一体ナゼ? 外国製バイクはだいたい“ハイオク仕様” クラシック系もスクーターも!? 日本とは違うガソリン事情とは?

バイクの燃料(ガソリン)には、レギュラーとハイオクの2種類があります。国産バイクはレギュラー仕様が多く、外国製バイクはハイオク仕様が主流のようですが、スーパースポーツ系ではない、スクーターやクラシックタイプでもハイオク仕様なのはナゼでしょう?

外国製バイクは、ハイオク仕様が多い

 ガソリンスタンドの給油機を見ると、燃料の種類が3種類あります。その中で「軽油」はディーゼルエンジン用なのでバイクには関係ありません。残る「レギュラー(無鉛レギュラー)」と「ハイオク(無鉛プレミアムと表記される場合もアリ)」のどちらかを使用します。

 なんとなくハイオク(もしくはプレミアム)という名称から高性能なイメージがありますが、もちろん好みで選ぶモノではなく、バイクは機種ごとにレギュラー仕様かハイオク仕様なのかが定められているので、それを守って入れる必要があります。

 ちなみに国産バイクの場合は、レースにも使うようなスーパースポーツ車や、そこから派生したスポーツネイキッドのようなスポーツ度の高いバイクはハイオク仕様で、それ以外はレギュラー仕様のようなイメージがありますが、それはあながち間違っていません。

 ところが外国製のバイクは、スーパースポーツ系はもちろんですが、クラシック系やクルーザー系でも多くのバイクがハイオク仕様になります。それどころか小排気量のスクーターでもハイオク仕様のバイクが少なくありません。

日本のガソリンスタンドの給油機。軽油はディーゼルエンジンの自動車用だが、バイクはレギュラーかハイオクのどちらかを入れる
日本のガソリンスタンドの給油機。軽油はディーゼルエンジンの自動車用だが、バイクはレギュラーかハイオクのどちらかを入れる

 そこで似たカテゴリーや排気量が近い国産バイクと比べると、スペック的な違いは少なかったり、むしろ外国車の方がスペックは低いのにハイオク仕様だと、なんとなく納得がいかない……と感じている人もいるのではないでしょうか。

「オクタン価」ってナニ?

 そこで、ガソリンのレギュラーとハイオクの違いを簡単におさらいしてみましょう。

 ハイオクは「High」と「Octane」からの造語で、「オクタン価が高いガソリン」という意味です。オクタン価とは、ガソリンに含まれる「isooctane(イソオクタン)」という成分の比率のことで、レギュラーに対してハイオクはイソオクタンがたくさん入っています。

 そしてイソオクタンがたくさん入っているほど自己着火(自然着火)しにくくなります。ザックリ言うとハイオクは「自然に燃えにくいガソリン」になります。

 そう聞くと「燃えやすい方がパワーが出るのでは?」と矛盾しているように感じますが、これはエンジンの設計や仕組みに関係しています。

ハイオク仕様(無鉛プレミアム仕様)のバイクは、燃料タンクの給油口付近に注意を即したステッカーが貼ってあることが多い
ハイオク仕様(無鉛プレミアム仕様)のバイクは、燃料タンクの給油口付近に注意を即したステッカーが貼ってあることが多い

 とくにスポーツ度の高いバイクのエンジンは、大きなパワーを引き出すために「高圧縮」に設計される場合が多いのですが、圧縮が高いとエンジンが吸い込んだ混合ガス(空気とガソリンを混ぜたガス)が、高負荷や高温時に点火プラグの火花ではなく、勝手に燃え始めてしまう(=自己着火、自然着火)ことがあります。

 これが「ノッキング」と呼ばれる現象で、エンジンから「カリカリ……」や「チリチリ……」と異音が発生し、パワーダウンするだけでなくエンジンを傷める原因にもなります。

 そのため高圧縮なハイパワーのエンジンは、自己着火しにくい(勝手に燃えにくい=オクタン価の高い)ハイオクのガソリンを使うように指定し、それに合わせてエンジンを設計しているのです。

 またまたそう聞くと「それほど圧縮が高くない外国製バイクがハイオク仕様なのは、やっぱりおかしいんじゃないか!?」と感じても無理ありません。

日本のレギュラーは、オクタン価が低い!?

