「最高であることとは何か」現代に蘇ったブラフシューぺリア「S.S.100」日本上陸!! “唯一無二の作品”は1392.6万円

1919年に英国でブランドを創業した「Brough Superior(ブラフシューペリア)」は、1924年に最初の「S.S.100」を発表しました。100年以上も前に時速100マイルを達成しており、1924年、1929年、1937年の3度にわたり世界速度記録を樹立。数々の伝説を生み出しました。現代に再構築され日本初導入となった「S.S.100」に試乗しました。

100年前の孤高のバイクが現代に蘇る

 時空を超えて再構築された孤高のバイク。それが「Brough Superior(ブラフシューペリア)」の「S.S.100」です。100年以上前にスーパースポーツの名を冠し、これが筆者(小川勤)の思い描くブラフシューペリアのスタイルそのもの。低く構えるポジションを持ち、車名に相応しい走りを見せてくれます。

 現代におけるブラフシューペリアは、全車同じプラットフォームを使っていますが、それぞれの車種は明確に異なるデザイン、そしてコンセプトが与えられています。

 現ブラフシューペリア代表のティエリー・アンリエットは、過去に敬意を表しがらも懐古するだけでなく、創業者であるジョージ・ブラフの精神、「最高であることとは何か」を問い続け、現代における「S.S.100」を再構築したのです。

1924年に発表されたブラフシューぺリア「S.S.100」は、「時速100マイルの走行性能を保証する世界初の市販モーターサイクル」として、その名を歴史に刻んだ。その歴史を現代に甦った「S.S.100」が語り継ぐ
1924年に発表されたブラフシューぺリア「S.S.100」は、「時速100マイルの走行性能を保証する世界初の市販モーターサイクル」として、その名を歴史に刻んだ。その歴史を現代に甦った「S.S.100」が語り継ぐ

「速さとは何か」、「美しさとは何か」、「継承とは何か」、「革新とは何か」、この問いに改めて向き合うことで、「S.S.100」はその価値を高めています。

 発注時は他のモデル同様、各部のフィニッシュやカラーは全てオーダーメイドが可能というビスポークスタイル。金箔仕上げなど極めて特殊なリクエストにも応えてくれるそうです。「それが唯一無二の作品」を生み出すのです。

 この夢のようなバイクの車両価格(消費税10%込み)は、1392万6000円。簡単に手が出る価格ではありませんが、物の価値がわかるライダーが実車を見れば、その価格に納得するのに時間はかからないでしょう。

 復活から10年以上を経て、日本に導入された意味は大きい。話題性ではなく、ブランドとしての完成度を確立したタイミングで、日本にその価値が持ち込まれたからです。

 1924年に登場した最初の「S.S.100」も、ビスポークスタイルで限られた顧客にのみ販売され、実際に時速100マイルを達成した性能を確保したバイクのみが販売されたといいます。

 日本は大正13年、バイク文化も無い時代の話のことです。当時、イギリスには多くのバイクメーカーがあり、その中でも「バイク界のロールスロイス」と言われたのがブラフシューペリアなのです。当時も地方であれば家が立つほどの価格だったそうです。

見た目はクラシカル。しかし車体構成は最新技術の結晶

 今回試乗が叶った「S.S.100」は、2025年10月1日よりブラフシューペリアモーターサイクルスジャパンを主宰する、モトコルセの近藤伸代表がオーダーしたマシンです。

 もちろん、近藤氏は実際に取り扱いを開始する前にフランスのトゥールズにある現在の本社を訪問し、最先端の機器と職人の手仕事が共存する現場と、実車の作り込みとデザインの昇華に圧倒されたといいます。

100年以上前のブラフシューぺリアのクラフトマンシップを現代において改めて定義。妥協することなく「S.S.100」らしさを追求
100年以上前のブラフシューぺリアのクラフトマンシップを現代において改めて定義。妥協することなく「S.S.100」らしさを追求

 ビスポークスタイルという自分だけの仕様をオーダーする方式には、本社とのコミュニケーションはとても重要です。しかし、モトコルセはこれまでに数々のメーカーと緻密にコンタクトを繰り返し、製品を輸入するだけでなくR&Dに参画。ここで培われた交渉力が、ブラフシューペリアでも生きています。

 実際に上陸したばかりの「S.S.100」を目の前にすると、その作り込みに圧倒されます。何時間でも見ていられる美しさはまさにオーセンティック。ブラックとシルバーを基調とし、様々な金属の質感が高いクオリティで共存しているのが伝わってきます。

