いまどきのバイクは「ワッシャー」激減!? ボルトとナットにセットで使うと思っていたが……
機械類を組み立てるにはボルトやナットを使いますが、その際に「ワッシャー」を挟み込むのが普通だと思っていたら、いまどきのバイクはワッシャーが激減しています。使わなくても大丈夫なのでしょうか。
スプリングワッシャーは「ほぼゼロ」!?
バイクに限らず、機械類の組み立てや部品の取り付けにはボルトやナットが使われます。そしてボルトやナットと締め付ける対象物の間には、薄い円盤状の「平ワッシャー」を挟み込みます。また、円盤の1カ所に切れ目があり、段差の付いた「スプリングワッシャー」を挟む場合もあります。
バイクの場合、比較的サイズが大きい(太い)ボルトや、強い力(トルク)で締め付ける必要があるボルト類、例えばフロントフォークにブレーキキャリパーを組み付けるボルトは、スプリングワッシャーと平ワッシャーをセットにして挟み込むのが一般的でした。
またカスタムパーツも、例えばウインカーをステーに留めるような細めのボルトにもスプリングワッシャーと平ワッシャーを挟み込んでいました。
そのため人気が高い1980年代頃までの旧車などは、整備やカスタムで部品を外した際に「あれっ? このワッシャーどこに入っていたんだっけ?(汗)」といったこともよくありました。

ところが近年のバイクを見ると、各パーツを組み付けているボルトやナットにスプリングワッシャーはほとんど使われていません、というか「ほぼゼロ」です。
また平ワッシャーを使っている箇所もかなり少ないです。組み立ての際にワッシャーを入れ忘れる心配が無いのは良いですが、そもそもなぜワッシャーが使われなくなったのでしょうか?
そもそもワッシャーの役割は?
ボルトやナットは、締めこむことでネジ部分に強く引っ張る力が発生し、部品を強くと固定することができます。またボルトやナットと、固定する部品が接触する部分(座面)に摩擦力が生まれるため、簡単には緩みません。
しかし強い力で締め込むと、ともすれば部品側の接触部分が凹んだり破損する危険があります。
一般的なボルトやナットの材質はスチール(鉄)やステンレスが主流ですが、固定する部品がアルミなど柔らかい材質だと、強く締めると食い込んで凹んでしまうことがあります。
すると締め付けた力(締め付けトルク)が部品に吸収されて、緩みやすくなってしまいます。またプラスチックなど樹脂製のパーツ(カウリングなど)だと、強く締め込むと簡単に割れてしまいます。
そこで六角ボルトの頭よりも面積が大きな「平ワッシャー」を挟むと、部品との接触面積が増加するため、凹みや食い込みを防いだり、力を分散して割れを防ぐ効果があります。

また「スプリングワッシャー」の場合は、名前の通りスプリング(バネ)のような形状で、ボルトやナットを締め込むと押し付けられて平らになります。
そしてスプリング(バネ)が元に戻ろうとする反発力によって、ボルトやナットが緩むのを防止すると言われています。
このように、「平ワッシャー」も「スプリングワッシャー」も、使う理由があるにも関わらず、なぜあまり見なくなったのでしょうか。
なぜ使わなくなった?
前述したように、ボルトなどを締め込むとネジ部分を強く引っ張る力(張力)が発生しますが、じつはこちらの張力の方が、平らに潰れたスプリングワッシャーの反発力より格段に強いので、実際のところスプリングワッシャーの緩み止めの効果は、さほど大きくないと言われています。
そのため、いつしかスプリングワッシャーは使われなくなりましたが、ボルト類が何かしらの理由で緩み始めた時には、スプリングワッシャーが潰れた平らの状態からバネ状に伸びるまでの間は反発力が効くため、一気に緩んでしまわないというメリットは(かなり限定的だが)あります。
ちなみにナットの場合は 、絶対に緩んで欲しくない場所は「緩み止めナット」を使うのがメジャーになったため、スプリングワッシャーは皆無になったと言えます。

固定する部品の接触部分を凹ませたり傷つける危険がある場所に使う平ワッシャーですが、近年は座面が大きなフランジボルトやフランジナットが多く使われるようになったため、平ワッシャーの必要性が無くなったと言えます。
これはあくまで想像ですが、昔は緩み止めナットやフランジボルトが一般的ではなかった(製造コスト?)のかもしれません。
反面、スプリングワッシャーや平ワッシャーも、使った分だけコストがかかります。高価な部品ではありませんが「塵も積もれば山となる」ので、無くすことで製造コストが下がるのかもしれません。さらに「ワッシャーを挟む」という作業工程も無くなります。
現行バイクも要所にワッシャーあり。旧車は抜いちゃダメ!!
最近のバイクはワッシャーが激減したとはいえ、例えばエンジンからオイルを抜くためのドレンボルトは、大抵はフランジボルトの形状ですが、合わせて「潰れて密閉する」ための銅製やアルミ製のワッシャーが使われています。これは再使用不可なので、エンジンオイル交換のたびに、新品に交換する必要があります。

また、カウリングやスクリーンを固定するボルトには、キズや割れを防ぐ樹脂製のワッシャーを使っている場合もあります。
すべてのワッシャーが不要なわけではなく、必要な箇所にはワッシャーが入って役目を果たしています。
そしてワッシャーを多用している旧車は、当時の設計では必要だからワッシャーを入れているので、整備やカスタムの際に(当時のボルトやナットを使う場合はとくに)ワッシャーを抜くのは、基本的にNGです。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。







