欧州排ガス規制「ユーロ5+」の「+(プラス)」ってナニ? 段階的に厳しくなるイメージはあるけれど……

欧州の排出ガス規制である「ユーロ○」は、アメリカを除いて今や世界基準になりつつあります。そして年を追うごとに規制が厳しくなっているのはイメージできますが、「ユーロ5+」の「+(プラス)」って何でしょうか?

環境を守るための世界基準

 温室効果ガスの低減や環境保全のために、クルマやバイクは排気ガスに含まれる有害物質を減らすことが求められおり、それが排出ガス規制になります。バイクにおいては日本では1998年に初めて排出ガス規制が始まりました。

 細かな規制数値はともかく、翌1999年の「平成11年排出ガス規制」によって、アフターパーツのマフラーが「JMCA(全国二輪車用品連合会)」など公的機関が発行する証明書が無いと、合法的に交換できなくなった記憶があるライダーも多いのではないでしょうか(車検を受けられない、車検に通らない)。

「平成11年排出ガス規制」によって、アフターパーツのマフラーは「JMCA」など公的機関が発行する証明書が無いと、合法的に交換できなくなった
「平成11年排出ガス規制」によって、アフターパーツのマフラーは「JMCA」など公的機関が発行する証明書が無いと、合法的に交換できなくなった

 そして欧州では4輪車が1992年から、バイクは1999年から排出ガス規制の「ユーロ1」が始まりましたが、当初は日本の排出ガス規制と欧州の「ユーロ〇」では、規制の内容に差異がありました。

 また新たな規制が制定されると、新型車は規制に適合していないと生産できませんが、すでに生産されているバイク(継続生産車)や輸入車には1~2年の猶予があったり、排気量によって猶予期間が異なる場合もあります。そのため、個々のバイクの年式と排出ガス規制の年度は、必ずしもイコールにはなりません。

「ユーロ4」からは国内の排出ガス規制もほぼ同一に

「平成11年排出ガス規制」では、アフターパーツのマフラー交換だけでなく、2ストロークエンジンに対してかなり厳しい状況となりました(2ストロークはエンジンオイルの燃焼や未燃焼ガスにより、排出ガスの数値的にかなり不利になる)。そのため、レーサーレプリカとして人気の高かった「2ストローク250cc」の多くのモデルが、この規制によって姿を消しました。

 次いで「平成18年排出ガス規制」では、従来と比べて炭化水素(HC)および一酸化炭素(CO)を75~85%削減、窒素化合物(NOx)が50%削減となり、この時点で2ストロークの原付1種のスクーターや、4ストロークもキャブレター仕様車の多くが消滅しました。

ホンダ「NSR250R SP」(1995年)のように、1999年の「ユーロ1」や「平成11年排出ガス規制」によって2ストロークスポーツ車は激減
ホンダ「NSR250R SP」(1995年)のように、1999年の「ユーロ1」や「平成11年排出ガス規制」によって2ストロークスポーツ車は激減

 また2007年からは、日本の排出ガス規制も欧州の「ユーロ3」に準拠するようになります。

 さらに「平成24年排出ガス規制」からは、試験方法にWMTCモードを採用します。このWMTCモードは燃費の算出にも用いられ、従来の定値燃費よりも実際の燃費に近いため、その部分に関しては便利になったといえます。

「平成28年排出ガス規制」からは、2016年の「ユーロ4」にほぼ準じたため、400ccクラスや大排気量車も、いわゆる日本専用車(カワサキ「ZRX1200DAEG」など)は生産を終了しました。

 そして現在の「令和2年排出ガス規制」は「ユーロ5」と同一と言って良いグローバル化が進みました。「ユーロ5≒令和2年排出ガス規制」では、炭化水素や一酸化炭素、窒素化合物などの有害物質の規制値が厳しさを増しただけでなく、排出ガスの低減や診断に必要な部品やシステムの劣化を監視・記録する車載式故障診断システム(ユーロ4ではOBD-I、ユーロ5では高度化した世界共通規格のOBD-II)の装備が義務付けられました。

