なんとなく似てる? “まな板ナミナミ模様”の「ラジエーター」と「オイルクーラー」 仕組みは同じ冷却装置なにが違う?
バイクのエンジンの前側に装備されている、黒くて四角くて細かな網っぽい形状のパーツがエンジンを冷やすための「ラジエーター」ということはなんとなく分かりますが、かなり似た形状で「オイルクーラー」もあります。いったい何が違うのでしょうか。
ラジエーターもオイルクーラーも、仕組みは同じ
「ラジエーター」という部品名や文言は、クルマ(四輪車)でもお馴染みなので聞き覚えはあるでしょう。これはエンジンを冷やすための冷却水(クーラント、ラジエター液)を、外気や走行風を使って冷やすための装置です。
ところが、バイクの車種によっては、ラジエーターと比較的似た形状で装着場所もほぼ同じなのに「オイルクーラー」と呼ぶ場合があります。いったい何が違うのでしょうか。
いずれも見た目が似ていることから分かるように、機能においても「流体を冷やす」という目的なのは同じですが、冷やす対象物が異なります。
ラジエーターは前述したようにエンジンの冷却水を冷やしますが、オイルクーラーは文字通り、エンジンオイルを冷やすための装置です。

エンジンはガソリンと空気の混合ガスが燃焼(爆発)してパワーを生み出しますが、その過程で猛烈に発熱します。そのままだと発熱によって破損してしまうので、適正な温度に冷却する必要がありますが、バイクのエンジンの場合は大別して空冷方式と水冷方式があり、これはカタログなどのスペック欄にも記載されています。
100年以上昔に内燃機関が登場してから1970年頃までは、ほとんどが大気の外気温で冷やす空冷式が主流で、効率よく冷えるようにエンジンのシリンダーやシリンダーヘッドの表面に冷却フィンを設けて表面積を増やして放熱していました。とはいえ渋滞などのノロノロ運転や信号での停止状態はもちろん、気温が異なる夏と冬でも冷却効果が変化します。
しかし1970年代から、より効率的かつ安定してエンジンを冷やすことでパワーを得られる水冷方式が登場します。排気量の増加や圧縮比を高めるなどによって、以前より増した発熱量に対応するためにも、エンジンにウォータージャケットを設けて冷却水を循環させたのです。
その冷却水を冷やすために設けたのが「ラジエーター」です。水冷方式のエンジンを搭載するバイクには、必ずラジエーターが装備されています。
量産バイクで世界で始め水冷方式を採用したのは、スズキ「GT750」(1971年)でした。その後も各メーカーから水冷エンジン車が登場しましたが、1970年代はかなり少数でした。
水冷方式がメジャーになったのは、1980年発売のヤマハ「RZ250」や、1982年発売のホンダ「VT250F」頃からではないでしょうか。
オイルクーラーの装備は、高性能空冷エンジンの証!?
一方のオイルクーラーは、装備するバイクと非装備のバイクがあります。これは個々のバイクがエンジンオイルに求める役目に関係していたり、エンジンの進化の時代性も影響しています。

まずエンジンオイルの仕事は、エンジン内部の部品の潤滑が主目的ですが、オイルの温度が過剰に高くなると、油膜切れなどを起こして潤滑性能が損なわれ、エンジンを傷める原因になります。
そこで発熱量が多い高性能エンジンや、レース用などにチューンナップした場合は、エンジンオイルを冷やすオイルクーラーが有効になります。とくに水冷エンジンが登場する前の空冷エンジンでは、効果が大きいと言えます。
ちなみに国産の市販バイクで初めてオイルクーラーを装備したのは、ホンダが1981年に発売した「CBX400F」です。じつは当時は運輸省の認可が下りず、苦肉の策として「オイルリザーバータンク」という呼称で装備しましたが、ありていに言えば形状も構造もオイルクーラーです。
またエンジンオイルはエンジンを冷却する役目もありますが、それをより積極的に活用する仕組みで作られたのが、スズキが1985年に発売した「GSX-R750」に搭載された「油冷エンジン」です。
当時は性能アップのために水冷化が始まっていましたが、まだ重量やサイズ面では空冷方式より不利な面もありました。そこでスズキは軽量・コンパクトで冷却性能も併せ持つ油冷方式を生み出しました。そのため「GSX-R750」は冷却性能に優れる大きなオイルクーラーを装備していました。
とはいえ「GSX-R750」の巨大なオイルクーラーは、ある意味で特殊な例と言えますし、空冷エンジンの場合も「CBX400F」以降のスポーツ車が総じて装備したわけではなく、あくまで性能を追求したモデルのみが装着したように思われます。
スーパースポーツ車は、ラジエーター&オイルクーラー装備
エンジンを水冷方式にすると安定して冷やすことができるため、同規模のエンジンならエンジンオイルの温度も空冷方式より下がります。なので水冷エンジンにはオイルクーラーは不要……と言い切れないのが、高性能化へのあくなき追及です。

なかでも本格レースに使うスーパースポーツ車は、エンジン冷却は当然水冷方式なのでラジエーターを装備するとともに、エンジンオイルを冷却するオイルクーラーも装備しています。
それらをベースとしたストリートファイター系ネイキッド車だと、上段がラジエーターで、下段にオイルクーラーを配置しているのが分かりやすく見えます。
ちなみにヤマハのスーパースポーツモデル「YZF-R1」は、2015年以降~現行モデルは空冷式のオイルクーラーですが、それ以前のモデルは冷却水によってエンジンオイルを冷やす「水冷式オイルクーラー」を装備していました。
当時のエンジン設計やレイアウトにおいては水冷式の方が有利だったとのことです。
いまどき空冷エンジンは、オイルクーラーが必須かも
クルマのエンジン(内燃機関)は、進化の過程でほとんどが水冷方式になりましたが、バイクは現在でも空冷方式のエンジンが存在します。性能追求や効率重視だと水冷方式が有利ですが、小排気量で発熱量が少な目だったり、クラシック系のバイクなら大排気量モデルでもエンジンのルックス的に空冷方式を選択する場合もあります。
また、クルマと違ってエンジンが剥き出しなので、空冷方式でも冷却しやすい部分もあるのかもしれません。

とはいえエンジンの冷却は環境性能(排出ガス)などにも影響するため、空冷エンジンもきちんと冷却する必要があります。そこで近年のある程度排気量の大きな空冷エンジン車では、オイルクーラーを備えるモデルが増えています。
たとえばドゥカティの「スクランブラー」シリーズや、ロイヤルエンフィールドの「650」シリーズはオイルクーラーを装備しています。
また、生産終了していますが空冷4気筒エンジンを搭載したホンダ「CB1100」シリーズもオイルクーラーを装備していました。
そしてスズキの油冷エンジンは2007年に姿を消しましたが、2020年に高効率の単気筒エンジンとして復活し、「ジクサー250」や「Vストローム250SX」が搭載し、これらのバイクはコンパクトなオイルクーラーを装備しています。
他にもBMW Motorradの「R 12」シリーズおよび「R 18」シリーズは「空冷・油冷エンジン」のため、オイルクーラーを備えていますが、同じ水平対向2気筒エンジンでも、最新の「R 1300」シリーズは「空冷・水冷エンジン」となるため、装備しているのはラジエーターです。
現行バイクだと「ラジエーター装備(水冷エンジン)」、「オイルクーラー装備(空冷エンジン、または油冷エンジン)」、「ラジエーター&オイルクーラー装備(水冷エンジン)」、「どちらも非装備(空冷エンジン)」の4パターンになります。
どれがエライというワケではなく、この違いが個々のバイクの方向性を知る指針になるかもしれません。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。





















