女性チームで挑む3時間耐久レース “もて耐はじめてライダー”参戦レポート
2020年の『もてぎ7時間耐久ロードレース』通称“もて耐”に、レース初心者の筆者(伊藤英里)が女性チームのライダーの1人として参戦しました。その模様をお届けします。
「レースに参戦したい!」熱い想いで挑んだはじめての“もて耐”
“もて耐”は不思議です。走るまでは不安があったのに、あんなに緊張もしていたのに、終わってみたら「来年は……」と考えているのです。そんな2020年の『もてぎ7時間耐久ロードレース』“もて耐”に、レース初心者の筆者(伊藤英里)が女性チームのライダーの1人として参戦した様子をお届けします。

まずは“もて耐”について、少し触れておきましょう。もて耐とは、毎年8月ごろに『ツインリンクもてぎ』(栃木県芳賀郡)で開催される耐久レースです。排気量115cc以上250cc以下の4ストローク2気筒以下のバイクによって争われます。
アマチュアライダーが参戦できる耐久レースとして人気を誇る、1988年から続く草レースイベントです。例年では7時間耐久で開催されてきましたが、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により、3時間耐久となりました。
今回参戦するチーム『Frau Central & BMCJ』は、『バイクのニュース』でもおなじみ、モーターサイクルジャーナリストの小林ゆきさんをはじめ、監督の坪井千春さんのベテランライダー2人に、並河真奈さん、加山ゆきこさん、そして私、伊藤英里という5名構成です。
並河さんと加山さん、それに伊藤はもて耐初参戦(!)、バイクはBMW Motorrad「G310R」です。レースに参戦するくらいだから速いんでしょ? と思われるかもしれませんが、少なくとも私は、走行会でいつも一番遅いクラスを走っています。
「もて耐に、レースに参戦したい!」そんな熱い想いを持ったライダーが集まったチームなのです。
もて耐参戦に必要なモノ
7時間耐久のもて耐に参戦するには、MFJ(一般財団法人日本モーターサイクルスポーツ協会)の国内ライセンスと、TRMC-S(ツインリンクもてぎクラブスポーツ)への入会が必要です。

というわけで、私も今年初めてこれらをゲットしました。1日でもて耐に必要なライセンスが取得できる『1day GET MFJライセンス』という講習会が用意されているので、大変なことはありません。参戦してみてわかったことですが、もて耐にはこの講習会のほかにも初参戦ライダーのためのフォローシステムがあり、とても心強く感じました。
そしてチームのベテランライダー、小林ゆきさんと坪井監督からは“もて耐初めてライダー”に、とても様々なカタチでのサポートもいただきました。
ライディングスクールの講師も務めているゆきさん直々の座学、勉強会は丁寧かつわかりやすく、ビギナーに寄り添った内容で目からウロコがぽろぽろ……。さらに、情勢を見ながら、ライディングスクールや7月下旬の『もてぎロードレース選手権』への参戦。こうして経験を積み、もて耐当日を迎えたわけです。
動揺を吹っ飛ばしたサインボード
もて耐当日。同じくもて耐初参戦ライダーの並河さんは、いつもと変わらない笑顔です。加山さんも、自分のペースで走行のイメージトレーニングをしています。そして私は、いつもとは違う、しかし心地よい緊張感を抱いていました。

エントリー77台中66番グリッドから迎えたスタート。スタートライダーのゆきさんから坪井監督につなぎ、いよいよ私が走るときを迎えました。あくまでも冷静にコースイン……まではよかったのですが、ハンドル周りを見てびっくり、ブレーキのマスターシリンダーに貼られているはずのライダー交代のタイミングを書いたテープが無いのです!
「え~~!?」
これには思い切り動揺しました。動揺したまま走っていると、さらに4コーナー立ち上がりで『RIDE THROUGH』と『36』が表示された蛍光イエローのサインボードが目に飛び込んできました。
「もしかしたら、ライドスルーペナルティを受けるかもしれないから」
走行前に言われたことが一瞬でよみがえり、一目散にピットロードへ。動揺してばかりの走行でしたが、一方で「ああ私、レースをしているんだなぁ……」とも感じ入ってしまいました。
もて耐は不思議です。2度目の走行のときにはひたすら走りに集中して、文字通り暑さも感じないくらい夢中になって、達成感とともにチェッカーライダーの並河さんにハンドルを託しました。
ふと、すでに「来年はもっと……」と考えている自分に気づきます。「来年は、もっと速く走りたい」と。
サインエリアで並河さんがチェッカーを受けたのを見届けると、緊張感が拍手と歓声に変わりました。結果は総合67位。しかしフィニッシュしたことが何よりの“結果”であることは、みんなの泣き笑いのような表情が物語っていました。

もて耐は本当に不思議なんです。職業も経歴も年齢もそれぞれに違う大人たちが、こんなにも夢中になって、ひとつのことにまい進して、笑って泣ける……。本当に、不思議な魅力が詰まった耐久レースなんですよ!
【了】
Writer: 伊藤英里
モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。





