馬力至上主義をぶっ壊す「炎の剣」!? ホンダ「CBR900RRファイアブレード」のスーパースポーツ革命とは!!

排気量の枠を取り払い設計されたホンダ「CBR900RR Fireblade」(1992年/輸出専用車)は、軽量でコンパクトなバイクの真価を具現化し、多くのライダーが公道でスーパースポーツモデルを操る満足感に満たされました。

最高出力125PSで乾燥重量185kgの衝撃!! 歴代「CBR」へ受け継がれるスピリット

 2025年発売のホンダ「CBR250RR」には、「CBR」シリーズ伝統のイメージカラーであるパールグレアホワイトがあります。ブルーからオレンジへと変化するグラデーションや、重ねた「RR」の文字がアグレッシブな運動性を連想させます。

 このカラーのベースとなったのは、1992年に登場したホンダ「CBR900RR Fireblade(ファイアブレード)」です。輸出向けのバイクだったので国内では見かけることは少ないかも知れませんが、海外では大ヒットしてスーパースポーツカテゴリーの方向性を一新した歴史的なモデルでした。

 1980年代後半から1990年代の排気量750ccクラスの高性能スーパースポーツモデルは、レーサーレプリカに偏向していました(当時の国内販売の排気量上限は自主規制による750ccまで)。一方、輸出向けの750ccを超えるモデルは「エンジンパワー至上主義」で排気量も重量も拡大する傾向があり、そのどちらも高性能をフルに引き出せるライダーは一握りでした。

 それに対して「CBR900RRファイアブレード」は、レースでの車両規則に捉われずに排気量を設定しました。しかも公道でより多くのライダーに「操ることを最大限に満足させる」というイメージを掲げます。

ホンダ「CBR900RR Fireblade」(1992年型)。大きな丸目2灯のヘッドライトは初期型のアイコン。カウルの穴は粘りつく空気の流れを抑制する効果が期待できる
ホンダ「CBR900RR Fireblade」(1992年型)。大きな丸目2灯のヘッドライトは初期型のアイコン。カウルの穴は粘りつく空気の流れを抑制する効果が期待できる

 この時ホンダの設計部には、鈴鹿8時間耐久ロードレースの常勝ファクトリーマシン「RVF750」に対抗できる並列4気筒エンジン搭載の先行開発車「CBR750RR」がスタンバイしていました。結果的に「CBR750RR」が販売されることはありませんでしたが、この幻のバイクが「CBR900RRファイアブレード」のベースとなります。

「CBR900RRファイアブレード」は、開発前のエンジン性能目標値も公道走行を基準に設定しました。欧州の速度無制限道路アウトバーンでは、スポーツバイクユーザーのアベレージ速度が160km/hという調査結果でした。そこでの1000ccクラスと同等の加速性能をターゲットにします。

 加速性能はパワーウエイトレシオが重要です。まず必要なパワーを獲得できる排気量が決まります。「CBR750RR」の軽くてコンパクトな並列4気筒エンジンを使用し、必要な加速性能を得るためにストロークを9.4mmも伸ばして排気量を893ccに拡大します。

 1つのシリンダーのボア70mm×ストローク58mmという数値は、当時のスーパースポーツモデルとしては常識外れのロングストロークで、ツアラーの「CBR1000F」よりも長いほどです。

 車体も常識外れで、この超コンパクトな893ccエンジンを600cc並の超軽量な車体に搭載しました。ここでも「CBR750RR」の車体を活かし、製作が難しい大きく湾曲したアルミツインチューブフレームを採用しています。ホイールベースは同年国内販売された「CBR600F」と同じ1405mmで、乾燥重量は1kg軽い185kgに収まっています。

「CBR900RRファイアブレード」の最高出力は124psです。リッタークラスのライバル車に対して20psほど低い数値ですが、一方で車体は約30kgから40kgも軽量でした。

 公道をターゲットにした「CBR900RRファイアブレード」は、当時の排気量無制限のオープンクラスレースで常勝マシンになるなど、サーキットでもそのポンテンシャルは傑出したものでした。

 新しいスーパースポーツの世界を切り開いた「CBR900RRファイアブレード」は欧米で大ヒットし、ロングセラーとなります。様々なバイクが生まれては消えていった1990年代で、最初の8年間は基本を変えずに生産され続けました。

飾り気の無い質実剛健なハンドルまわり。300km/hのスピードメーターは奥側に、タコメーターは中心に配置
飾り気の無い質実剛健なハンドルまわり。300km/hのスピードメーターは奥側に、タコメーターは中心に配置

 一部の部品をアルミから超軽量素材のマグネシウムに変更したり、サスペンションのリセッティング、排気量を918ccに拡大などアップデートを繰り返します。

 一方、レースの世界ではすでに時代遅れ的だった、16インチのフロントホイールと正立フォークを選んだのは、公道での作動性やエアボリューム確保などの検討によるもので、1999年モデルまでキープされました。

 外装は変更されて、印象的なヘッドライトは初期型が丸目2灯、後期型は吊り上がった形状のスポーツグラス風です。

 冒頭に触れた「CBR250RR」のカラーは、「CBR900RRファイアブレード」の初期型がモチーフです。「CBR1000RR-Rファイアブレード」の30周年記念車にも採用され、多くのCBRファンの記憶に刻まれています。

「CBR900RRファイアブレード」は、2000年にさらに排気量を929ccに増やし、車体も大幅な変更を施します。2002年には954ccとなり、「CBR954RR」として国内販売もスタートしました。

 排気量に捉われないスーパースポーツライディングの楽しさを追求し、衝撃的なデビューから絶大な人気モデルとなった「CBR900RRファイアブレード」は、最終型まで「トータルコントロール」、「操ることを最大限に満足させる」というコンセプトが貫かれ、現在の「CBR1000RR-Rファイアブレード」までそのスピリッツが受け継がれています。

■ホンダ「CBR900RR Fireblade」(1992年型)主要諸元
エンジン種類:水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ
総排気量:893cc
最高出力:124PS/10500rpm
乾燥重量:185kg

【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)

【画像】公道向けで「エンジンパワー至上主義」!? 輸出専用車だったホンダ「CBR900RR Fireblade」(1992年型)を画像で見る(9枚)

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Writer: 柴田直行

カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員

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