クルマやバイクのマフラーに搭載されている「キャタライザー」ってナニ? 外したらパワーアップするの?
近年の市販バイクのほとんどのマフラーが「キャタライザー」を装備しています。排出ガスをクリーンにするための装置ですが、「外すとパワーアップする」と言う噂も……ホントでしょうか?
排ガスの有害物質をクリーンに
クルマやバイクのエンジン(内燃機関)の排気ガスには、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)などの有害物質が含まれています。それを抑制するために「排出ガス規制」が定められており、環境保全のために年々厳しくなっています。
そのため2000年代からのほとんどのバイク(公道を走行する市販車)のマフラーには、排出ガス内の有害物質を取り除くための「キャタライザー」(排気触媒)を装備しています。
またアフターパーツメーカーのマフラーも、公道走行や車検対応の政府認証マフラーはキャタライザーを装備しています(純正マフラーのキャタライザーを利用する「スリップオンマフラー」は非装備の場合もある)。

バイクのキャタライザーは細かなハニカム状に作ったら金属やセラミックの表面に、白金やロジウムなどの貴金属をコーティングしています(ハニカム状なのは排気ガスとの接触面積を増やすため)。そこに排気ガスが触れるとか化学反応を起こし、有害物質を無害化して排気ガスをクリーンにします。
とはいえキャタライザーが効率よく働くためには、エンジン内で空気とガソリンの混合ガスが完全燃焼しているのが理想的です。そのためマフラーに取り付けたO2センサーによって排気ガス内の酸素濃度を計測して、ECU(エンジン制御ユニット)がガソリンの噴射量などを緻密に調整し、完全燃焼を目指しています。
またキャタライザーは冷えた状態(エンジン始動直後など)だと浄化能力を発揮できないため、その意味ではできるだけエンジンの排気口近くに配置するのが効果的ですが、高温の排気ガスにさらされ続けると劣化も進みやすくなってしまいます。そこで浄化作用と耐久性がバランスする場所に配置することが大切です。
さらに言うと、バイクは曲がる際に車体を傾けるので、バンク角を確保するためにもキャタライザーを配置する場所が制限されます。そしてキャタライザーの配置場所は、マフラー全体のデザインにも影響します。
このように、単純にキャタライザーを装備すれば排出ガスがクリーンになるワケでは無く、エンジン制御や配置場所など様々な配慮が必要になります。
そのためキャタライザーは1個だけでなく、エキゾーストパイプとサイレンサー部分に複数装備する場合もあり、当然ですがコストもかかります。
「外すとパワーアップ」は都市伝説? ……というか違法!
そんな排出ガスの浄化に重要なキャタライザーですが「抵抗になってマフラーの“抜け”が悪くなるから、外した方がパワーアップする」という噂があります。
これはレース用やサーキット専用(公道走行不可)のアフターパーツのマフラーにはキャタライザーを装備していないので、「キャタライザー無し=高性能」といった解釈が元のようです。
確かに目が細かいハニカム状の筒は、排気ガスが通過する際の抵抗になるようなイメージはあります……が、いまどきのキャタライザーはかなり抵抗が小さいと言えます(装備が始まったばかりの頃は構造的に排気抵抗が現在より大きかった)。
そしてレース用やサーキット専用のマフラーがキャタライザーを装備しないのは「(現時点では)装備しなくても良いから」が主たる理由だと思われます。
当然ながらキャタライザーを装備すれば、その分重量が増し、構造も複雑になります。またキャタライザーは貴金属を使用するため相応に高価なので、法規的に不要ならば敢えて装備する必要はないでしょう。

またマフラーの性能は“抜け”の良さだけではなく、エンジンの仕様に合った最適な排気圧力も重要になります。そのためレース用やサーキット専用のマフラーは、キャタライザーを装備しない前提で最高の性能が出るように設計しています。
反対に公道用のマフラーは、キャタライザーを装備したうえで性能が出るように設計されています。そもそもの設計が異なるので、(キャタライザー装備のマフラーから)キャタライザーを外すだけでパワーアップする可能性は、おそらく低いと考えられます。
ちなみに純正マフラーのキャタライザーは、溶接して取り付けてあるので簡単に外すことはできず、強引に外したら元に戻せないでしょう。
またアフターパーツのマフラーはキャタライザーが取り外せるモノもあるようですが、いずれにしても外したら公道を走る上では違法行為です。
なにより環境性能の確保は、この先長くバイクを楽しむために絶対に重要なので、「キャタライザーを外してパワーアップ」は、都市伝説だと思って実践しないに限ります。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。