 低く構えたハンドルを採用するカフェレーサースタイルの「S.S.100」は、排気量997ccのVツインエンジンを搭載し、ホイールは前後18インチ。右側2本出しのサイレンサーとフィオール式のフロントまわりがインパクトを与えます。エンジン上部にはコンパクトなチタン製フレームがあり、スイングアームはエンジンに直接マウントする独特の車体構成を持っています。

 フロントブレーキは小径のディスクを4枚装備するベルリンガー製をオリジナルデザインでアレンジしたもの。「S.S.100」のデザインに「大径ディスクは似合わない」との理由から、ドラムブレーキを連想させる小径ディスクを採用しているのです。

世界に1台だけ、自分だけのスーパースポーツを手に入れる

 跨ると、低いハンドルと高いシート、さらに大柄な車体がライダーに手強そうな印象を与えます。セルを押すとエンジンは簡単に目覚め、心地良い鼓動感を発揮。全く力を必要としないクラッチを握り、節度の高いギアを1速に入れて発進すると、「S.S.100」のエンジンは硬質な手応えともに回転を上げ、車体を加速させていきます。

ブラフシューぺリア「S.S.100」を走らせる筆者(小川勤)。独特のキャラクターでありながら、扱いやすさも兼ね備えている
ブラフシューぺリア「S.S.100」を走らせる筆者(小川勤)。独特のキャラクターでありながら、扱いやすさも兼ね備えている

 シリンダーヘッド以外のパーツをアルミ削り出しパーツで構成する88度挟角のVツインエンジンは、低速域ではなんとも言えない鼓動感があり、中速から高速域に行くに連れてパワー&トルク特性が美しく調律していきます。味わいとパフォーマンスを日常の速度域で楽しむことができる独特のキャラクターで、扱いやすさも兼ね備えているのです。

 前傾姿勢がきついため、どうしても上半身、特に腕が伸びきって力が入りがちですが、少し腰を引いて前輪がステアする動きにライダーの重心を追従させると綺麗にバランス。速度が上がるほどその手応えは得やすくなっていきます。

 ライダーの意思と向き合いながら、速度域に合わせて関係性を深めていくフィーリング。走りをイージーに楽しみたいならアップハンドルでシートの低い「ロレンス」を選んだ方が良いかもしれません。それほど「S.S.100」と「ロレンス」の乗り味は別物に仕上がっているのです。

フィオール式のダブルウイッシュボーンを採用するフロントまわりは、その動きを理解するとより楽しむことができる
フィオール式のダブルウイッシュボーンを採用するフロントまわりは、その動きを理解するとより楽しむことができる

 フィオール式のダブルウイッシュボーンのフロントまわりに違和感はありません。ただし、操舵系とサスペンションが独立した構造になっており、走行中にキャスター&トレールが変化しにくいことを理解すると、より楽しむことができるでしょう。理解が進むと優しいタッチのブレーキはどこまでも効力を高め、ノーズダイブなしに前輪を安定させたまま路面へと吸い付かせるのです。

「S.S.100」が醸し出すクラシカルな佇まいは、とてもエキゾチックです。どんな風景の中でも神秘的な存在感を持ち、明らかに他のバイクにはないオーラを放ちます。それはブラフシュペーリアの再出発に情熱を燃やしたティエリー氏の、ブランドに対する深い愛情、そして歴史に対する本気のリスペクトそのものなのです。

「日本でもすでに数台のオーダーをいただいています。オーナー様自身が愛車の製作工程に深く参画できるメーカーは、他に類を見ません。メーカーとファミリーになり、本当に好きなもの、憧れ続けてきたものを形にするプロセスこそが、何物にも代えがたい悦びになります」とブラフシューペリアジャパンモーターサイクルスの近藤氏。

 ブラフシューペリアの生産台数は限定されており、同じものはふたつとして存在しません。それは、オーナーのライフスタイルやセンス、人生を映し出すかけがえのない1台として長く寄り添ってくれることでしょう。

(写真=長谷川徹)

【画像】その作り込みに圧倒!! 1台ずつ手作業で仕上げられるブラフシューぺリア「S.S.100」を画像で見る(30枚以上)

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Writer: 小川勤

1996年にエイ出版社に入社。2013年に二輪誌『ライダースクラブ』の編集長に就任し、様々なバイク誌の編集長を兼任。2020年に退社。現在はフリーランスとして二輪媒体を中心に執筆を行なっている。またイベントレースも好きで、鈴鹿4耐、菅生6耐、もて耐などにも多く参戦。現在もサーキット走行会の先導を務める。

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