実用車をアートの領域まで高める インドネシアのカスタムにかける情熱

人気のビーチリゾートとして知られるインドネシアのバリ島では、小排気量車をベースにしたカスタムが主軸になっています。近年ではそのクオリティもかなり高いレベルに引き上げられているようです。

クオリティの高いバリ島のカスタムバイク

「神々が住む島」と称され、世界有数のビーチリゾートとして知られるインドネシアのバリ島ですが、カスタムバイクの世界に目を向けてもホットなスポットといえるかもしれません。

バリ島のNiko XPCによって製作された「JOJONS」というショーネームが名付けられたこの一台。特徴的なフロントフォークが圧巻の造り込みを見せつけます

 東京と比較すると約2.5倍の5600km²ほどの面積を誇るこの島では約422万人(2012年のデータ)の人が暮らしていますが、インドネシアでバイク情報サイト「NAIKEMOTOR.COM」を運営するArif Syahbani氏に聞いたところ島内にはカスタムバイク・ショップが25件ほど点在。

現地のカスタムといえば首都のジャカルタや毎年、カスタムフェストが開催されるジョグジャカルタなどがある「ジャワ島」が盛んなイメージもあるのですが、それらと比較しても遜色のないレベルのマシンが「バリ島」にも多いとのこと。それはここに紹介する一台からもお分かりになるのではないでしょうか。

 現地では「カブ系」をはじめとする小排気量の日本車が人気を博し、それがメインストリームになっているのですが、バリ島の空港がある州都、デンパサールに店舗を構えるNiko XPCによる車両も水平単気筒エンジンを搭載した現地モデル「ASTREA GRAND100」がベース。いわゆる典型的な「ASEANカブ」なのですが、マシンをご覧になればお分かりのとおり、もはや原型を留めないほど徹底的にカスタムの手が施されています。

実用車を徹底的にカスタムするインドネシアの人々の情熱

 その中でまず目につくのがフロントフォークの構造なのですが、メインフレームにボルトオンで装着されたプレートをフロントサスペンションのマウントとし、Iビーム状の鋼材で製作されたフォークにガーダー方式で装着。

車体最大の特徴がワンオフ(一品もの)で製作されたフロントまわり。ブレーキローターにはカバーを取り付け、インボードディスクのような構造となっているのですが、ここも旧車らしいムードを強調します

 ネックそのものが動く構造となってしまうゆえ、走行性に対して疑問が生じてしまうのも正直なところなのですが、「とにかく見る人に驚きを与える凄いマシンを創りたい」という情熱が伝わる造り込みとなっています。

 たとえばカスタムショーなどに出展される「ショー・カスタム」を評価する場合には、様々な側面から精査する必要がありますが、やはり一番に問われるのは「いかにクリエイティブか」という部分でしょう。それを追求するあまりチョッパーの本場、アメリカでも過去には「これは本当に走るのか?」と思わせる車両も存在しましたが、レーシングマシンのごとく性能だけで語れないのも、この手のカスタムの特徴です。

フロントフォークを延長し、車体に装飾を施す行為などは「パフォーマンス」という部分に直結しない要素ですが、むしろこの「いらんこと」のいかがわしさが魅力のひとつであり、中にはアート的な評価を受けるものも少なからず存在します。

 これまでの累計で1億台以上が生産されてきた「スーパーカブ」は、多くが実用的に使われていると思いますが、そうした素材で「ショー・カスタム」を創り上げるインドネシアの人々の情熱には感服させられることしきりです。それどころか、むしろ「実用車」をここまでするからこそ、彼らのカスタムにかける情熱がストレートに伝わるのではないかと個人的には感じる次第です。

【了】

【画像】バリ島のショップが手掛けたカブ・カスタムの画像を見る(8枚)

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Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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