スーパーカブならではの“toilet bowl ”を残しつつ姿を一新 マレーシアのシーンで強烈な存在感を放つロングフォーク・チョッパー
ホンダのベストセラーバイク“スーパーカブ”をベースにしたカスタムバイクは、世界中多くのユーザーから親しまれています。2019年7月27~28日にかけて行われたイベント「アート・オブ・スピード」では手の込んだカスタム・カブを目にすることができました。
アート・オブ・スピード2019の頂点に輝いたスーパーカブ・ベースのロングフォークチョッパー
チョッパー・ベースの王道であるハーレーに限らず、様々なモデルをチョッパーにカスタムする東南アジアのシーン……その中でもホンダ・スーパーカブは高い人気を博しています。

去る2019年7月27日から28日の2日間、マレーシアのクアラルンプール近郊にあるMalaysia Agro Exposition Park, Serdang(マレーシア・アグロ・エクスポジションパーク・セルダン 通称MEPS)にて開催されたイベント「アート・オブ・スピード」(以下AOS)の駐車場にも前後ワイドタイヤ化されたものやチョッパースタイルとなったカスタム・カブが多く訪れるのですが、今年は会場内のベスト・オブ・ショーも同モデルをベースにしたマシンが頂点に輝いていています。
製作したのはSkatecture Custom WorksのMohd Nasir氏。AOSが開催されたマレーシアのビルダーなのですが、クアラルンプールがあるマレー半島ではなく南シナ海を隔てたボルネオ島にあるクチンという街からのエントリーとのこと。東南アジアの中で多くのカブカスタムが生み出されているインドネシアと国境を隣接するエリアゆえか否かは定かではありませんが、隣国のカスタムバイクと遜色ないクオリティに仕上げられています。
ビルダーのMohd Nasir氏によるとベースとなったのは1995年式のホンダC100、現地ではEX5と呼ばれるモデルなのですが、その車体の80%をカットし、フレーム内部に補強のインロウ(円筒状の鋼材)を溶接し、車体が再構築されています。
フロントのスプリンガーフォークはSkatecture Custom Works製のワンオフ(一品もの)で、VANS製グリップが取り付けられたハンドルバーもシンプルなルックスになるようグリップ部に手を加え、ワイヤー類をハンドル内側に通すインナースロットル方式とされています。
これらのモデファイで中型排気量並のサイズとなった車体のホイールはフロント21インチ、リア18インチというセットアップになっており、威風堂々としたチョッパーらしいスタイルとなっているのですが、ナロー(細く)な形状となったフレームリア部のハードテイルやCB500Fのフロント用を加工して装着されたリアフェンダー、あえてスーパーカブらしさを残すために“toilet bowl ”を残し(現地の人はカブ系のガソリンタンクを便器と呼ぶようです)、シート部をドロップダウンさせたタンクなど、各部の造りは秀逸です。
大きくなった車格に合わせエンジンもボアアップ
またこのマシンはエンジンや操作系にも手が加えられており、本来、97ccのEX5のエンジンをボア径53mmのシリンダーブロックとピストンで110ccに排気量アップした上で、オリジナルのティアドロップ型エアクリーナーとUMA製のΦ24mmのレーシングキャブを装着。

そこにワンオフのマフラーを組み合わせ、快活な走りとなった車体の操作系統も、もともとノークラッチだったカブ系エンジンの右側クランクケースを加工し、フットクラッチのジョッキーシフト(左足と左手で操作)というチョッパーらしいセットアップに変更。ルックスのみならず、走りの要素に於いても、かなり本格的な仕様となっています。
ちなみにこのマシンはChempakaというショーネームが名付けられているのですが、製作者のMohd Nasir氏曰く、これは古典的かつ伝統的なマレー語の名前とのことで、英語でいうところの“マグノリアの花”が由来。薄いパステルイエローのカラーリングは、それをイメージしたものだそうです。
多くの大・中排気量車がエントリーするAOSの中で今回、頂点に立ったスーパーカブが証明するように、やはりチョッパーの良し悪しは排気量の大小やベースマシンが何であるかが問われるものではありません。そんな事実を指し示す存在がこの一台ではないでしょうか。
【了】
Writer: 渡辺まこと
ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。



