スーパーチャージドエンジン搭載のカワサキ「Ninja H2」シリーズは「E2」「R2」「S2」になる可能性もあった!?

強烈な加速と「マッハ」の名称で知られたカワサキの初代「H」シリーズ。その哲学を引き継ぎ開発された、とされるのがスーパーチャージドエンジンを搭載する「Ninja H2/H2R」シリーズですが、そのネーミングにまつわる意外な痕跡がみつかりました。

ネーミングについて気になることが……

 2ストローク3気筒エンジンで強烈な加速と「MACH(マッハ)」の名称で知られたカワサキの初代「H」シリーズ。その哲学を引き継ぎ開発された、とされるのがスーパーチャージドエンジンを搭載する「Ninja H2/H2R」シリーズです。

2020年現在、量産市販車としては世界唯一のスーパーチャージドエンジンを搭載するカワサキ「Ninja H2R」(クローズドコース専用車)。もしかしたら「E2-R」、「R2-R」、「S2-R」というネーミングになる可能性もあった!?(撮影協力/(株)BDS)

 2014年に発表、2015年に発売開始された「H2」シリーズですが、じつは別のネーミングが用意されていた痕跡を発見しました。日本の商標登録を調べてみると、次の各商標が登録されていることがわかります。

「E」「E2」「E2-R」
「R」「R2」「R2-R」
「S」「S2」「S2-R」

 米国特許商標庁の商標登録にも「H2」と「R2」が登録されています。アメリカでの商標登録出願日は2013年2月21日となっているので、てっきり公道モデルが「H2」、サーキット専用モデルは「R2」にすることをカワサキは迷っていたのかな? と思ったのですが……。

 日本での商標登録出願日は、「E」「H」「R」「S」が2014年2月13日。「E2」「H2」「R2」「S2」が同年2月21日。そして「E2-R」「H2-R」「R2-R」「S2-R」が同年7月3日となっています。

 この法則から鑑みると、「H2-R」のネーミングを「R2」にするかどうか迷っていたわけではない、ということがわかります。

カワサキ「500SSマッハIII(H1)」(1969年)

「H2」シリーズのネーミングの源流となった「MACH(マッハ)」シリーズを振り返ってみると、1969年に発売された2ストローク3気筒500ccの「500SSマッハIII」は「H1」、1972年に発売された2ストローク3気筒750ccの「750SSマッハIV」は「H2」、同じく1972年に発売された2ストローク3気筒250ccの「250SSマッハI」は「S1」などとネーミングされていました。

カワサキ「500SSマッハIII(H1)」をベースに開発、市販ロードレーサーとて限定発売された「H1-R」(1969年)

 ここから推察すると、「H2」シリーズが「S2」「S2-R」とネーミングされた可能性は大いにあったと考えられます。しかも頭文字「S」は「Supercharger(スーパーチャージャー)」のSですし……。

 それでは「R2」のネーミングはどんな根拠を付ける可能性があったのでしょうか? 「H2」シリーズは川崎重工業の総力を結集して世界初の技術、世界で唯一無二の技術を結集したモデルです。あくまで憶測ですが、「Revolution」(革命・大変革)のような意味を込めての「R」だったのではないでしょうか。

米国特許商標局に出願されたときの「NINJA R2」の文言。このときはまだ図形デザインは出願されていない

 それでは「E」のネーミングはどうでしょう? 「Evolution」(発展・進化)の意味もあるかもしれませんが、最近カワサキは気になるティーザー動画を公開しはじめていて、じつはそれに関係しているのではないかと想像しています。

 この一連の動画は「EV Endeavor」と名付けられている、カワサキの電動バイクプロジェクトです。

 2020年2月14日から、わずか20秒のティーザー動画を五月雨式に9本発表していて、「H2」シリーズのティーザー動画と同じ手法での発表方法です。このままいけば、本来10月にドイツで開催されるはずのINTERMOT(インターモト)で実車がお披露目になる予定だったのでしょう。

 これはもしかして「E」シリーズは「Electric」(電気)の「E」なのでは?

カワサキが開発を進めている電動スポーツモデルのティーザー動画『2020 Kawasaki EV Endeavor 10 The Challenge Continues(20secs)』

「E」シリーズの商標登録は存続していますし、「EV Endeavor」の車体は「H2」シリーズと同じトラスフレームだし、軽量(に見える)スポーツタイプでギアチェンジができる電動バイクを世界的量産2輪車メーカーが発売するとしたら画期的だし、回生ブレーキ機構など電動の技術は新幹線からリニアモーター鉄道車両まで手がける川崎重工業ならではだし、革新的なEVバイクを発売するとしたら「H2」シリーズと同系譜のネーミング、すなわち「E2」シリーズと名付けてもおかしくはありませんよね。

 と、勝手な妄想を膨らませつつ、まだまだ「H2」シリーズをめぐる奇譚コラムは続きます。

【了】

【画像】カワサキ「Ninja H2/H2R」の“エイチ”は本当か!?(9枚)

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Writer: 小林ゆき(モーターサイクルジャーナリスト)

モーターサイクルジャーナリスト・ライダーとして、メディアへの出演や寄稿など精力的に活動中。バイクで日本一周、海外ツーリング経験も豊富。二輪専門誌「クラブマン」元編集部員。レースはライダーのほか、鈴鹿8耐ではチーム監督として参戦経験も。世界最古の公道バイクレース・マン島TTレースへは1996年から通い続けている。

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