“ないものは造る”という発想と情熱 インドネシア製のハンドメイドVツインエンジン搭載車が生まれた背景に迫る

贅沢品の関税が200%といわれているインドネシアのカスタム・シーンでは、“ないものは造る”という発想と情熱により様々なカスタムバイクが生み出されています。ここで紹介する一台はまさにその典型と呼べる存在といえるでしょう。

日本のシーンとは異なるインドネシアならではのカスタムバイク

 1950年代、チョッパーの本場たるアメリカで生まれ、70年代に黄金期を迎えたチョッパーというカスタム・カルチャーですが、現在、最もホットなエリアと言えそうなのが東南アジア、とりわけインドネシアのシーンには独特の風景が広がっています。

ハンドメイドのVツインエンジンを搭載したインドネシア「GTX Motorsport」によるカスタムバイク

 たとえば米国や我が国、日本、そして欧州などではチョッパーの素材といえばハーレー・ダビッドソンが多くを占めますが、贅沢品の関税が200%といわれるインドネシアでは、王道のアメリカンVツインは驚くほど高額。それらの車両をベースにカスタムを手がける行為を我々が住む日本の中で置き換えてみると、たとえばランボルギーニやフェラーリ、ロールスロイスなどを改造してしまう感覚に等しいのかもしれません。

 もちろん、現地で開催されるKUSTOM FEST(カスタムフェスト)やSURIYA NATION Motorland(スリヤネイション・モーターランド)などのショー会場にはハーレー・ベースのカスタムマシンのエントリーも見られますが、前述のような状況を踏まえて考えても、あくまでも中心は日本製の中型排気量車でしょう。
 
 ハーレー・ダビッドソンにおいては、昔の電話帳ほどの厚さがある社外パーツ・カタログがいくつもあるため、その気になれば“ベースマシンがまったくない状態”でも、カスタムバイクのすべてを社外パーツで構成することが出来るのですが、排気量200ccクラスのホンダGLやヤマハScorpio(スコーピオ)、スズキGNやカワサキTAHUNでは、そうはいきません。

 つまりはカスタムを造ろうにも、ひとつ、ひとつのパーツをハンドメイドで製作し、それをカタチにする創意工夫が求められるのですが、中にはエンジンすらもオリジナルで生み出してしまうツワモノも存在します。

“ないものは造る”という発想と情熱ありきで生み出されたハンドメイド・カスタム

 ここに紹介するGTX MotorsportというショップのPutra Darmagitaというビルダーが手掛けた一台も、本来はシングルモデルであるヤマハScorpioをベースにシリンダーを追加した“ハンドメイドVツイン・エンジン”を搭載しています。225cc単気筒のクランクケースを加工し、二つのシリンダーを備えた450ccツインとなっているのですが、“ハーレーが簡単に手に入らないのであれば、Vツインエンジンを作ってしまおう”という情熱と技術は、感服する他ありません。

ヤマハScorpioのシングル・エンジンのクランクケースを大胆に加工することでVツインとなった450ccモーター。ミッドコントロールとなったステップ周りもGTX Motorsportによるワンオフ

 もちろん、フレームやフロントフォーク、タンクやシートなどの外装やステップ、ハンドル、シッシーバーなどの細かなディテールに至るまで、このマシンはワンオフで製作されているのですが、一台のカスタムとして見ても、そのバランスは見事なものです。

 インドネアシア現地でショップのファクトリースペースを見る限り、旋盤やボール盤といった工作機械や溶接機など、かなり旧いチープなものが使われていることが多く、我々が暮らす日本より不利な環境であることは否めませんが、そうした状況の中でも極上のカスタムを生み出されることをインドネシアのショップは強く証明しているのかもしれません。

車体やエンジンなどワンオフパーツで固められながらも、一切の違和感を感じさせないこのマシン。一台のチョッパーとして見てもクオリティはかなりのもの

 高額な予算をかけ、単にパーツを取り付けるのではなく、“無いものは造る”という発想と、それを具現化する情熱……アメリカで生まれたチョッパーというカスタム・カルチャー、その根底に流れるべき“基本の精神”が今、インドネシアという国にこそ強く息づいているように感じられます。

【了】

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Writer: 渡辺まこと

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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