ベーシックなライディングを楽しめる BMW Motorrad「R nineT」は必要十分な装備とスタイリングが魅力

排気量1169ccの水平対向2気筒エンジンを搭載するBMW Motorrad「R nineT(アール・ナインティ)」は、クラシックなスタイリングに最新の電子デバイスを装備するネイキッドモデルです。その走りにはどのような特徴があるのでしょうか。試乗しました。

人気のクラシックスタイル、ライディングの醍醐味が詰まった生真面目なバイク

 BMW Motorradのネイキッドバイク「R nineT(アール・ナインティ)」(2021年型)に乗りました。初代の登場は2014年のことで、その後スクランブラーやカフェレーサー、アドベンチャーといった様々なスタイルへ派生。近年のネオクラシックブームとカスタムシーンをけん引してきた1台と言っていいでしょう。

BMW Motorrad「R nineT」に試乗する筆者(伊丹孝裕)

 そんな「アール・ナインティ」も発売から7年が経過し、エンジンを中心にアップデートが施されました。大きな変更箇所は電子制御スロットルが採用されたことで、これによって出力特性の制御がより緻密に行えるようになったのです。

 具体的には、3パターン(レイン/ロード/ダイナミック)のエンジンモードが盛り込まれ、ライダーの好みや路面状況によってスロットルレスポンスが選べるようになった他、トラクションコントロールやABSの介入度も最適化。さらにはクルーズコントロールが標準装備(上位仕様のプレミアムライン)されたことが大きなポイントです。

 最高出力自体は従来モデルの110PS/7750rpmから109PS/7250rpmへわずかにダウンしているものの、これをネガティブに捉えるユーザーはいないはず。むしろ、その発生回転数が引き下げられたことによる扱いやすさに恩恵がありそうです。

 従来モデルと最新モデルの見分け方は、シリンダーヘッドカバーの形状が異なる他、ヘッドライトやメーター文字盤のデザイン、スイッチボックスにいくつかのボタンが新設された程度に過ぎません。必要なところに必要な改良だけを施すという姿勢に、BMWの生真面目さがうかがえます。

シート高805mmの車体に身長174cmの筆者(伊丹孝裕)がまたがった状態

 シート高は805mmに抑えられているため、平均的な成人男性なら足つき性は良好です。ハンドル幅はやや広めですが、手前に引かれていることもあってリラックスした乗車姿勢が確保されています。また、シリンダーヘッドが垂直方向ではなく、左右に突き出た水平対向2気筒エンジン(通称、ボクサーエンジン)は重心位置が低く、取り回しもハンドリングも軽やかそのもの。224kgの車重自体は特別軽量ではありませんが、またがった時の印象は排気量が1169ccもあるビッグバイクには思えないでしょう。

 とはいえ、エンジン始動時の迫力はなかなかのものです。スターターを押すと「ドドンッ」という音圧とともに、車体は身震いするように振動。最初は戸惑うかもしれませんが威圧的なのはそこまで。走り始めるとライダーの入力に対して素直に従ってくれます。

排気量1169ccの空油冷水平対向2気筒DOHC4バルブエンジンを搭載

 クラッチレバーの操作は軽く、エンジンが冷えていてもギアはカコンカコンと心地よく切り換わっていきます。水平対向エンジンを搭載した他のBMWバイクがそうであるように、アールナインティを操っていてなにより印象的なのは、タイヤから伝わる絶大な接地感でしょう。

 車体をリーンさせるのになんのコツも必要とせず、ヒラヒラと倒し込めるにもかかわらず、タイヤ自体は張りつくように路面をトレース。ちょっとやそっとでは挙動が乱れることはなく、レールの上を走っているような安定感でコーナーをクリアしていくことができるのです。

 スポーティな走りを楽しむ時も回転数を上げる必要はなく、4000rpmも回っていれば充分に力強いトラクションを引き出すことができるはず。美しい弧を描くようなコーナリングと、立ち上がりでの加速というライディングの醍醐味を、どんなスキルのライダーにも提供してくれるのが「アールナインティ」の魅力と言っていいでしょう。

 さらなるスポーティさを求めるなら、エンジンモードのボタンを押してダイナミックを選択すればOKです。スロットルレスポンスが明らかにダイレクトになり、低回転域からでも鋭いダッシュを披露。ズ太いトルクによってスピードが押し上げられていく様は、4気筒のスーパースポーツでは得られない独特の加速感です。

クラシックなスタイリングと力強い走りが魅力のBMW Motorrad「R nineT」

 高い質感を持ち、ハンドリングの軽さとエンジンの力強さを両立し、カスタムも楽しめるのですから、高い人気を維持しているのも頷けます。装備と車体価格を照らし合わせると決してリーズナブルとは言えない点が数少ないウィークポイントですが、そのハードルを越えられるユーザーなら高い満足度が得られるに違いありません。

※ ※ ※

 BMW Motorrad「R nineT」(2021年型)の価格(消費税10%込み)は、224万円からです。

【了】

【画像】BMW Motorrad「R nineT」の詳細を見る(12枚)

画像ギャラリー

Writer: 伊丹孝裕

二輪専門誌「クラブマン」編集長を務めた後にフリーランスとなり、二輪誌を中心に編集・ライター、マシンやパーツのインプレッションを伝えるライダーとして活躍。マン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムなど、世界各国のレースにも参戦するなど、精力的に活動を続けている。

最新記事