知すると、ブレーキの油圧を緩めて制動力を下げ、タイヤが回転を再開すると再び油圧をかける動作を自動で繰り返します。
あくまでタイヤロックによる転倒を抑止するための機能であり、制動距離を縮めるための装置ではありません。

このABSの機能はオンロード(舗装路)では非常に有効ですが、オフロード(未舗装路)だとデメリットになる場合もあります。
土や砂利の未舗装路では、舗装路よりもはるかに路面のグリップが低いため、ブレーキをかけると簡単にタイヤがロックしてしまいます。もちろんABSが機能していればタイヤのロックは防げますが、路面のグリップが低いので「油圧をかける・弱める」の動作をいつまでも繰り返して、制動距離がかなり長くなってしまう場合があります。
そこでオフロード走行時はABS機能をOFFにすることで、タイヤのロックの回避よりも、制動力を優先できるようにしているワケです。また、未舗装路でリアブレーキを使ったブレーキターンなども可能になります。
メーカーによって、ABSのOFFの仕様が異なる
ホンダは「CRF250 RALLY」および「CRF250L」に、リアABSのOFFスイッチを設けており、後輪のABSが効かないようにできます(前輪は常時ABSが機能)。また「CRF1100Lアフリカツイン」は、オンロードとオフロードの2通りのモードを持つ選択式ABSを装備し、ライディングモードを「OFF ROAD」に設定(もしくはUSERモード)すると、リアABSをOFFにすることができます。

スズキも「Vストローム1050DE」と「Vストローム800」および「Vストローム800DE」は、リアABSをOFFにできます。
また通常時のABSは介入度が少ない「Mode-1」と、介入度の多い「Mode-2」のふたつのモードから選択できます。ちなみに「Vストローム650」シリーズ、「Vストローム250SX」、「Vストローム250」には、現時点ではリアABSのOFF機能はありません。
ヤマハの「テネレ700」は、リアOFFだけでなく前輪・後輪ともにABSを完全にOFFにすることができます。
カワサキは「KLX230」シリーズ(230・SHERPA・DF)で「デュアルパーパスABS」と銘打ち、スイッチ操作でABSをOFF(前輪・後輪)にできます。ちなみに「KLX230」ベースのモタードモデル「KLX230SM」にはABSのOFF機能はありません。
このように、ホンダとスズキはリアOFFのみ、ヤマハはリアOFFと全OFFの選択式、カワサキは全OFFと、メーカーによって設計思想は異なるようです。
サーキットもリアOFFが有効か
オフロードモデルでは制動力やライディングテクニックの観点から、(未舗装路用に)ABSのOFF機能を備えたモデルはメジャーですが、じつはオンロードスポーツでも「サーキットでのスポーツ走行用に」ABS機能をOFFにできるモデルが存在します。
たとえばホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE」のスポーツモデル専用ABSは、「RACE」モードにすると後輪のABSをOFFにできます。またヤマハ「MT-09 SP」は、サーキット走行を想定した「TRACK YRC」モードではリアABSをOFFに設定することが可能です。

オフロードやサーキット走行においては、ABS機能をOFFにした方が走りに有効な場合があります。とはいえ全メーカーとも車両の取扱説明書(ハンドブック)には、通常のオンロード走行ではABSをOFFにしないようシッカリ表記しています。
ABSは急な飛び出しや予期せぬ路面のスリップなどに対し、転倒を抑制して安全性を高めるために義務付けられた装備なので、走行シーンに合わせた使い方が大切だと言えます。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。













