枚挙にいとまがないミシュランの歴史 最新モデル「POWER CUP 2」の特徴とは?
ミシュランタイヤから、2020年春より順次発売される「ミシュラン・パワー・エクスペリエンス」シリーズ全4タイプに含まれる「POWER CUP2」の特徴を紹介します。
レースシーンからのフィードバックがタイヤを大きく進化させた
フランスの大手タイヤメーカー「ミシュラン」の歴史は、製品作りのための冒険や挑戦の連続でした。

2輪タイヤにまつわるミシュランの近代史を見ても、1974年に初めてスリックタイヤを2輪グランプリに投入し、2年後の1976年には最高峰クラスだった500ccで勝利し、1977年には世界選手権の50、125、250、350、500ccの全カテゴリーを制覇、1984年にはレース用ラジアルタイヤの投入、1992年にはシリカコンパウンドを500ccクラスに投入、1997年には速度レンジで今やデフォルトになっている「ZR」規格を公開し、1999年には「ミシュラン・パイロット・スポーツ」シリーズを発表、今日に続くOEM、リプレイスのハイグリップタイヤの供給が始まるのです。
2005年には二つの異なるコンパウンドをトレッドに盛り込む「2CT(ツー・シー・ティー)」技術を取り入れたストリートタイヤを販売……と、枚挙に暇がありません。
ドライ性能に振り切ったミシュランらしいスポーツタイヤ
その流れを汲む「POWER(パワー)」シリーズに、2020年春には一挙4タイプの新しいモデルが投入されます。

POWERシリーズがターゲットとするのは、前後17インチラジアルタイヤを履くスーパーバイク、スポーツネイキッド、メガスポーツなど、走りを楽しむためのバイク達です。
なかでも「POWER CUP2」は、レースからサーキットコースでの走行会、スポーツ走行などを楽しむために特化したタイヤです。よりドライグリップにフォーカスしたハイスペックなスポーツタイヤ、というポジションです。
まずご覧いただきたいのはそのトレッドフェイスです。センターエリアに点々とパターンが刻まれますが、スリックタイヤに申し訳程度につけた……と言う方がわかりやすいかもしれません。

そのトレッドコンパウンドも、市街地走行などで雨や低温時に強い威力を生むシリカコンパウンドを使わず、ドライグリップ重視のブラックカーボンラバーのみで構成されています。
タイヤセンター部よりサイド部に、よりグリップの高いラバーを配置したフロント「2CT」、リア「2CT+」というミシュラン独自のレシピを封入するのはもちろん、そうした具材ではなく、ミシュランはタイヤとしてのパッケージのチューニングにこだわりを見せています。
新作が注力したのは、前後タイヤのバランスです。それはMotoGPライダーが求めるものと同じで、ストリートライダーでも基本は同様だと言います。
POWER CUP2も、減速からコーナリングへのアプローチで必要になるブレーキングスタビリティーだけではなく、コーナーアプローチや立ち上がり時の加速など、そのときの前後タイヤの旋回性バランスとグリップバランス、そのチューニングに尽きる、と言うのです。
簡単に言えば、高いレベルの動きでも安心してパフォーマンスを引き出せるようタイヤがしっかりサポートする、ということなのです。

テスト車両はカワサキのスーパースポーツモデル「ZX-10R」です。そのフィーリングを確かめながらテストコースのハンドリング路を周回し始めたのですが……その直後、曇り空から雨粒が落ち始め、その後止むこと無く路面に黒いシミが広がり、残念ながらそのパフォーマンスを確かめることはできませんでした。
POWER CUP2がチョイ濡れ路面ですぐにグリップダウンするようなことはありませんでしたが、ドライ路面推奨タイヤだけにテストは中止としました。
ミシュランが持つ長いモータースポーツとストリートタイヤの関係からすると、もっとも「現場」寄りのスポーツタイヤであり、同日POWER 5に試乗した印象からすると、語られていた前後バランスがもたらす進化は、従来モデルとの比較で大きな違いを体感させただけに、期待を膨らませたままコースを後にしたことは言うまでもありません。2020年春、このタイヤが話題の一本になる予感がします。
【了】
Writer: 松井勉
モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。