生身の身体で時速300キロの世界に興奮!? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.90~

レーシングドライバーの木下隆之さんは、2輪のロードレースを観戦してこれほど興奮を誘うモータースポーツはないと言います。どういうことなのでしょうか?

空へ飛び立つほどの速度域、もはやファンタジー……

 バイクのレースほど興奮を誘うモータースポーツはないと思う……と言うと数々の関係者からのクレームが届きそうである。僕(筆者:木下隆之)が4輪のレースで禄を食み、細々ながらも焼肉や酒を楽しんでこられたのは4輪レースのおかげなのだが、それでもやはり、バイクのレース観戦は興奮する。

2輪ロードレースの最高峰MotoGP観戦に興奮しきり

 なぜなら、身体を剥き出しにしたまま、あれほどの高速で、接触ギリギリの、それでいて時には接触しながらバトルを披露するモータースポーツなど、バイクレースを除いて他にはないのである。

 そもそもドライバーと違ってライダーは、バイクにまたがっているだけという無防備な姿である。それで300km/hオーバーで疾走するとは……。

 セスナ機の離陸速度は160km/h前後だそうだ。向かい風が強ければ、もっと低い速度でヒョイっと飛び立つ。ボーイング747だって、300km/hを目処に機首をあげるという。つまり、旅客機が大空に飛び立つ、そんな高速移動体に、ただただまたがっているだけなのである。これはもう、ファンタジーの世界……だが、バイクレースの世界はファンタジーではなくリアルな戦いの場だ。

 そんな速度域で何にも守られていないばかりか、アクロバティックな動きをする。直線ではカウルに潜って空気抵抗を減らしていたのに、コーナー手前のブレーキングゾーンでは上体を起こし、足を大きく広げ、空気抵抗を増やす。いわばエアブレーキのようなものである。

レーシングドライバーの筆者(木下隆之)から見た2輪ロードレースは、信じられないことばかり……

 F1のDRS(ドラッグ・リダクション・システム)と同様な効果を身体で作り出しているかのようだ。F1のそれは、リアウイングの角度を変えることでストレートの速度を高めながら、コーナーではダウンフォースを得るシステムである。だがそれは、機械的な細工であり、ハミルトンやアロンソが自分の身体を使っているわけではない。

 だというのにライダーは、自らの身体を空力付加物として活用している。これを見て興奮しないわけがない。2輪のレースは、やはり興奮する。

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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