海外ではお祭り騒ぎのオフロードレース「ハードエンデューロ」 日本でもシリーズ戦があった
オーストリア、アメリカ、台湾などでは毎回ビッグイベントとして盛り上がりを見せる「ハードエンデューロ」レースですが、じつは日本にもシリーズ戦があります。
日本のハードエンデューロ最高峰『G-NET』とは?
海外で人気のオフロードバイクレースのひとつ「ハードエンデューロ」は、日本では九州や広島など西側が発祥と言われ、近年関東以北のエリアでも盛んに大会が開催されています。日本最大のハードエンデューロシリーズ『G-NET(ジー・ネット)』最終戦を覗いてみました。

広島で20年以上続いているレース『サバイバル in 広島』は、通称『サバ広』と呼ばれ多くの参加者、ライダーから支持されています。また中部地方には『CGC』というシリーズ戦があり、こちらは初心者でも参加できるクラスが設けられるなど、すぐにエントリー数が定員に達してしまう人気レースです。
つまり九州や中国地方、さらに中部地方では、すでに何年も前からハードエンデューロのファンが集まり、それが途絶えることなく脈々と受け継がれているのです。そしてその波が関東や東北のライダーにも浸透してきた、というのが現在の状況です。
世界最高峰のハードエンデューロ『エルズベルグロデオ』(オーストリア)に参戦する日本人ライダーの登場とリンクするように、全国的な人気カテゴリーへと成長していきました。

そして国内における最高峰のハードエンデューロ、シリーズ戦がG-NETであり、その最終戦が、日野カントリーオフロードランド(群馬県)で開催された『HINO HARD ENDURO』です。
このレースは難所系ライダーの猛者が集まる大会のため「コースが難しすぎる!」と言った苦情などは全くなく、淡々と走破することに情熱を燃やす選手が大半です(本大会の開催に向け、台風19号の影響に多くのスタッフが復旧作業に当たり、無事日野カントリーオフロードランドで開催されました)。
最終戦の見どころは、実力者2人の電撃参戦
ハードエンデューロの世界に、全日本トライアル選手権の最高峰クラス「IAスーパー」で通算9回のチャンピオン(2013年から2019年まで7連覇)を獲得している小川友幸選手(TEAM MITANI Honda)が電撃参戦しました。

さらに2019シーズンランキング2位の野崎史高選手(Team FwO with YAMALUBE)も参戦し、ホンダとヤマハの両雄がG-NETで激突することになったのです。
小川選手は当初、レース参戦というより「最後尾からマーシャルライダーのように走って、会場を盛り上げられれば」くらいに考えていたと言います。
しかしビッグネームの参戦とあってSNSで話題となり、さらにライバル野崎選手の参戦もあって優勝候補に上がってしまったのでした。
とはいえ、普段はトライアルに専念している小川選手は、ホンダ「CRF250RX」(エンデューロ性能を追求した競技車両)に乗るのも、モトクロス用のウエアやプロテクター、ブーツなどの装着も生まれて初めてのため、ハンデはかなり大きいものです。

野崎選手はヤマハ「YZ250FX」のタイヤに「ムース」と呼ばれるパンク防止用の発泡体を入れて会場入りしましたが、前日からの雨の影響で路面がマディと判断し、急遽チューブに変更しました。
なぜかというと、チューブならば空気圧を調整できるからです。この辺りも毎年他のハード系レースに参戦するなど、トライアル以外の経験が豊富な野崎選手ならではの迅速な動きでした。
一方、小川選手が駆るCRF250RXには、今回のためにハードエンデューロ仕様のカスタムを施していました。ラジエター水路の変更、ウォーターポンプの強化、電動ラジエターファンの追加といった冷却性能の向上です。もちろんレバーやラジエターなどのガード類も追加されていました。
結果は残念ながらレース序盤にクラッチを焼いてしまい、走行不可能=リタイアとなってしまいました。元々アメリカのハイスピードなクロスカントリーを主体に作られたCRF250RXは不利だったとも言えます。
しかしコースのレベルとしては「決して難しくない」とのこと。「今後参戦する機会があれば、マシン作りからトライしてみたいです」と本人は語ります。

そしてこのレースを制したのが野崎選手です。G-NETの絶対的王者や日本のハードエンデューロ界を牽引してきた猛者たちを寄せ付けず、トライアルのスーパーライダーが圧倒的な強さを見せつけ、話題を集めたのでした。
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トライアル界からの刺客により、さらにレベルが上がった日本のハードエンデューロ。2020年はどんなドラマが待っているのか、期待が高まります。
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