プロでも口マネは難しい!? バイクのエンジン 1秒間に何回爆発(燃焼)している?
アクセルを開けて加速している際にタコメーターを見れば「エンジン、すごく回っているな」とイメージできます。しかしその「回転」は、ピストンが上下する動きを変換したものです。「1秒間」では何回爆発(燃焼)しているのでしょうか?
4ストロークエンジンはクランク2回転で1回爆発(燃焼)
バイクのエンジン(内燃機関)は、ガソリンと空気を混ぜた混合ガスを吸い込み、シリンダー内でピストンが圧縮したところに点火プラグの火花で燃焼・爆発することでエネルギーを生み出します。
そのピストンの上下の動きをクランクシャフトで回転の動きに変換して、トランスミッションを介して後輪を回転させています。
そして現在主流の4ストロークエンジンの場合は、クランクシャフトが2回転するごとに1回爆発しています。
また、かつてはレーサーレプリカなどで人気の高かった2ストロークエンジンは、クランクシャフト1回転ごとに毎回爆発する構造でした。

思った以上に爆発している!?
スポーツバイクの多くは、エンジンの回転数を表示する「タコメーター」を装備しています。かつては文字盤の上を針が上下するアナログ式が多く(現在もクラシック系が採用)、近年はデジタル式(バーグラフやアナログ風表示もアリ)が主流ですが、文字盤やデイスプレイをよく見ると「×1000 r/min」と書いてあります。
これは文字盤にヒトケタで描かれている数字を1000倍した数値が、「r/min(レボリューション・パー・ミニッツ)」=「アール・ピー・エム」と読むのが一般的で(スペック表などではrpmと表記)、すなわち1分間のエンジン(=クランクシャフト)の回転数を表しています。

エンジンがかかっていてアクセルを開けていないアイドリングの回転数は、多くのバイクが1000rpm+αくらいです。
そして最高出力を発生する回転数ですが、これはバイクの種類で大きく変わります。例えばネオクラシック系のカワサキ「W230」だと、最高出力18psを7000rpmで発揮し、スーパースポーツモデルのホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE」では218psを14000rpmで発揮します。
それでは回転数から爆発回数を逆算してみましょう。ここでは主流の4ストロークエンジンの1気筒当たりの回転数を算出しています。
たとえばアイドリングの1000rpmなら、1秒間に約8回爆発しています。これだと多いのか少ないのか、ちょっとイメージがわかないかもしれません。試しに口マネで1秒間に「ドッドッドッドッドッドッドッドッ」と8回言うのは、ボイスパーカッションのプロでも難しいのではないでしょうか。
そこでカワサキ「W230」で、最高出力を発生する7000rpmまでエンジンを回したときを計算すると、1秒間に約58回も爆発しています。そしてホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE」が全力で走っている(鈴鹿8時間耐久レースのストレートの加速時など)14000rpmなら、なんと1秒間に約117回も爆発しているのです。

もちろん一般ライダーが公道を走る時は、常にアクセル全開で走るワケではありません。そこで最高出力発生回転数の半分まで使ったとしても、「W230」で約29回、「CBR1000RR-R」なら約58回なので、これでもけっこうな爆発回数だと感じるのではないでしょうか。
また「W230」は単気筒なので爆発回数はこのままですが、「CBR1000RR-R」は4気筒なので、エンジン全体の爆発回数としては前述の数字の4倍の回数を爆発していることになります。
たとえば低回転でクルージングするイメージのあるハーレーダビッドソンの場合も、2000回転で走っている時は1秒間に1気筒当たり約16回、そして2気筒エンジンなので約32回爆発していることになります。
よくマンガなどで、ハーレーや旧車系(単気筒や2気筒)のバイクの走行シーンでは、擬音で「ドッドッドッ」と描かれています。実際に乗っている時もそんな風に感じるものですが、現実的には擬音や口マネで表現できないような、遥かに短い周期で連続的に爆発しています。
その意味ではマンガでスーパースポーツやレーシングマシンの走行音を「フォーンッ」や「クォーンッ」と表現しているのは、なかなか正しいと言えます。
爆発回数を考えたらメンテは必須!!
マンガでのエンジンの擬音はともかく、エンジンは猛烈な回数で爆発(燃焼)しています。たとえば平均して3500rpmほどで走っているとして、1時間では約10万5000回です。
人によってバイクに乗る頻度や走行距離は異なりますが、前記の条件で毎日1時間走行したら、3年足らずで1億回爆発することになります。毎日乗らなくても、月に数回のショーツーリング、年に数回のロングツーリングに出れば、同じような走行時間になる場合も少なくないでしょう。
そこで重要になるのがメンテナンスで、直接関わってくるのが「点火プラグ」です。エンジンの燃焼室に配置された点火プラグは、常に混合ガスが爆発する猛烈な高温と圧力に晒されながら、約3万ボルトもの高電圧で火花を飛ばしています。

それを日常的に数万回、数十万回と繰り返し、数年で億に達する爆発回数をこなすわけです。そのため、ほんの僅かずつではありますが、電極が摩耗したり、蓄積したカーボンで絶縁抵抗が損なわれるなど、性能が低下して行きます。
とはいえ走行中に体感できるほどの大きな変化(性能低下)は無いかもしれませんが、その状態で乗り続けると排気系のセンサーや排気触媒を傷めたり、点火コイルに負荷がかかって寿命が短くなるとも言われています。
そのため、点火プラグは定期的な交換が推奨され、大手メーカーのNGKでは、一般プラグおよびイリジウムIXプラグで走行3000~5000km、バイク専用のMotoDXプラグで走行8000~1万kmを交換目安としています。
また、当然ですが爆発するたびにエンジンのピストン(およびコンロッドやクランクシャフトなど)は衝撃を受け、4ストロークエンジンなら爆発回数の2倍、ピストンはシリンダー内を上下します。その衝撃を受け止めたり、金属製のピストンやシリンダーなど諸々のパーツを潤滑したり清浄・冷却しているのが「エンジンオイル」です。
そして言わずもがなですが、適正なオイル交換の時期やサイクルを怠れば、エンジンオイルの劣化によってエンジンが傷んでしまいます。
点火プラグやエンジンオイルの他にも、バイクを快調に走らせるには様々なメンテナンスや定期的な交換が必要になります。もちろんそれにはコストや手間がかかり、面倒に感じることもあります。
しかし、前述したように「エンジンは1秒間に何回爆発する?」を考えると、メンテナンスの面倒さよりも、必要性の方が気になるのではないでしょうか。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。









