明治初期から続く“二輪”業界で働くシュートボクシング選手

リング上では華やかなスポットライトを浴び、素晴らしい活躍を見せてくれる格闘技選手ですが、実は試合のファイトマネーで生活できる人はほんの一握り。多くの選手は、別に仕事を持って生活しています。今回はそんな格闘技選手の1人、元シュートボクシング日本スーパーウエルター級チャンピオン、現在4位の坂本優起(ゆうき)選手の仕事の姿を追ってみました。

二輪車の動力源はシュートボクシングで培った身体能力

 シュートボクシング日本スーパーウエルター級4位の坂本優起選手の仕事場は、緊急事態宣言が解除され、徐々に人出が戻ってきている日本が世界に誇る観光地、浅草全域です。リングでは見ることができない坂本選手の普段の姿に迫ってみます。

浅草の雷門前で人力車(二輪)の車夫として働くシュートボクシング日本スーパーウエルター級4位坂本優起選手

――どんな仕事をやっているのですか。

 浅草の雷門前を拠点にしている人力車の車夫です。トレーニングしているジムが浅草なので、21歳の時から人力車を引いています。

――人力車は車輪が二つ、つまり二輪の業界で仕事をしていることになりますね。

 確かに二輪車ですね。ただ、バイクのように前後に付いているのではなくて、52インチの車輪が左右に平行に並んでいますが、そう言っていいのかな(笑)。

――結構体力が必要だと思いますが、格闘技選手なら日頃から体を鍛えているから難なくこなせるんですね。

 いや、仕事もトレーニングを兼ねて、という感じですかね(笑)。それほどスピードを出して引くことはありませんが、体力維持をしながらお金を稼げるというのもいいですね。

――会社に所属しているんですか?

 はい、浅草だけで20社ほど人力車の運営会社があります。僕はその中の「松風」で、週6日間、朝9時から17時まで働いて、18時から、やはり週6でトレーニングしていたんですが、自粛期間中は人力車もトレーニングもできない状態でした。

トレーニングについて熱く語る坂本選手

――その間はどう過ごしていましたか?

 自宅でできるトレーニングで、できるだけ体を動かしていましたけど、やはりジムでやるように追い込めないから、少し太ってしまいました。徐々にですが、ようやく仕事もトレーニングも再開でき始めてるので、絞っていかないといけませんね。

――ところで、人力車の諸元みたいなのを教えてもらえますか?

 諸元…(笑)。タイヤの大きさはさっき言った通り52インチで、車自体の重量は80~90kgぐらいですね。定員は2名と3名のものがあります。車体価格は、1台180~200万円弱ですね。構造的には250kgまで積載できるんですが、お客さんの合計体重が160kgまでが快適に乗っていただける重さです。

人力車の性能は車夫によって若干違う!

――そしてパワーは“1人力”、車夫によって、若干性能が違うと。

 その通りです(笑)。手で持つところを梶棒というんですが、持ち上げたときに、車によって前後のバランスが微妙に違うんです。お気に入りの人力車はありますが、それが必ずしも回ってくるとは限らないんです。ですからお客さんを乗せたとき、車によって違うクセを覚えておくことが、まずは安全走行の基本です。道路交通法上は軽車両に区分されて、法規を順守して車道を走らなくてはいけません。

――安全走行には、車両点検も大切ですよね。

 はい、自分が引く車は、朝の出発前に必ず、緩みがないかとか、汚れがないかとか、各部を点検します。特に一番重要なのはタイヤ周り、ハブとスポーク、そして車軸です。

朝出発前には必ず運行前点検と念入りにマシンを磨き上げます!

――その辺りもバイクと似ていますね。もし、乗ってみたいと思ったら、料金はどれくらいなのでしょうか?

 2人乗りですと、10分3000円、20分6000円、30分8000円、1時間1万5000円のコースがあります。これは基本的な浅草を巡るコースで、車夫が観光名所の案内と解説をしてくれます。案内の仕方ですか、会社には一応マニュアルはあるんですが、僕も勉強して、自分の言葉でご案内するようにしています。

浅草の魅力についてユーモアを交えながら詳しく解説してくれるのも坂本選手の魅力

――昔のように、「どこどこまで行ってくれ」ということもできますか?

 ごく稀に、本当に移動の足に使うお客さんもいますね。銀座や日本橋まで行って欲しいと言われた車夫もいますよ。中には、東京ディズニーランドまで行ったという話も聞きました(笑)。その場合の料金は、要相談ですね。

――シュートボクシングと人力車の両立で、難しい面はありませんか?

 両方とも体力勝負というのが共通していますし、試合が近づくと、人力車のほうを週3回にしてもらって、トレーニングに集中するようにしていますから、これまで難しいと思ったことはありません。もし、選手を引退したとしても、人力車の仕事は続けていきたいですね。

プロシュートボクサー坂本優起 選手が引く人力車で浅草観光を存分に堪能できます

 格闘技と人力車車夫を両立させて活躍している坂本選手。浅草に行った際には、雷門前でぜひとも『人力車 松風』を探してみてはどうでしょうか。プロシュートボクサー坂本優起選手が引く人力車で浅草観光ができるかもしれません。

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人力車 松風
東京都台東区雷門2-10-2高橋ビル1F
電話:090-2749-2157

■ 坂本優起(さかもと ゆうき)

1984年7月14日、北海道函館市生まれ。身長175cm、体重/試合時70kg、通常78kg。
46戦30勝(6KO)16敗。シュートボクシング日本スーパーウエルター級4位。

シュートボクシング日本スーパーウエルター級4位 坂本優起 選手

 高校卒業後に上京し、シーザージム浅草に入門。25歳でプロデビューし、プロ2戦目以降、12連勝を飾り、16戦目の2013年4月にシュートボクシング日本スーパーウエルター級チャンピオンになる。その活躍は日本国内にとどまらず、香港やモンゴルの試合にも招聘されるなど、アジア中心に活動の場を広げている。幼少年体育指導士の資格も持ち、保育園児の体力づくりや、企業や個人へのトレーニング指導も行っている。幼少期に大きな火傷を負い入院した経験から、入院中の病児のご家族を支援する「キープママスマイリング」でのボランティア活動にも参加している。

【画像】人力車と坂本優起選手を詳しく見る(13枚)

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