 じつは外国製バイクにハイオク仕様が多い理由は「日本と海外ではガソリンの種類によるオクタン価が異なるから」です。

 まず日本のガソリンは、JIS規格によって「レギュラー=オクタン価89以上」、「ハイオク(無鉛プレミアム)=オクタン価96以上」と決まっています。そして実際に販売されているガソリンは、レギュラーがオクタン価90で(全ブランド共通)、ハイオクはブランドによって異なりますが、98~100になります。

ガソリンのオクタン価。日本は2種類だが、欧米のように3種類用意する国が多く、一部の国を除くとオクタン価の数値もおおむね欧米に近い
ガソリンのオクタン価。日本は2種類だが、欧米のように3種類用意する国が多く、一部の国を除くとオクタン価の数値もおおむね欧米に近い

 対して欧州では、日本にはない「プラス」を含めてガソリンは3種類あります。名称は「LOW」「MID」「HIGH」と異なる場合もありますが、いずれにしてもオクタン価が3段階に分かれ、「92」「95」「98」の3種類になります。

 北米の場合も3種類で、数値では「87」「89」「91」と欧州や日本より低くなりますが、これはオクタン価の計測方法が異なるためです。欧州と同じ計測方法で換算すると、おおむね「92」「95」「98」となり、欧州と変わりません。そして最も低い「92」は農業機械用などが主になり、販売していない地域もあるようです。

 ちなみに世界的に見ると、ガソリンは3種類のオクタン価で販売される国が多く、ロシアやエジプトなど一部の国を除くと、おおむね欧州や北米と近いオクタン価になるようです。

 そして多くの国では、一般的なクルマやバイクのエンジンを設計する際には、「プラス」や「MID」のオクタン価(95前後)を基準にしており、これは高圧縮なハイパワーエンジンだけを対象としているワケではありません。そのため、それらの国でのハイオク仕様にはなりません。

 しかし日本に輸入して販売する場合は、日本のレギュラー「90」ではオクタン価が足りないのでノッキングを起こす可能性があるため、やむなくハイオク仕様になってしまうのです。

 その意味では、日本製バイクのレギュラー仕様の方が、世界的に見たら例外的と言えるのかもしれません。

ハイオクは高いけれど、エンジンが壊れたら元も子もない!

 日本ならではのレギュラーのオクタン価が、多くの外国製バイクをハイオク仕様にしている理由が解ったと思いますが、そうなると「なぜ日本のガソリンのオクタン価は2種類で、しかもレギュラーのオクタン価は低いのか?」という疑問が湧いてきます。

 これは日本での古くからのガソリン精製方法に関係しているようで、レギュラーのオクタン価を海外と同様に引き上げるには、設備投資など多くの問題が関わるため難しいようです。

 とはいえエンジン設計においては、使用するガソリンのオクタン価を「90」から「95」にすることで、馬力だけでなく燃費もけっこう向上するそうなので、ぜひレギュラーのオクタン価を引き上げてもらいたいモノですが……。

米国製のハーレーダビッドソンは、基本的にハイオク仕様
米国製のハーレーダビッドソンは、基本的にハイオク仕様

 そして国内外のメーカーに関わらず、ハイオク仕様(プレミアム仕様)のバイクには、必ずハイオクを入れることが重要です。

 オクタン価の低いレギュラーを入れると、エンジンを高回転まで回したときの性能発揮だけでなく、キツい上り坂などの高負荷や、真夏などの高温時にノッキングを起こしてエンジンを傷める危険があるからです。

 ハイオクはレギュラーよりリッター当たり10円ほど高いので、経済的負担が大きいのは事実ですが、例えば燃費が20km/Lだとしたら、1万km走行したとしても使うガソリンは500Lなので、レギュラーとの価格差は約5000円です。

 その間にエンジンがトラブルを起こして修理費用がかかったら……と考えたら、「ハイオクは高い」どころの騒ぎではないのです。

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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