一体ナゼ!? バイクの実際の排気量 モデル名の数字とビミョーに違う件

バイクはモデル名に「250」や「400」という具合に、排気量を示す数字を含むパターンが多く見られます。ところが、実際の排気量は249ccや399ccなど、わずかに少な目です。一体ナゼでしょう?

実際はモデル名の数字より排気量が少ない

 スクーターや小排気量のFUNバイクなどを除くと、スポーツバイクは車名に「400」のように排気量を示す数字が含まれる場合が多く見られます。

 ところが、スペック表(主要諸元)を見ると実際の排気量は399ccだったりと、わずかに少ないパターンが多いようです。

ヤマハ「SR400」のように、モデル名に含まれる数字より、実際の排気量がわずかに少ないパターンが多い
ヤマハ「SR400」のように、モデル名に含まれる数字より、実際の排気量がわずかに少ないパターンが多い

 じつは排気量が車名の数字とピッタリ同じではないのは、「何らかの理由」で排気量が超えてしまうと、バイクの種類によっては車両区分が変わってしまい、運転できる免許や税金などに影響してしまうからです。

 その辺りを、まずは日本の免許制度や車両区分から考えてみましょう。

バイクの「区分」が変わってしまわないためのマージン

 日本国内ではバイクの種別に「道路交通法」と「道路運送車両法」のふたつの区分があります。運転できる車両の免許は道路交通法で定められており、車検の有無や軽自動車税、自動車重量税などは道路運送車両法で定められています。

日本の「道路交通法」と「道路運送車両法」。排気量によって運転できる免許や車検の有無、税制などを区分している
日本の「道路交通法」と「道路運送車両法」。排気量によって運転できる免許や車検の有無、税制などを区分している

 いずれもエンジンの排気量で区分しており、道路交通法と道路運送車両法はおおむねリンクしていますが、じつは排気量で完全にシンクロしていないので難解です。

 ただし、いずれの場合も「~ccまで(~cc以下)」と、「~ccを超える」で区分されるところは同じです。

 言葉遊びのようで少々解りにくいですが、例えば運転免許の場合だと、普通自動二輪免許を持っていれば400ccまで運転でき、401cc以上のバイクに乗るには大型自動二輪免許が必要になります。

 また車検の有無では、250ccまでの軽二輪(二輪の軽自動車)は車検が無く、251cc以上だと車検が必要です。

 このことからわかるように、エンジンの排気量は250ccや400ccピッタリでも問題はありません。

 しかし前述したように、「何らかの理由」で排気量を超えてしまうと、車両の区分が変わります。本来400ccのエンジンが401ccになったら、(普通自動二輪免許で乗っていたら)ともすれば無免許運転で捕まる可能性もあります。そこでマージンを取って、399ccのようなわずかに少ない排気量で作られています。

排気量が新車時より増えてしまう理由とは?

 本来の排気量を超えてしまう「何らかの理由」とは、まずは「製造時の誤差」が考えられます。

 バイクの部品の寸法や、組み立て時の隙間(クリアランス)などには「公差」と呼ばれるある程度の「幅」が設けられています。そのため、あまりにピッタリの排気量で設計すると、ともすれば超えてしまう可能性があるので、わずかに排気量を減らしている、という「説」です。

 しかし現在は工作技術や組み立て精度が非常に高いので、排気量を超えてしまうような誤差は生じないと思われます。

 そもそもエンジンのピストンクリアランス(ピストンとシリンダーの隙間)は3~7/100mmといわれるので、そんな大きな誤差は考えられません。

 それに設計時に排気量を超えないように公差を設定すれば済む話なので、現代のバイクだと製造時の誤差は影響ないかもしれません。

ピストンクリアランス(シリンダーとピストンの隙間)は水冷エンジンで3/100mm、空冷エンジンで5~7/100mmと言われ、高い精度が求められるため大きな製造誤差は存在しない
ピストンクリアランス(シリンダーとピストンの隙間)は水冷エンジンで3/100mm、空冷エンジンで5~7/100mmと言われ、高い精度が求められるため大きな製造誤差は存在しない

