BMW Motorrad新型「F 450 GS」国内初試乗 見た目も乗り味も「ちゃんとGSだった!!」……そして「ハンターカブ」っぽい一面も?
BMW Motorrad新型「F 450 GS」は、全てが新開発となる排気量420ccの並列2気筒エンジンを搭載するミドルクラスのアドベンチャーモデルです。いったいどんなバイクなのでしょうか。試乗しました。
兄貴分と同様の雰囲気
「どこからどう見てもGSだなあ」……2026年9月に長野県白馬村で開催された国内試乗会でBMW Motorradの新型アドベンチャーモデル「F 450 GS」と対面した私(筆者:中村友彦)は、そんな印象を抱きました。
逆に言うなら、先代に当たる「G 310 GS」は、見方によっては「GSらしくない」ところがあったのですが、全面新設計車として生まれた「F 450 GS」モデルは、兄貴分と同様の雰囲気を纏っているのです。
具体的な話をするなら、外装類の雰囲気は板金シェルフレームにボクサーツイン(水平対向2気筒)エンジンを搭載する「R 1300 GS」によく似ていますし、トレリスフレームと並列2気筒エンジンは「F 900 GS」と「F 800 GS」に通じる要素です。
ただしエンジンのクランク位相角は、「F 900 GS」と「F 800 GS」が270度で、「F 450 GS」は過去に例が無い135度です。

おそらく、近年の2輪事情にちょっとでも詳しい人であれば、メーカー名と車名のロゴが無くても、このバイクが「GS」シリーズの一員であることが認識できるでしょう。
いろいろな部分に感じる「GSらしさ」
しかも驚くことに、いや、その表現はBMW Motorradに対して失礼なのかもしれませんが、「F 450 GS」は乗り味も「ちゃんとGS」なのです。
シートに跨ってハンドルグリップに手を添えた際に、目前に広がる景色とライディングポジションは「紛れもなくGS」ですし、主張はなくともライダーの要求に応じて常に必要十分なトルクとパワーを発揮してくれるエンジンも「しっかりGS」です。
そして軽快感と安定感を絶妙の塩梅で両立したハンドリングや、オフロードでの(意外な)低重心感、制動力の引き出しやすさなどにも、私は「GSらしさ」を感じました。

中でも私が興味を惹かれたのは、日本のKYBと共同開発した前後サスペンションです。フロントはオーソドックスな倒立式フォークで、リアショックには新技術となるストローク依存型のWDAを導入しています。
事前にスペックを見て、前後とも180mmというホイールトラベルを確認していた段階では、「GS」シリーズとしてはちょっと物足りない気がしていたのですが、実際は予想以上の包容力を備えていて、オフロードを走っても露骨な物足りなさは感じません。
ただし、それはあくまでもフラットダートに限っての話で、ガレ場や獣道などでは路面の凹凸の吸収性に不満を抱くことがあるでしょう。
とはいえ、このモデルの開発陣はエントリーユーザーや小柄なライダー、さらには体力の衰えを感じているベテランにとっての親しみやすさ、良好な足つき性や程よいピッチングなどを考えて、前後180mmという数値を選択したのだと思います。
世の中にはその数値を「妥協」と言う人がいるかもしれません。でも私は、ホイールトラベルが前後180mmで、最先端の電子制御技術を導入しなくても、ここまで幅広い特性が実現できるのか!! と大いに感心しました。

いずれにしても、「F 450 GS」はルックスもライディングフィールも「GS」シリーズの一員で、近年のアンダー500ccクラスで定番になっているコストダウンの気配は見当たりません。
しかもそれでいて国内販売価格(消費税10%込み)は、日本仕様の標準となる「エクスクルーシブ」が96万1000円、ミドルレンジの「スポーツ」が98万4000円、上級仕様の「GSトロフィー」が103万3000円と、近年の400~500ccアドベンチャーツアラーの平均値に収まっているのです。
もっとも近年のこのジャンルの世界には、ホンダ「NX500」(日本では「NX400」)、カワサキ「KLE500」(日本では近日中に発売予定)、CF MOTO「450MT」、ロイヤルエンフィールド「ヒマラヤ450」、KTM「390アドベンチャーR」など、魅力的なモデルが数多く存在するので、「F 450 GS」がどのくらいのシェアを獲得できるかは何とも言えません。
とはいえ、このジャンルに興味を抱いているライダーにとって、BMW Motorradのモーターサイクルであること、外観も乗り味も「GS」シリーズの一員であることは、大きなプラス要素になるでしょう。
「イージー・ライド・クラッチ」のメリット
さて、前段ですっかり話をまとめてしまった感がありますが、今回の試乗車は日本のF.C.C.が開発した「ERC(イージー・ライド・クラッチ)」を装備する上級仕様の「GSトロフィー」でした。
そしてこの機構に対する私の第一印象は、ミートポイントが妙に高い(?)2700rpm前後だったのですが、走行開始から約10分後にスロットル操作のコツをつかんでからは、左手を動かすことなくギアチェンジができ、エンストの心配が無い、イージーライドクラッチならではの美点を享受することになりました。

言うまでもなく、常日頃からクラッチ操作を煩わしく感じている人やエンストの恐怖と戦っている人、左手に障害がある人にとっては、同社が2025年から「R 1300」シリーズへの採用を開始したオートマチック機構の「ASA(オートメイテッド・シフト・アシスタント)」と同様に、この機構は大きな魅力になるはずです。
ちなみに「F 450 GS」で田舎道を走行中、私の頭にはふと、近年の日本市場で絶大な人気を獲得している、ホンダの「CT125・ハンターカブ」の姿が浮かびました。その一番の理由は、左手を動かすことなくギアチェンジができ、エンストの心配が無いという共通点があるからですが、そもそも私は以前から、「ハンターカブ」に「GS」シリーズに通じる資質を感じていましたし、「ERC」の作動は「スーパーカブ」シリーズと同様の遠心式なのです。
となると、「ハンターカブ」からのステップアップを考えているライダーにとって、「F 450 GS」は理想の1台になり得るのではないでしょうか。
この発想はかなり突飛かもしれませんが、世の中には「もっと大きなハンターカブ」を欲している人がたくさんいるに違いない……と、以前から感じていた私にとって、「F 450 GS」は予想外の角度から放たれた刺客と言いたくなる資質を備えていたのです。
Writer: 中村友彦
二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。





























