台湾キムコ「GP125i VCBS」 抜群の機動力を備える、アンダー20万円の125ccスクーター

台湾の大手バイクブランド「KYMCO(キムコ)」がラインナップするスクーターの中から、125ccクラスとしてはコンパクトで価格も20万円を下回る「GP125i VCBS」に試乗しました。

キムコの間口を広げるエントリーモデル

 近年の日本のスクーター市場では、排気量50ccクラスの販売台数が激減する一方で、125ccクラスが着実にシェアを拡大しています。その背景には、排出ガス&騒音規制やコストダウン、世界基準への適合などという事情があって、かつては50ccに課せられていた日常の足、入門用スクーターという役割は、昨今では125ccに移行しているのです。そういった状況を考慮して、警察庁は2018年に道路交通法を改正し、AT小型限定普通二輪免許の取得に必要な日数を、最短3日から2日に短縮しました。

キムコ「GP125i VCBS」に試乗する筆者(中村友彦)

 実際に125ccスクーターを購入するとなったら、多くの人が1度は目を惹かれるのが、2018年から日本市場への導入が始まった台湾の大手メーカー「KYMCO(キムコ)」の「GP125i」でしょう。何と言ってもこのモデルの価格は、クラス最安値の19万2500円なのですから。

 ちなみに、一昔前の日本の125ccスクーター界では、スズキ「アドレス125」が低価格車の筆頭で(2021年型は22万5000円)、それに次ぐのはヤマハ「アクシスZ」(24万7500円)だったのですが、さすがにアンダー20万円での販売は難しいのか、台湾からの刺客に対する日本勢のリアクションは、とくに無いようです。

前後連動式ブレーキシステム「VCBS」を搭載した「GP125i VCBS」の国内販売は2022年からの見込み

 もっとも、世界100カ国以上の販売チャネルを持つキムコは、価格の安さに特化したブランドではありません。現在のキムコジャパンのウェブサイトを見ると、原付2種クラスには、ラグジュアリー指向の「ダウンタウン125i」(52万8000円)、スポーツ性を追求した「レーシング125S」(32万4500円)、大径ホイールが魅力の「ターセリーS 125」(28万6000円)が並んでいますし、各クラストップの性能を目指したモデルとして、「G-Dink250i」(46万2000円)や「AK550」(110万円)なども存在します。

 その事実を踏まえて考えると、日本における「GP125i」は、同社の間口を広げるエントリーモデルと言っていいでしょう。

日常域に特化したキャラクター

 冒頭から価格に関する話が続きましたが、「GP125i」の魅力は安さだけではありません。このモデルには、抜群の気軽さと機動力が備わっているのです。などと書くと、原付2種ならそれは当然と感じる人がいそうですが、745mmのシート高と1220mmの軸間距離は現在の125ccスクーターの平均を大幅に下回っており、ホイールサイズが近年のこのクラスの主力になっている12インチや13インチではなく、前後10インチの「GP125i」は、ライバル勢より明らかに車格が小さく感じられます。だから誤解を恐れずに言うなら、このモデルは1クラス下の感覚で、混雑した市街地をスイスイ&キビキビと走れるのです。

シート高745mmの車体に身長182cmの筆者(中村友彦)がまたがった状態。125ccクラスのスクーターとしては明らかに小さく感じられる

 もちろん、そういった場面での扱いやすさを重視した結果として、「GP125i」の安定性や運動性は、前述した他のキムコ製125ccスクーターには及びません。とはいえ、アレもコレもと欲張るのではなく、日常域の使い勝手に特化した「GP125i」のキャラクターに、私は思い切りのよさ、同社のスクーターに対する見識の深さを感じました。

 その一方で意外だったのは、低価格車にありがちなマイナス要素がほとんど見当たらないことです。

 まず動力性能の要になるエンジンやブレーキ、サスペンションは、必要にして十分という印象ですし、今回の試乗車に搭載される、2020年から導入された前後連動式ブレーキ「VCBS」のフィーリングは至ってナチュラルです(右レバーで作動するのはフロントのみ。左レバーを強く握るとリアブレーキに加えてフロントブレーキも作動する。国内販売は2022年の見込み)。

 アナログ式回転計+液晶パネルのメーターは、フル液晶が全盛になった現代の視点で考えると、特別感に貢献しているように思えます。

 また、キャリアやグラブバーとしての機能を備えるリアウイングは、個人的には斬新さを感じましたし、レッグシールド内側に備わる大型グローブボックスやコンビニフック、USB電源ソケットなど、現代の125ccスクーターに求められる要素をきっちり抑えていることには、多くの人が好感を抱くはずです。

コンパクトな車体と機動力を追求し、シート下の収納スペースや地上高のクリアランスは優先しない潔さ。シートはメインスイッチの操作で開ける。容量4.5リットルの燃料タンクの給油口もシート下に配置

 そんな「GP125i」に対して、あえて気になる点を挙げるとしたら、バンク角とシート下のトランクスペースがあまり大きくないこと……でしょうか。もっともそのふたつの問題をクリアするためには、車高とシート高を上げる必要があって、そうするとこのモデルならではの気軽さと機動力が失われてしまうわけですから、現状の構成に異論を述べるのは野暮というものでしょう。

【了】

【画像】小さな125スクーター KYMCO「GP125i VCBS」の詳細を見る(14枚)

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Writer: 中村友彦

二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。

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