颯爽と走る姿が勇ましい白バイが電動スクーターになると…… ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.50~
警視庁が導入したBMW Motorrad製の電動スクーター「C evolution」が白バイとなり、東京マラソンの先導車としても活躍しています。今後、白バイが電動スクーターに移行するのかと想像すると……。
颯爽と走る姿が勇ましい白バイが電動スクーターになると……
「警視庁が電動スクーターを導入した」というニュースは、すでにこの『バイクのニュース』でも紹介している。BMWが販売する電動スクーター「C evolution(シー・エヴォリューション)」が白バイになったのだ。
じつは、僕(筆者:木下隆之)はすでにこのバイクを試乗している。大容量のリチウムイオン電池を搭載し、最大航続距離は160kmというから、おそらくネズミ捕りや物陰に隠れての取り締まりでは十分だろう。
加速も強烈である。内燃機関とは異なり回転の初期から最大トルクを発揮するのが電気モーター最大の武器だ。発進の瞬間から頭がクラクラするようなスタートダッシュを披露する。高性能な大型バイクでも、加速では敵わないだろう。
ただ、大容量のバッテリーを搭載するから、重量はかさむ。さすがにライディングの訓練を受けた優秀な白バイ隊員ならば乗りこなすのだろうと想像するが、ヒラヒラと舞うような、華麗なライディングが可能かどうか心配になる。倒れたら起こすのも一苦労だ。
過日、交差点で横転した白バイを見かけたことがある。雨で濡れた横断歩道の白線に足をとられたのである。手を貸そうとしたら、振り払うようにして走り去っていった。よほど恥ずかしかったのだろう。排気音だけがそこに残った。
警視庁に導入されたBMWの電動スクーターは早速、東京マラソンの先導車として活躍したという。そう、排気ガスを吐かない電動スクーターは最適なのだ。
とあるマラソン選手に聞いたところ、バイクの排ガスはとっても迷惑だという。42.195kmを完走するには少しでも新鮮な酸素が必要だ。フレッシュエアを吸いながら走りたいのに、白バイの排気が呼吸を荒くするというのだ。ならば電動スクーターは都合がいい。
アイドリングさせたまま獲物を狙っている白バイ隊員もいる。以前「アイドルストップしたら……」と忠告すると、素直に従った白バイ隊員がいた。つまり、環境に配慮する意識があるのにもかかわらず、排気ガスを吐き落としたままでいるのだ。それすらも電動スクーターで解決できる。
ただし、なんだかライディングのイメージがわかない。正しくニーグリップして、月光仮面のように颯爽と走る姿が勇ましいのに、スクーターゆえに脚を揃えて乗るのだろうか? 買い物のおばちゃんみたいに……そんな姿を早く見てみたい。
【了】
Writer: 木下隆之
1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。