1995年の誕生から既に四半世紀 いまだ色褪せない魅力を放つサンダンス「スーパーXR」とは

ハーレーダビッドソンのチューンングやカスタムを施す老舗ショップとして知られる「サンダンス」はこれまでに数々のバイクを作り上げてきましたが、同店を象徴する存在と言っても過言ではないコンプリートマシンが「スーパーXR」でしょう。どのようなバイクなのでしょうか。

様々な改善を施し高い信頼性と性能を引き出す

 過去10年を振り返ってみると日本自動車輸入組合(JAIA)のデータでの輸入車新規登録台数においてトップに君臨し、「いつか乗りたいバイク」として挙げられることが多いハーレーダビッドソンですが、しかし、その一方で“アンチ”と呼ぶべき人が多くいるのも残念ながら事実ではないでしょうか。

一見すると’83~’84年に限定生産されたXR1000に見えるものの、その実、異次元のパフォーマンスを見せるサンダンス「スーパーXR」。基本はコンプリート・マシンですがオプションで様々なスタイルに変更可能なカスタムバイクとしての側面も見せつけます

 たとえば最近のインターネットでは「ハーレー・オヤジの排気量マウントが鬱陶しい」や「爆音がうるさい」という言葉も目にしますし、ノンビリと走るアメリカン・クルーザーの乗り味やリア重視となる独特のブレーキ操作からか「あんなのはバイクじゃない」という意見も、その昔からしばしば耳にします。

 一部のライダーのマナーからか、そうしたネガティブなイメージで語られることが多いハーレーというバイクですが、しかし、そんな否定派にこそ一度は乗って頂きたいマシンが存在します。それがサンダンスによるコンプリート・マシン、「スーパーXR」です。

’83~’84年の2年間のみで限定生産されたハーレーダビッドソン「XR1000」

 1972年にハーレーダビッドソン社のワークスレーシングマシンとして登場したデュアル・キャブのXR750やBOTT(2気筒の市販バイクで開催されるロードレース)への出場ホモロゲーション(レース出場への認証)をクリアする為、’83~’84年の2年間のみで限定生産されたXR1000が、かつてハーレーダビッドソン社からリリースされ、いわばそのレプリカ的に見られがちなスーパーXRですが、じつのところ、その構造はXR750やXR1000から様々な箇所が改良されており、エンジンおよび車体の内容は純正と大きく異なります。

 もともとスーパーXRを開発するに至った経緯としてサンダンスの柴﨑“ZAK”武彦氏は「XR1000用の対策部品を作っているうちにオリジナルパーツが一台の車両が組み上げられるまでのラインナップになってしまったから」と語るのですが、確かに変更点を簡単に羅列するだけでも純正XR1000からの改善箇所は数多にのぼります。

5速スポーツスターの腰下(クランク&ミッション周り)にサンダンス・オリジナルのシリンダーやヘッドを組み合わせたスーパーXRエンジンはボア89.4mm×ストローク96.7mmの1214ccで後軸100ps/5200~7000rpm、トルク13kg-m/4800rpmを発揮。サンダンスの“ZAK”柴﨑氏の技術、その結晶といえるものとなっています

 たとえばXRのロッカーアームはもともと純粋なレーシングマシンゆえ、抵抗の少ないニードル・ベアリング方式を採用しているのですが、サンダンスではこの箇所をブロンズブッシュタイプに変更し、寿命の短さを改善するに至っています。
 
さらにロッカーアームのバルブとのコンタクトポイント(接点)がローラータイプに変更され、ロッカーアームはニッケル・クロモリ鋼のシャフトを採用。タペットもセミ・ハイドリックを採用することで耐久性を大幅に向上しています。

 また視覚的に分かりやすい部分を説明すると、サンダンスのスーパーXRは純正の鋳鉄シリンダーに成り代わり、アルミ・シリンダーが採用されているのですが、その素材はオリジナルでブレンドした高強度ハイシリコン系のインゴット(素材)から削りだしたもの。内壁に4輪のF1などで採用されているニカジルメッキを施すことでライナーレス構造になっています。