 次に考えられるのは、経年劣化による摩耗や、焼き付きなどのトラブルの補修による排気量の増加です。

 確かに昔(大昔?)は、とくに2ストロークエンジンの場合はシリンダーやピストンの摩耗を計測する整備項目があり、許容範囲を超えた場合はわずかに直径の大きい「オーバーサイズピストン」を使って補修しました。

 またエンジンオイル不足やオーバーヒートで、焼き付きなどを起こしてシリンダーやピストンが傷ついた場合も、オーバーサイズピストンとシリンダーのボーリング加工で対処しました(昔の4ストロークエンジンも同様)。

 これはパワーアップ目的のボアアップとは異なり、あくまで補修のためにバイクメーカーが「0.25mmアップ」や「0.5mm」アップのオーバーサイズピストンを用意していました。

 そしてこれらの補修を行うと、わずかながらに排気量が増えます。その分を見越してピッタリではない排気量にしていた、とも言われます。

 とはいえ現代の4ストロークエンジンは、かなりの距離を走ってもシリンダーやピストンは交換を要するほど摩耗したりせず、焼き付く様なトラブルも余程の事が無ければ起こりません。

 さらに言えば、近年(2000年前後)のエンジンは非常に摩耗に強い「メッキシリンダー」が主流になっており、基本的にボーリング加工ができません(正しくはボーリング加工は可能だが、特殊なメッキ加工を行うのが困難)。

 そのため何らかのトラブルでシリンダーやピストンがキズ付いたり焼き付いた場合、修理するには新品のシリンダーとピストンに交換するのが一般的で、バイクメーカーは基本的にオーバーサイズピストンを用意していません……ということは、当然ですが排気量が増えることもありません。

 ちなみにオーバーサイズピストンが用意されていた昔のバイクですが、0.25mmまたは0.5mmアップで計算してみたら、車両にもよりますが多くの場合はピッタリの排気量をオーバーしていました(例:249cc→251ccと)ので、どうやら補修用のマージンだったワケではなさそうです。

 これらを考えると、排気量をピッタリにせずにわずかに少なくする理由は、旧車はともかくとして現行バイクではあまり定かではありませんが、やはりバイクメーカーが万一を考えてのマージンとしている、と思われます。

 オマケですが、免許や車検、税制などに関係なく、排気量がピッタリよりもわずかに少ないバイクがあります。それはスーパーバイクなど本格レースに使われる1000ccのスーパースポーツ車などです。

 こちらはレースのレギュレーションで排気量が厳密に定められており、それこそ何らかの理由でホンのわずかでも排気量を超えてしまうと失格になってしまうので、そのマージンを取ってギリギリに設定しているわけです。

モデル名の数字よりも排気量が多い場合もある!?

 とはいえ日本の免許制度や車検、税制の車両区分や、レースのレギュレーションに「引っかからないクラス」だと、実際の排気量は必ずしも「ちょっと少な目」ではなく様々です。

 たとえば東南アジアを中心に人気のある150ccクラスですが、ヤマハが国内でも販売開始した「XSR155」は、排気量は車名通りの155ccです。

 また欧州で人気のアッパーミドルは、たとえばスズキ「V-STROM 800」は(同系エンジンの「GSX-8」シリーズも)排気量775ccなので、車名の数字よりも25cc少ないです。同様にヤマハ「XSR900 GP」も実際は888ccで結構少ないです。

 その逆パターンがカワサキ「Z900RS」で、排気量は948ccとかなり多めです。なので「Z950RS」の方が合っているのでは……とも感じますが、カワサキにとって「900」という数字は往年の名車「Z1」以来の大切な意味を持つので、やはり「Z900RS」と名付けたのでしょう。

カワサキ「Z900RS SE」(2026年)の実際の排気量は948cc
カワサキ「Z900RS SE」(2026年)の実際の排気量は948cc

 これらの車名の数字とピッタリ、またはけっこう差がある排気量は、車両のカテゴリーやコンセプトに合ったパワーや乗り味などに合わせて決めているので、日本固有の「ちょっと少な目」より自由度があるようにも感じます。

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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