「まだ回る、もう一段伸びる!?」 2027年モデルで8年ぶりに全面刷新!! ヤマハ「YZ250F」の戦闘力がここまで高まった!!
ヤマハのモトクロスモデル「YZ250F」が8年ぶりにフルモデルチェンジされました。ヤマハは毎年、「YZ」シリーズのメディア向け試乗会を開催し、今回はSUGOスポーツランドインターナショナルモトクロスコースで実施。例年通りバイクジャーナリストの青木タカオさんが参加し、全面刷新された2027年型の走りをじっくりと確かめました。
開け続けられることが「余裕」となり「速さ」につながる
エンジンをより長く引っ張れるから、シフト操作が減る。シフト操作が減るから、アクセルを開けることに集中できる。そこで得た速度を、剛性の高いシャーシとサスペンションがしっかり受け止めてくれる。そしてコーナーでは、コントロール性の高いブレーキとクラッチを使って、次のセクションへつないでいける!!
ライダーの技量を問わず、走りの限界を一段引き上げてくれる。8年ぶりに全面刷新されたヤマハ「YZ250F」(2027年モデル)です。
SUGOスポーツランドインターナショナルモトクロスコースで実施された「YZ」シリーズのメディア向け試乗会で、プロジェクトリーダーの澤岡譲二さん(第2PT設計部 YZ-PT設計Gr)は「最強の4スト250ccにオールニューエンジンを投入して、ライバルをさらに引き離す」と、胸を張ります。
「最強」という言葉は、決して言い過ぎではありません。モトクロスの本場とも言えるアメリカでは、「YZ250F」が主要モーターサイクルメディアの「Shoot-Out(シュート・アウト)」で、8年連続クラス1位という高い評価を獲得しており、2026年シーズンはAMAスーパークロス250SX EastとAMAプロモトクロス選手権250MXでコール・デイビス選手が二冠を達成しました。
つまり、レースの現場でもメディアの評価でも、「YZ250F」はその確固たる強さを証明しているのです。
フルモデルチェンジの新型に試乗し、筆者(青木タカオ)のなかで強く印象に残ったのが、エンジンの伸びやかな加速感です。ギアチェンジの手間を減らし、そのまま次のセクションまで引っ張りきれるのです。
レブリミットが700rpm高まり、さらにトランスミッションをワイドレシオ化。エンジン実験プロジェクトチーフの北原直哲さん(第2PT実験部 YZ-PT実験Gr)は、この伸びやかな加速感を「Long pulling feeling(ロング・プーリング・フィーリング)の向上」と説明してくれました。
「まだ回る」「もう少し開けられる」「ここからもう一段伸びる」
そんな余裕を感じさせてくれるから、シフトチェンジの回数が自然と減ります。モトクロスに限った話ではありませんが、スポーツライディングでは、シフト操作をひとつ減らせるだけでも、その瞬間にライン取りやアクセルワーク、次のジャンプへのアプローチに意識を集中でき、走りにとって大きなアドバンテージになります。
では、なぜここまで高回転まで回せるようになったのでしょうか。北原さんがさらに詳しく教えてくれました。

「従来型は吸排気バルブともカム直打式でしたが、2027年型では吸気側をロッカーアーム式に変更。さらにフィンガーフォロワー式とすることで、より大きなバルブリフト量を確保し、高回転化を可能にしています。
吸気ポートの形状を見直すとともに、吸気バルブリフト量を9.6mmから10.2mmへ増大。吸気側のバルブスプリングをダブル化し、高回転域でも確実にバルブを作動させています。
さらに、動弁系の等価重量を16%低減。テンショナーをシリンダーヘッドに上げて設置し、チェーンの挙動を安定させるなど、高回転化を支えるための改良が細部まで施されています」
まさに、オールニューのパワーユニットになっているわけです。
圧縮比を高めても始動はイージー
圧縮比も13.8から14.1へと高められました。ここまで圧縮比を上げると、始動性は大丈夫なのかと思ってしまいますが、心配無用です。セルボタンを押せば、エンジンは元気よく目を覚ましてくれました。
北原さんによると、デコンプレッションによる圧力開放量を従来の2.1倍に増やし、スターターモーターのトルクも高めたとのこと。ギアを入れたままでも優れた始動性を維持し、転倒後の再始動でも手間取る不安が無い。レースではもちろん、ファンライドでも、この安心感は大きなメリットです。
そして走り出してすぐに感じるのは、クラッチの軽さと優れる操作フィール。レバーを握ったときの操作力が軽く、レバーを戻していったときには「ここからつながる」というミートポイントが分かりやすい。
2027年型では、「YZ450F」で採用されていた油圧クラッチを「YZ250F」にも搭載し、クラッチスプリングの荷重を高めながら最適化。レバー操作荷重を軽減しつつ、滑らかなつながりを実現しています。
コーナーへの進入や立ち上がり、ジャンプへのアプローチなど、モトクロスではクラッチを細かく使う場面が少なくありません。しかも、長く走り続けても油圧式ではミートポイントが変化しにくいので、繊細な操作を続けながら走りに集中できます。
安定して「押し切る」走りへ
シャーシにも明確な違いがあります。コーナーへアプローチし、フロントを寝かし込んでいくと、従来型では「スパン!」と向きが変わっていくような軽快なフィーリングがありました。
それが2027年型は少し印象が違います。車体がしっかりと落ち着きながら、向きを変えていく。特に速度が落ちてしまうタイトコーナーで「少し穏やかになったのかな?」と感じます。

