数あるホンダ“カブ”の中で最もシンプルでベーシック  “スーパーカブ50”の魅力を再確認

ホンダが販売する「スーパーカブ」シリーズの中で最も排気量の小さい「スーパーカブ50」は、過去のカブ・シリーズと同様に優れた燃費性能とタフさを持つモデルとして多くのユーザーに受け入れられています。そんな同モデルの魅力を改めて紐解いてみましょう。

ベーシックでスタンダードだからこそ廃れないスーパーカブ50

 時代を超えてもなお廃れないもの……“バイク”というジャンルに限らず、そうしたものたちには必ず“ベーシック”で“スタンダード”なものであるという共通点が存在しているように感じられます。

 たとえば1886年に米国のアトランタで発売され、今なお世界中で愛飲されているコカ・コーラや、1890年に初めてロットナンバーがつけられたジーンズの原型であるリーバイス501など、今から100年以上前に生み出されたものたちでも、時代ごとに進化しつつも“基本的”な部分は変わらずに今に至っているといえるでしょう。

カブ・シリーズならではの伝統を引き継ぐ「スーパーカブ50」

 そうした部分を踏まえて考えると、1958年に登場した“C100”以来、大きくデザインやコンセプトを変えることなく現在の姿に至っている“スーパーカブ”も、我が国が誇る“スタンダード”な存在と呼べるものです。

 丸みを帯びたヘッドライトや泥はねなどを防ぐ大型レッグシールド、クラッチ操作を必要としないミッション(現行車では停車中のみロータリー式)など、このモデルに於いて“変わらない”ポイントは多々あるのですが、何より“耐久性に優れたタフさ”と燃料消費率105.0km/L(スーパーカブ50/時速30km定地燃費値)という“世界最高峰の省燃費”を実現するエンジン性能も誇るべき部分です。

初期のSOHCエンジンから引き継がれたテイストと現代的な完成度

 筆者(渡辺まこと)も、学生時代に初期のSOHCカブである1964年式のC65を手に入れた過去があるのですが、今回、試乗させて頂いたスーパーカブ50は、過去のモデルの良いところをそのまま残しつつ、現代的な完成度が与えられていたように感じます。

 たとえば排気量が63ccだった上、メーター読みで最高速も90km/hくらい出た記憶があるC65と今回のスーパーカブ50を単純に比較するのは難しいのかもしれませんが、エンジンのテイストというか、ベクトルは同じような方向性でありながら、走らせると現在の2019年式は「まったく壊れなさそう」という絶大な安心感があります。

「スーパーカブ50」に乗る筆者(渡辺まこと)

 もちろんパワー自体は排気量の差ゆえ私個人の記憶の片隅を手繰っても過去のC65に軍配が挙がるのですが、60年代の車両と現行車両を単純に比較出来てしまう点もスーパーカブというモデルの普遍性を色濃く表している部分だと思います。

 横置きOHCシングルというエンジン基本構造をキープしながら電子制御で理想的な燃料供給を行うというPGM-FIを採用した現行カブは、アクセルを捻っても「グイグイ」と走る印象ではなく、あえて擬音にすれば「ストトトト」と進む、あくまでもマイルドな印象なのですが、このモデルが“働く実用車”であるという部分を考えれば、その乗り味はまさに“正しい進化”を感じるものです。

 50ccという排気量ゆえ、スタート時や巡航でのパワー不足、スピード不足は否めないのですが、こと静寂性というポイントで考えれば、早朝での新聞や牛乳の配達でも街の迷惑になるようなこともないハズです。またストップ&ゴーの多い実用車の場合、さほどパワーやスピードは必要ないでしょうが、そもそも低速での発信&停車が多いという走行条件の中での使用という点を考えると、まったく文句のつけようがないバイクだと思います。

フロントサスペンションの変更による安定感

 また、現行のスーパーカブ50ではフロントサスペンションも、それまでのボトムリンク式からテレスコピック・フォークに変更されているので、よりハンドリングとブレーキング時の挙動が素直になったようにも感じられます。
 
 たとえば旧型カブ(郵政カブなどの一部モデルを除く)で採用されていたボトムリンク式の場合、急ブレーキ&停車時にフロントが「ピョコン」と跳ねるような感覚があるのですが、テレスコの場合、一般的なバイクのように「グググッ」とフロントが素直に沈み込み、より安定感が増したような感覚を覚えたのが正直なところです。

テレスコ式フロントサスペンションの採用でより安定した走行を実現した「スーパーカブ50」

 細かい仕様をまじまじと見れば、すべての箇所が変更を受けながら、全体のシルエットやコンセプトなど60年以上の時を経てもなお “変わらない魅力”が溢れているのもスーパーカブというモデルの大きな特徴です。その中で最もシンプルで、最も小排気量なモデルである“50”は、まさに“ベーシック中のベーシック”と呼べる存在なのかもしれません。

 そう、例えるなら“かけそば”のようなこのモデルは、選んだオーナーの使用状況やカスタムなどの“具材の要素”で様々な“味わい”に変化します。こうした部分も“スーパーカブ”が時代を超え、多くの人に愛され続けている理由なのではないでしょうか。この世にガソリンがある限り……“スーパーカブ”が次の半世紀も生き抜くことは確実です。

【了】

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Writer: 渡辺まこと

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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