鈴鹿8時間耐久ロードレースに参戦した唯一のハーレーダビッドソンとしても知られるサンダンスのレーシングバイク「デイトナウエポンⅡ」

 そこに組み合わされるシリンダーヘッドもバルブを高強度のステライト材にした上で挟み角をインテーク31度、エキゾースト31度の62度に設定されているのですが、ここもサンダンスの柴崎氏が「デイトナウエポンⅡ」によって培ってきたレース活動での経験や公道での耐久性を考慮した結果に基づいて設定された数値となっており、ある意味、『パフォーマンスと耐久性』という、相反する要素を両立させるもの。

 XR750および1000はインテーク33度、エキゾースト35度でバルブ挟み角は68度、エボリューションのスポーツスターは58度という設定なのですが、その中間点といえるスーパーXRのバルブ挟み角は、どちらの利点も捉えたものとなっています。またバスタブ型の燃焼室やインテークとエキゾーストバルブの間に、えぐれたR形状の山を形成して燃焼室内の掃気の流れを制御する“インテーク・エア・ダム”を備える燃焼室形状などは“ZAK”柴﨑氏オリジナルのアイデアです。

市販パーツのみに頼らず“科学的な根拠に基づき思考を巡らせる”

 たとえば数あるバイクの中で“カタログ1冊からパーツをチョイスするだけで1台のバイクを組むことが出来る”と云われるほど、豊富な社外パーツのラインナップを誇り、それがひとつの魅力となっているハーレーダビッドソンというマシンですが、そうした市販パーツをただかき集めるのではなく、「どうすれば、より良いものが出来るのか?」「どうすれば耐久性を保ちつつ、パワーとトルクを向上させることが出来るのか?」という部分に“疑問を抱き、科学的な根拠に基づき思考を巡らせる”部分が“ZAK”柴﨑氏と他のビルダーたちとの大きな違いのような気がします。

3500rpmを超えると強烈な加速を見せる乗り味は快感の一言。仕事柄、筆者(渡辺まこと)もこれまで様々なマシンに乗った経験がありますが、サンダンス「スーパーXR」が忖度抜きで最もエキサイティングで面白いと断言出来る一台です

 実際にスペックを比較してもXR1000は70ps/5600rpm、レーシングキットの装着でも90psなのに対してスーパーXRはボア89.4mm×ストローク96.7mmの1214ccで100ps/5200~7000rpm(エンジン出力は120ps)、トルク13kg-m/4800rpmという驚愕のスペックを発揮しますが、特に幅広いエンジン回転域で最高出力を発揮するパフォーマンスは既存にあるパーツをただ組み込むだけでは成し得ない数値です。
 
 XR1000といえば、もともとアイアン・スポーツスター(1957年から1986年まで生産された鉄ヘッド&鉄シリンダーのスポーツスター)のクランク周りや4速ミッション、発電系部品が装備された腰下にXRのヘッドを移植した構造ゆえ、耐久性に不安が残るのが正直なところなのですが、スーパーXRは5速ミッション搭載モデルのスポーツスターをベースにしているので当然、そうした部分での不安的な要素も解消されています。エンジン常用回転域の通常走行ではリッター22km以上という燃費の良さも魅力です。

純正の39φフォークにはNHKニッパツ社と共同開発したサンダンス・オリジナルの“トラックテック”スプリングを内蔵。ハーレーといえば「リアブレーキ重視」の独特な特性を持ちますが、それをオートバイ本来の「フロント7割以上」のブレーキングに改善します。トリプルツリーをこのマシンと同じくサンダンス製に交換すれば、その効果はなお絶大です

 無論、スーパーXRは車体にしても前後のサスペンションやホイールなどはサンダンスが独自に開発したものであり、フロントはNHKニッパツ社、リアはカヤバ社に特注した“トラックテック”サスが装着されており、ホイールはエンケイ社と共同開発したモーリスタイプの7本スポークキャストをセット。トリプルツリーも車体手前側にオフセットされたサンダンス・オリジナルが装着され、スイングアームピポット位置を変更することによって、直進安定性とコーナリング性能が高められています。

 3500rpm以下のエンジン回転域で走らせるとハーレーらしいトルクを感じる従順なフィーリングと、タコメーターの針がそれを超えた途端に、まるで異次元の加速と鼓動感を見せる“スーパーXR”というマシン……その乗り味は単なる“レプリカ”ではなく、まさに“スーパー”なテイストを見せつけるものとなっています。

 今回は“スーパーXR”という希代のマシンを説明する為、かなりマニアックな内容になってしまったのですが、様々な意味で“世界に誇る”この名車は、アンチ・ハーレーの方にこそオススメしたい1台です。

【了】

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Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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