しかし、フープスやジャンプなどのリズムセクションに入ると、その印象は変わりました。アクセルを開けたままギャップを越えても車体が左右にフラつきにくく、前後サスペンションが路面の凹凸を受け止めながら、車体の挙動を大きく乱すことなく、そのまま前へ突き進んでいきます。
軽快にヒラヒラと動くというより、上下動の激しいリズムセクションでもラインを外さず、押し切っていく感じです。アクセルを戻さずとも、次のセクションへつなげていける直進安定性があります。
その大きな理由のひとつが、今回の全面刷新に合わせて設計されたメインフレームです。「YZ450F」由来のコンパクトな新設計フレームを採用しました。
もちろん、「YZ250F」より排気量の大きなエンジンを搭載する「YZ450F」のフレームを、そのまま継承したわけではありません。エンジンや車体特性に合わせて最適化し、エンジンブラケットは形状と厚さを徹底追求。高いスタビリティとコーナリング性能を両立しています。

エキスパートなら、フープスをさらに速いスピードで駆け抜け、コブの角にハードに当てながらアクセルを開け続けるはず。そんなアグレッシブな走りをしたときこそ、このフレームの良さがより効いてくるのだろうな、と想像できます。
そして、その安心感を支えているのが前後サスペンションです。「YZ450F」と同一のコンポーネントをベースとしながら、専用のセッティングが施されています。リアサスペンションには新型ベースバルブを採用。前後とも従来型より減衰力を高め、路面追従性が向上しました。
ギャップを越えた際、車体が跳ね返されるのではなく、タイヤが路面を追い続けてくれる感覚があります。大きな入力が入ってもサスペンションがしっかり動いて奥で踏ん張ってくれるので、次のコーナーやジャンプへ移るときにも車体の姿勢が乱れにくいのです。
コントロール性を高めたリアブレーキ
リアブレーキも見直されています。ディスクはφ240mmからφ220mmへ小径化。キャリパーピストンはφ25.4mmからφ22.7mmへ、マスターシリンダーのピストンもφ11.0mmからφ9.5mmへと小さくしています。さらにホースの材質も変更した結果、ブレーキシステム全体で180gの軽量化を達成しています。
小さくして効きを弱くしたのではなく、制動力がリニアに立ち上がるようになりました。ペダルを踏み込んだ瞬間にガツンと効くのではなく、入力した分だけ制動力がスッと立ち上がる。ブレーキを残したままギャップへ入ってもリアタイヤの動きを邪魔しにくく、狙ったところで速度を落としやすい。コントロール性の高さを感じます。

エンジンの伸び、車体の安定性、サスペンションの吸収力と追従性、そしてブレーキやクラッチのコントロール性。すべてが高い次元でつながることで、ライダーは余計な挙動に気を取られることなく、もっと先へ、もっと速く、もっと積極的に攻めていけます。
8年ぶりに全面刷新された2027年型の「YZ250F」は、その飛躍的な進化でライダーの「もっと攻めたい」という気持ちを引き出してくれます。
今後もきっとレースでも勝ち続け、海外の専門メディアでも高評価を獲得し続けるでしょう。

Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。
















