500cc王者ガードナーの息子、レミーがKTM・テック3からMotoGP昇格! ペトルッチとレクオーナはシート喪失!?
500ccクラスの世界チャンピオンを父に持つレミー・ガードナー。現在、Moto2クラスのチャンピオンシップをリードする23歳が、KTM・テック3からMotoGPクラスに昇格することが発表された。
以前にもあったMotoGPクラス昇格オファー
先日開催されたイタリアGPのMoto2クラスで今季初優勝を飾ったレミー・ガードナーが、2022年にテック3・KTM・ファクトリー・レーシングからMotoGPデビューすることが発表された。

そのファミリーネームが示す通り、1987年に当時最高峰だった500ccクラスの世界チャンピオンに輝いたワイン・ガードナーを父に持つレミーは、2014年にMoto3で世界デビュー。この年は3戦のみの出場に終わったが、翌2015年はフランス・チームのCIPからマヒンドラのマシンを駆ってフル参戦。2016年よりMoto2に戦いの場を移す。同クラス5シーズン目を迎えた昨年の最終戦、ポルトガルGPでキャリア初勝利を挙げた。

23歳で迎えた今年は、第6戦を終えた時点で優勝1回を含む計5回の表彰台を獲得。合計114ポイントを稼ぎ、チャンピオンシップをリードしている。
2017年と2018年の2年間、テック3でMoto2クラスを戦っていたこともあり、4月中頃よりテック3からMotoGPクラスに参戦するという噂が流れていたが、当時、父のワインはこう話していた。
「レミーがMotoGPに向かって進んでいることに間違いはないが、そのタイミングは、もしかしたら2020年だったかもしれない。実は以前、エルベ(ポンシャラル:チーム代表)からオファーを受けていたんだが、その頃はまだKTMの競争力があまり高くなく、Moto2でもう1年過ごし、より良いバイクに乗る方が得策だと思ったんだよ」
今季所属するレッドブル・KTM・アジョのアキ・アジョ代表は、当初ガードナーが2020年に加入することを希望していたそうだが、さまざまな理由によりホルヘ・マルティン、長島哲太のコンビを選択。それによりSAG(Stop and Go)レーシング・チームに残留したレミーは1年落ちのマシンで走ることになったが、現在はKTMファクトリーとの間で2年契約を結んでいるという。
「KTMとの2年契約は、Moto2で1年、MotoGPで1年を意味する。今年の結果が良ければレミーは自動的にKTMのシートを手に入れることができるんだが、もしKTMがそれを望まなかった場合には、別のMotoGPチームに行くことも可能なんだ」
ペトルッチとレクオーナはシートを喪失か!?
テック3はKTMのサテライト・チームに当たるが、今回の発表に先駆け、ファクトリー・チームのレッドブル・KTM・ファクトリー・レーシングのブラッド・ビンダーが契約を更新し、2022年から2024年までKTMファクトリーから参戦することもすでに発表されている。

昨年、MotoGPクラス3戦目のアンダルシアGPでオーストリアのメーカーに初めての勝利もたらしたビンダーは、今年も2回の5位を含む計5回の入賞を果たし、KTM陣営でトップとなるランキング8位(第6戦イタリアGP終了時点)と安定した成績を残している。
今シーズン、テック3からファクトリー・チームに昇格したミゲール・オリベイラの契約更新もおそらく時間の問題だろう。新しいシャシーが投入されたイタリアGPでは予選7番手から好スタートを決め、2位表彰台を獲得している。
一方、ドゥカティ・ファクトリーから移籍してきたベテランのダニーロ・ペトルッチ、KTMのMoto2マシンで走り、その活躍を認められて昇格した21歳、イケル・レクオーナを取り巻く環境は厳しい。

ペトルッチは昨年雨中のレースを制した第5戦フランスGPで5位、2019年に初優勝を遂げた地元のイタリアGPで9位と復調の兆しを少しずつ見せてはいるものの、10月には31歳を迎える。
フル参戦2年目のレクオーナもこれまで目立ったリザルトを残せておらず、よほど印象に残るパフォーマンスを見せない限り、ふたりとも残留は難しそうな状況だ。
テック3のボス、ポンシャラルは「カタルニアGPの週末にKTM首脳陣と“重要な会議”を行う予定になっている。アッセンでのオランダGPの頃には、もっといろんなことが明確になっていると思う。つまり、ライダーたちは6月末までに自分の実力を証明しなければならないことを意味している」と現状について説明する。
激しさを増すチームメイトとのタイトル争い
では仮にテック3のシートがひとつ空いた場合、そこに座るのは誰かというと、その最有力候補はガードナーのチームメイトで、共にタイトル争いを繰り広げるラウール・フェルナンデスだ。

2019年、Moto3を走っていたフェルナンデスは、シーズン終盤に2勝を挙げるなど、大躍進。KTMの意向も働き、残留する方向で合意に至っていた長島哲太を押し出すようなかたちでレッドブル・KTM・アジョに収まった。Moto2に昇格した今年もすでに2勝し、6ポイント差でランキング2位につける。
「KTMがこの機会を与えてくれたことを大変嬉しく思う。僕にとっては信じられないチャンスであり、KTMのバイクを走らせることが待ち切れない。僕を信じてくれたKTM、MotoGPクラスに到達するために、僕をサポートしてくれた全ての人たちに感謝したい。まだ始まったばかりだ」とコメントを出したレミー。「今はまず、この2021年を力強く締めくくることに集中する必要がある」と語っている通り、後輩の追撃を振り切り、Moto2クラスのタイトルを手土産にMotoGPクラスにステップアップしたいところだ。
【了】
Writer: 井出ナオト
ロードレース専門誌時代にMotoGP、鈴鹿8耐、全日本ロードレース選手権などを精力的に取材。エンターテインメント系フリーペーパーの編集等を経て、現在はフリーランスとして各種媒体に寄稿している。ハンドリングに感銘を受けたヤマハFZ750がバイクの評価基準で、現在はスズキGSX-R1000とベスパLX150を所有する。
Twitter:@naoto_ide