多気筒も「技術的には可能」と言う“油冷”エンジン スズキのエンジニアが語る進化とは?【TMS2019】

スズキが1985年の「GSX-R750」以来となる“油冷”エンジンを新開発し、「ジクサー250」「ジクサー SF 250」に搭載され国内販売の準備を進めています。油冷はなぜ進化を遂げ復活したのでしょうか。

開発の裏にあったのは、技術の進化と「好きだから」という思い

 1985年のスズキ「GSX-R750」に採用されて以来多くの人たちに支持されてきた「油冷エンジン」は、その姿のまま採用され続けることはなく姿を消しました。それが新開発され、2019年に進化した油冷エンジンとして復活したのです。

新開発の油冷エンジンとスズキ株式会社 二輪カンパニーのエンジニア(写真左から、エンジン設計グループの森氏とチーフエンジニアの野尻氏)

 新開発の油冷エンジンは、排気量250ccの単気筒となって、日本導入の準備が進められている「ジクサー 250」と「ジクサー SF 250」に採用されています。

 バイクのエンジンの冷却方式には水冷か空冷が一般的となっていますが、なぜ油冷を採用したのでしょうか? スズキ株式会社 二輪カンパニーのエンジニアに話を伺いました。

───なぜ今、油冷エンジンなのでしょうか?

野尻氏(二輪企画部 チーフエンジニア):スズキの社内でも“油冷好き”というのがありまして、2015年の東京モーターショーに参考出品したコンセプトモデル「Feel Free Go!(フィール・フリー・ゴー)」で、こっそり50ccの油冷エンジンを載せていました。

2015年の東京モーターショーでは、スズキのコンセプトモデル「Feel Free Go!」に新開発の油冷単気筒エンジンが採用されていた

 もともと油冷の技術を継続的にやってきたこともあり、この250ccの車両開発の際に、“先進的なデザイン”と“スポーツバイク、軽量コンパクト”というコンセプトがありました。そして“若者にも手が届く価格”という制約もあり、このクラスの冷却性能としては、油冷がちょうど良かったのです。

森氏(二輪設計部 エンジン設計グループ):バイクには空冷もあれば水冷もあります。空冷ですと、今回の出力体にはちょっと足りない、どうしても熱的な問題(オーバーヒート)が出てしまう、熱量が多いエンジンになってしまいました。

 ですが、だからといって本当に水冷が必要なのか? 技術者として最初の疑問点がありました。「もう少し冷やせればいい」という中で、我々が1985年から続けてきた油冷というシステムで冷やせるのではないか、というのが油冷を採用した理由になります。

スズキ「GIXXER SF 250」(参考出品車)

 当時から比べると生産の技術、鋳造や検査技術が発展し、以前のSACS(Suzuki Advanced Cooling System)からひとつ進化した形となって、みなさまにお届けできることになりました。

───排気量が拡大されても、この技術は対応可能なのでしょうか?

森氏:それは対応可能です。そもそも空冷で大排気量エンジンも存在しますから。最高性能の冷却システムと言えば水冷ですが、排気量250ccで26.5馬力というエンジンに、そこまでの高性能は必要ない、と最適化しました。

───油冷で多気筒エンジンの可能性もあるのでしょうか?

野尻氏:……技術面だけで言えば、出来ます。

森氏:今回のエンジンは、まったくフィン(放熱用の構造)が無いですよね? 外観は、オイルクーラーがついていますが水冷エンジンと同じような形です。

新開発油冷エンジンのカットモデル

 いままでの“油冷ファン”からは、それでもフィンが欲しいという方々もいらっしゃいますが、このエンジンに関しては、馬力がありながら小さくて軽く、環境性能にも対応出来ていることを目標としましたので、少しでも重くなってしまうものに関しては排除しています。

 冷却システムとして油冷が進化し、空冷(フィン)を頼らなくても十分冷却ができるので、このような形になりました。

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 東京モーターショー2019で日本初出展、参考出品されたジクサーの横には油冷エンジンのカットモデルが置かれ、さらにオイルラインがよくわかる映像がモニターに流されています。細いオイルラインは最も放熱が多い場所に配置され、話にあるように技術の発展が想像できます。

 スズキの油冷(システム)エンジンは、これまで多くのファンからの支持と、スズキ社内の想いが形となっています。しかしその姿に当時を連想させる影は無く、むしろスズキが続けてきた油冷システムの進化が具現化された、と言えるのではないでしょうか。

【了】

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