スズキ「RE-5」だけじゃなかったロータリーエンジンのバイク 幻のカワサキ「X-99」を目の当たりに!!

カワサキ「X-99プロトタイプ」は、数奇な運命に翻弄されたロータリーエンジンを搭載したモデルです。時代は、オイルショックや原油価格高騰もあり、車両の完成度は高かったものの、開発が中断されたモデルです。

車体は「Z1」がベース、排気量は900!!

 もしも、このオートバイが世に出ていたなら……。想像するだけで身震いが収まりません。ロータリーエンジン搭載のカワサキ「X-99 プロトタイプ」を目の当たりにするタイヘン貴重な機会を得ました。オイルショック(第1次1973年)やEPA(アメリカ環境保護局)の排気ガス規制を機に、開発が中断された幻のマシンです。

ロータリーエンジンが搭載されたカワサキ「X-99 プロトタイプ」

 ロータリーエンジンのバイクと言えば、スズキ「RE-5」(1974年)が国内バイクメーカーで唯一販売され、バイクファンらの間で知られていますが、じつはカワサキも開発をしていました。「X-99」です。

 車体は「Z1」をベースとしたものでしたが、フレームやタンク、シート、マフラーなども専用設計されたものであることがよく見るとわかります。エンジン右側にオイルポンプやクラッチをセットし、キックアーム付き。熱処理が課題だったことがよくわかる大型のラジエターが備わっています。

国内二輪車メーカー唯一のRE市販車スズキ「RE-5」

 排気量は896.8ccで、カワサキらしくライバルを凌ぐ大きさです。「RE-5」は排気量497cc(1ローター)、1972年の東京モーターショーに参考出品されたヤマハ「RZ201」は660cc(2ローター)でしたので、ビッグバイク志向を貫き通そうとしていたことは間違いありません。

燃費性能が悪く、時代にそぐわなかった

 水冷ハウジング、2ローター式、5速、クロスポート吸気のエンジンは、1975年の開発凍結時には最大出力87.8PS、最大トルク10.78kg-mを発揮。エンジンの振動が少なく、車速がいつの間にか上がっているという特性でした。

排気量は896.8ccロータリーエンジン

 吸気方式はエンジン左右方向から吸気するサイドポートを主ポートとし、エンジン前後方向から吸気するペリフェラルポートを補助ポートとした、クロスポートを採用しています。

 サイドポートを採用することでアイドリング・低速域での安定性を確保し、高回転域ではエンジン左側にあるスロットルケーブルリンクを介してバルブが開き、ペリフェラルポートからも吸気する仕様です。冷却はハウジング本体を水冷、ローターは周辺装備をコンパクトにするため混合気の気化潜熱を利用した空冷としています。

 試作エンジンは1974年6月の性能テストで、最高出力85.1PS、最大トルク9.96kg-mを記録。その後、谷田部テストコースでの実走テストを実施。レシプロエンジンに比べ、振動の低さやスムーズさは予想どおりでしたが、テストでは低回転域でのメカノイズ、エンジンブレーキの弱さ、熱問題のほか、想定以上の燃費の悪さが露呈したといいます。

実用化されずに開発が終了した「X-99」

 オイルショックによる原油価格高騰もあり、このテストを契機に本社の評価は修正され、1975年に開発を保留。完成度は高かったにもかかわらず、開発は事実上の凍結となりました。

 もし、このまま開発が続けられていれば、900㏄クラスで最大トルク10kg-m以上のトルクを発揮するモンスターマシンが誕生していたかもしれません。

【了】

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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