上海で愛車モンキーに乗るには532万円必要!! EV社会を構築した上海のリアル ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.18~

政府が率先して進めたEV化政策。上海でガソリンバイクに乗るには、法外な金額のナンバー取得料金が発生します。

電動バイク天国の上海で、愛車モンキーに乗りたい!!

 僕が参戦している方ブランパンGTアジア最終戦は、隣国中国の上海国際サーキットで開催された。日本から2時間40分のフライトで浦東空港か虹橋空港に飛べば、入国審査に並ぶのと同じ1時間ほどでサーキットのある田舎町に辿り着く。

中国の中でも上海は洗練された都市へと生まれ変わった

 それにしても上海は、中国のなかでもっとも進んだ街のようで、リニアモーターカーが空港と市街地を結んでいるから驚く。クルマで移動してもわずか30分程の距離をリニアで連結する意味は……はともかく、時代の先を急ぎたがっていることが感じられる(中国リニア経験者によると、ほとんど加速しているか減速しているかだそうである)。

 かつての中国のイメージは銀輪天国である。信号無視する自転車が斜めに横断する。耳を劈くようなクラクションの喧騒がウザい。それも過去のこと。すくなくとも上海に限っては、洗練されているのだ。

 上海人(彼らは自慢を込めてこういう)は、現金を持たない。すべてキャッシュレスだ。ある意味で、東京よりもずっとずっと進んでいる。街はEVばかり。メルセデスやレクサスといった世界の高級車も少なくない。

 バイクも同様で、ほとんどが電動バイクである。滞在した1週間で、ガソリンエンジンを積んだバイクは1台たりとも見掛けなかった。部屋でくつろいでいたときに、窓の外から遠く、ガソリンエンジンのバイクサウンドが一度耳に響いただけである。つまり、上海を走るバイクの99.9999%は電動バイクなのである(キノシタの感覚調べ)。

「ほー、中国人も環境意識に目覚めたのだな。褒めてつかわそう……」

 一旦はそう思った。

電動バイクは完全に庶民の足として定着しています

 だが、市民が率先して「電動バイク乗りましょう運動」をした形跡はない。貧富の差が激しい中国では、低所得者層が自ら率先して、決して安くない電動バイクを乗るはずがない。それでも電動バイク所有率が99.9999%(キノシタの感覚調べ)に達したのは、政府がEV化を推し進めたからである。

 どうやって、99.9999%(キノシタの感覚調べ)を達成したのか……。

 社会主義の中国では、政府の決めごとは絶対である。ある日突然に、ガソリンバイクのナンバープレート取得を高額にした。なんとその額、およそ「500万円」である。ガソリン自動車のナンバー取得は「150万円」。それでも十分に高額だが、ガソリンバイクに乗るにはその3倍もの自己資金が必要なのである。EVライセンス取得は、ささやかな手数料だけだという。ガソリンバイクを一度も目にしなかったのも道理なのである。

ナンバー取得で500万円、我が愛車モンキーを上海で走らせるには大成功が不可欠!

 そこで夢をみた。もし僕が起業して大成功をおさめたら、自慢のモンキー50を上海に持ち込んで走らせてやろうかと。車両本体価格32万円。ナンバー取得金額500万円。総額532万円のモンキー50である。これほど無駄で贅沢な乗りかたも稀だろう。

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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