日本のチョッパー・シーンの金字塔 31年前に製作されたカスタムバイク「TITAN」が残したもの

現在、世界中から注目を集める日本のチョッパー・シーンですが、その歴史の中には伝説的なマシンが存在しています。今回は31年前に製作された一台「TITAN(タイタン)」に焦点を当てていきます。

31年前に製作されたカスタム・ハーレー『TITAN』を通して、ある先駆者の功績を振り返る

 現在、世界から注目を集めるに至った日本のチョッパー・シーンですが、言うまでもなくソレは偉大なる先人たちが道を切り拓き、活動をしてきたからこそ実現されたものです。

日本のチョッパーシーンに多大な功績を残した佐藤由紀夫氏。1975年に練馬区江古田のガレージで『モーターサイクルズDEN』を名乗り、1978年に大田区大森で店舗をオープン。1993年に不慮の事故により逝去。享年42歳。我が国のチョッパーシーンを語る上で欠かせないカリスマと呼ぶべき人物です。

 1975年に練馬区の江古田にあるガレージからスタートし、後に大田区大森、そして現在は山梨県河口湖町にショップを構える老舗、『モーターサイクルズDEN』。その主である佐藤由紀夫氏が手掛けたカスタムバイク『TITAN(タイタン)』は、我が国のチョッパーの歴史を語る上で欠かすことの出来ない存在です。

 若き日にハワイのホノルルに渡り、現地のバイカーと交流し、後に自らのショップの支店をハワイに出すことになった佐藤由紀夫氏は、「ハワイの潮風と日本の湿度に晒しても錆びず、朽ちることのないマシン」の着想を得て、1984年に『タイタン』のプロジェクトをスタートします。

ステンレス鋼管で製作されたグースネック・フレームとアルミ外装、削り出しのエンジンなど現在見ても旧さを感じさせない『TITAN』。まさに傑作と呼ぶに相応しい一台です(撮影 バッドランド・クワイ ケイイチ)

 構想から4年の時を経て、完成した美しいチョッパーは、1989年に米国のカリフォルニア州オークランドで開催されたカスタムショーに出展され、日本人として初のアワードを獲得。車両は米国のイージーライダース誌に掲載され、当時としては文字どおり快挙を果たしました。

 現在では日本のビルダーたちが世界各地のカスタムショーにゲストとして招かれ、高い注目を集めていますが、1980年代当時は米国と日本のシーンに隔たりがあったのは事実です。そんな時代にチョッパーの本場たるアメリカに乗り込み、様々な障害を乗り越え、トロフィーを獲得することは今よりも遥かに高いハードルであったことが容易に想像できます。

計り知れない功績を残した『タイタン』

 筆者(渡辺まこと)の記憶では日本のカスタムバイクやチョッパーが世界から認められ、ある意味、米国から『対等』の目線で捉えられるようになったのは早くとも2000年代中期です。そんなことを思い起こしても、当時の『タイタン』の功績は大げさ抜きに計り知れないものです。

スプリット(分割)タイプのロッカーカバーや削り出しのヘッドおよびシリンダーが印象に残るエンジンはハーレーのショベルヘッドがベース。キャブはS&S製スーパーDを装着します(撮影 バッドランド・クワイ ケイイチ)

 実際、現在に残る『タイタン』を眺めてみるとスタイルといい、ディテールといい、いささかも『旧さ』を感じさせないクオリティに仕上げられています。ちなみにこの一台はフレームにステンレス鋼管を使用し、フロントフォークも同じように削り出しのステンレス製となっているのですが、その理由は前述させて頂いたとおり、『朽ち果てることのない錆びないマシン』を創り上げる目的ゆえ。

 補助燃焼室を設けたアルミビレットのシリンダーヘッドやシリンダー、そしてチタンで製作されたマフラーやチェーンガードなどは、おそらくチョッパーのパーツとして世界に先駆けたものとなっています。

 1950年代に胎動が始まり、60年代から70年代で華開き、黄金期を迎えるチョッパーという乗物は、現在に『当時モノ』を見ても、さほど『旧さ』を感じさせない特異なカスタム・ジャンルなのですが、モーターサイクルズDENによる『タイタン』は、製作されてから31年の時を経た今見ても旧いどころか、むしろ斬新です。

 製作者の佐藤由紀夫氏は1993年に不慮の事故により42歳の若さで、残念ながらこの世を去ってしまうのですが、その功績は『タイタン』と同じように現在も色褪せることなく、輝き続けています。

 その稀有な才覚で『世界に挑む日本人ビルダー』の先駆けとなった佐藤由紀夫氏……彼が創り上げた『タイタン』は、チョッパーに携わる者すべてが心に刻むべき一台です。

【了】

日本のチョッパー・シーンを語る上で欠かせないマシン『TITAN』

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Writer: 渡辺まこと

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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