なにがスゴイの?このバイク カワサキ「Ninja ZX-25R」を“貴重”と言わしめるメーカーの開発姿勢と独自性

カワサキ「Ninja ZX-25R」は、2020年9月に新発売された並列4気筒エンジンを搭載する排気量250ccクラスのスーパースポーツモデルです。現行モデルとしては唯一無二の存在にライターの中村友彦さんが試乗、考察します。

250ccクラスでは貴重なプレミアムバイク

 カワサキ「Ninja ZX-25R」(以下、ZX-25R)の魅力と言ったら、誰もが真っ先に思い浮かべるのは、現行車では唯一にして、カワサキが約30年ぶりに全面新設計した、排気量250ccの並列4気筒エンジンでしょう。

カワサキ「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」(2020年型)に試乗する筆者(中村友彦)

 世間の一部では“パワーが物足りない”、“往年のZXR250のほうが刺激的”、“吸排気とECUに手を入れると激変”などという意見があるようですが、私自身(筆者:中村友彦)は久しぶりのクォーターマルチ(250ccの多気筒エンジン車)の出来栄えに、素直に感動しました。

 もちろん最も印象的だったのは、絞り出すようなカン高い排気音と共に、レッドゾーンが始まる17000rpmに向かってイッキに回る、高回転域の官能的な吹け上がりです。とはいえ。ZXR250を筆頭とする1980年代から1990年代の250cc並列4気筒と比べると、低中回転域の実用性が向上していることも、個人的には特筆したくなる要素でした。

 ただし、エンジン以上に私が心を動かされたのは、カワサキの開発姿勢です。と言うのも、今の時代に新規で250cc並列4気筒車を作るとなったら、エンジンだけで十分な価値があるわけですから、それ以外の部分はコストダウンを念頭に置いた、漫然とした造りになっても不思議ではありません。でもZX-25Rにそういった気配は皆無で、250ccクラスでは貴重なプレミアムバイク、と呼びたくなる品質と乗り味を実現しているのです。その結果として、価格(税込)は250ccクラスではかなり高価な82万5000円(標準仕様)から91万3000円(SE仕様)となりましたが、実際にZX-25Rに接して、価格に異論を述べる人はほとんどいないでしょう。

並列4気筒の醍醐味を気軽に満喫

 並列2気筒エンジンを搭載する既存の「Ninja 250」が、ベーシックモデルとしての魅力を追求していたのに対して、ZX-25Rの乗り味は、ワールドスーパーバイクで前代未聞の6連覇を達成したシリーズの長兄「Ninja ZX-10R」の再現を目指しています。

カワサキ「Ninja ZX-10R KRT EDITION」(2020年型)に試乗する筆者(中村友彦)

 ちなみに、他社の250ccロードスポーツモデルでもよく使われる「リッタースーパースポーツの思想と技術をフィードバック」という言葉(表現)に、私は違和感を抱くことが多いのですが……。

 オートブリッパー機能付きのクイックシフターとトラクションコントロールの秀逸な作動感や、ブレーキング時に感じるフロントまわりの剛性の高さ、低めのクランク軸が原因と思われるコーナリング初期の程よい安定感、上半身の使い方に応じて車体の向き変え度合いが変わる2次旋回などは、確かに、ZX-10Rに通じる印象でした。

 もっともZX-25Rの乗り味は、見方によっては「ZX-10RよりZX-10Rらしさを味わいやすい……?」と言えるのもしれません。我ながら妙な表現ですが、ZX-10Rを筆頭とする昨今のリッタースーパースポーツが、あまりにも高性能になりすぎた結果、オイシイ領域を味わいづらくなったのに対して、ZX-25Rはわずかでも直線があれば、このエンジン形式ならではの咆哮が堪能できるのです。

 しかも、高荷重を前提とした設計のZX-10Rとは異なり、ZX-25Rはシャシーの反応が柔軟なので、思い通りのアクションが出来ない、積極的な荷重がかけられない状況でも、それなりのスポーツライディングが楽しめます。さらに言うならこのバイクの乗車姿勢は、既存の「Ninja 250」と比べれば、ハンドルグリップが低く、ステップが後退していますが、決してスパルタンと言うレベルではないので、ZX-10Rほどの緊張は強いられません。

カワサキ「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」(2020年9月発売)

 そのあたりを把握した私は、またしても妙な表現になりますが、これは「お得なバイクだ……」と感じました。何と言っても、サーキットに出かけたり、見通しがいい快走路を探したりしなくても、並列4気筒の醍醐味が堪能できるわけですから。言ってみればZX-25Rは、リッタースーパースポーツと比較すると、ガマンを強いられる場面が少ないバイクで、絶対的な速度レンジが低い日本の路上では、この特性は有効な武器になるでしょう。

往年の「Z1」「Z2」や「GPZ900R」などに通じる資質

 バイク関連のウェブや雑誌を熱心に見ている方なら、すでにお気づきだと思いますが、現在のアフターマーケット市場では、マフラーやリアショック、ライディングポジション関連パーツ、サブコン、外装、各種スライダーなど、ZX-25R用のカスタムパーツが続々と登場しています。話題のニューモデルですから、それは当然と感じる人がいるかもしれませんが、他メーカーが250cc並列4気筒車を発売しても、私はここまで盛り上がらなかった気がします。

カワサキ「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」(2020年型)に試乗する筆者(中村友彦)

 逆に言うならカワサキ車には、カスタム意欲をそそる、いい意味での“隙”が備わっているのです。と言っても、それはカワサキの意図ではないでしょうし、すべてのモデルがそうと言うわけではありませんが、個人的には同社の歴代並列4気筒車、「Z1」「Z2」系や「GPZ900R」、「ゼファー」シリーズ、「ZRX1100」「ZRX1200」、「Z900RS」などに通じる資質を、ZX-25Rには感じました。

 ちなみに、もし私がZX-25Rのオーナーになったら、真っ先に行ないたいカスタムはマフラーとリアショックの交換です。ノーマルに悪い印象を抱いたわけではありませんが、これまでのカワサキの傾向を考えると、この2点の変更にはかなりの効果が期待できそうです。もちろんマフラーとリアショックを交換したら、次はサブコンを投入してタイヤをハイグリップ指向に変更して……という感じで、前述したカワサキの歴代並列4気筒車と同様に、さらなるカスタム意欲が湧いてくるのでしょう。

【了】

【画像】カワサキ「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」(2020年型)の詳細を見る(14枚)

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Writer: 中村友彦

二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。

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