欧州の排出ガス規制と、日本の排出ガス規制の歴史
欧州の排出ガス規制と、日本の排出ガス規制の歴史

 他にも、「ユーロ4」からはクランクケースのエミッション対策(未燃焼ガスの抑制)や、燃料タンクなどからの蒸発ガス規制(キャニスターの装備など)が加わりました。

 当然ながら、これらに対応するにはバイクを構成する部品が増加したり、ECU(エンジンコントロールユニット)や配線、カプラーの改良も必要になるため、製造コストが上昇します。

 また規制をクリアしつつ性能も維持しないと商品性が下がってしまうため、設計から時間が経っていたり、もともと排気量が少ない(パワーやトルクが低い)車両だと、規制対応が難しくなるバイクも少なくありません。

 そのため「ユーロ4」から「ユーロ5」への移行期には、ロングセラーや人気モデルであるヤマハの「セロー250」や「SR400」が生産終了モデルになりました。

 また原付1種(50cc)の「第4次排出ガス規制」が2025年11月から施行され、従来モデルの生産は2025年10月末までとなりました。

 そして「ユーロ5」に相当する排出ガス規制を原付1種で対応するのが技術的にもコスト的にも困難なため、2025年4月1日から「新基準原付」がスタート。ホンダは2025年12月11日から「スーパーカブ110 Lite」など4車種の販売を開始したのは記憶に新しいところです。

長く環境性能を維持するための「ユーロ5+」

 そしていよいよ2024年の1月から「ユーロ5+」がスタートしました。少々不思議なのが、なぜ「6」ではなく「5+」なのかというコトですが、きちんと理由があります。

 じつは「ユーロ5+」の有害物質の排出基準は、「ユーロ5」と同等で大きく変わりません。しかし有害物質を減らすキャタライザー(排気触媒)の耐久性のテスト(計算値ではなく走行距離による劣化テスト)が必要になりました。

 また車載式故障診断システムの「OBD-II」も、「ユーロ5」でのセンサー類の劣化の監視に加え、キャタライザーやO2センサーなどを定時的(使用時間の10%ごと、または走行距離35kmごと)にモニターして検証するなど、より高度な監視システム(通称OBD-II-2)が要求されるようになりました。

 少々難解ですが、すごくザックリ言うと、厳しい「ユーロ5」の排出基準が、バイクを長く使用しても(時間および走行距離が伸びても)正しく維持されているかを確かめるために「ユーロ5+」が制定された、と言えるのではないでしょうか。

 現在はココですが、「ユーロ5+」によって、ホンダの「CB1300スーパーフォア/スーパーボルドール」はファイナルエディションを迎えました。またヤマハ「YZF-R1」は、国内では現在の「ユーロ5」の仕様で期限である2026年11月まで販売すると思われますが、欧州の2025年モデルは公道仕様が無くなってクローズドコース専用車(サーキット走行やレース専用)になっています。

ヤマハ「YZF-R1」クローズドコース専用モデル。公道モデルは「ユーロ5」仕様のため、欧州では2024年で終了し、2025年はクローズドコース専用モデルを販売(日本国内のレースベース車に相当)
ヤマハ「YZF-R1」クローズドコース専用モデル。公道モデルは「ユーロ5」仕様のため、欧州では2024年で終了し、2025年はクローズドコース専用モデルを販売(日本国内のレースベース車に相当)

 そして2026年には、いよいよ欧州で「ユーロ6」が施行されるのでは……と噂されてきましたが、現時点では未定です。

 とはいえ、いずれは現在より厳しい排出ガス基準が制定されるのは間違いないでしょう。その頃にはEV(電動)バイクや水素エンジンが普及しているかもしれませんが……。

【画像】だから生産終了になったのか……排ガス規制で消えていった人気モデルを画像で見る(11枚)

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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