【MotoGP第11戦オーストリアGP】世界戦に挑む中上貴晶選手、雨の中をスリックタイヤで完走し13位フィニッシュ

2021年8月15日、MotoGP第11戦オーストリアGPの決勝レースがレッドブルリンクで行なわれました。日本人ライダーとして唯一、MotoGPクラスに参戦する中上貴晶選手(ホンダ)は、13位でレースを終えています。

変わる路面状況、レインかスリックか? 最善の選択とは……

 MotoGP第11戦オーストリアGPは、前戦(第10戦スティリアGP)に続き、2週連続でレッドブルリンクでの開催となりました。山間部にあるレッドブルリンクは天候が変わりやすく、今大会のMotoGPクラスの決勝レースにはそうしたレッドブルリンクの天候が大きな影響を及ぼしました。

ホンダのマシンを駆り、2021年シーズンのMotoGPクラスに参戦する唯一の日本人ライダー、中上貴晶選手(#30 LCR Honda IDEMITSU)

 中上選手は、決勝レースを4列目12番グリッドからスタート。決勝レースの直前にはほんのわずかに雨粒が落ちている様子が確認され、スタートした直後の1周目には白旗が提示されます。

 MotoGPクラスでは、レース中に白旗が提示された場合、ピットインしてドライコンディション用のスリックタイヤを履いたバイクからウエットコンディション用のレインタイヤを履いたバイク(またはその反対)に乗り替えることが可能となるルールがあり、『フラッグ・トゥ・フラッグ』と呼ばれています。つまり、天候によって路面状況が変わった場合にバイクを乗り替えることができるのです。

 しかし、路面状況が大きく変わるほどではなかったようで、ライダーたちはスリックタイヤのまま周回を重ねていきました。

序盤はチームメイトのアレックス・マルケス選手(ホンダ)とポジション争いを展開

 中上選手は序盤にフロントタイヤのグリップに苦戦しながらも、後半に入って11番手を走行していました。しかしレース終盤、本格的に雨が降り出します。全28周の残り5周で最初のライダーがピットに入ってバイクを乗り換えると、その後、残り3周でトップ集団のライダーたちが相次いでピットイン。レインタイヤを履いたバイクに乗り替えました。

 ここで、選択が分かれます。ピットインするライダーがいる一方で、残り周回数を考えて、濡れた路面をスリックタイヤで走り切る判断を下したライダーもいました。中上選手もその1人。スリックタイヤで走行を続け、13位でチェッカーを受けました。

 残り数周の路面はかなり濡れていたようで、最初にバイクを乗り替えたライダーは「スリックタイヤで走るライダーは、走るのにかなり苦戦していた。前のライダーを交わしたときに、彼らがまだスリックで走っていたからびっくりしたよ」と語っています。

フロントタイヤの空気圧が上昇しており、フィーリングに苦戦していたという

 そんな波乱のレースを終えた中上選手に、終盤の路面状況について尋ねました。

「レース終盤に雨が降り始めて、セクター3、4はほかのエリアよりもちょっと濡れていましたね。メインストレートからセクター1、2は、雨が降っていませんでした。なので、コースにとどまることにしたんですよ。

 でも、だんだんセクター3、4では雨が増していきました。そして路面もさらに濡れていったんです。このままスリックタイヤで走るか、レインタイヤのバイクに乗り替えるかを考えました。そのときは決断が難しかったですね。

 残り2周で、このまま走ることを決めました。あの状況ではスリックタイヤで走るのがかなり大変で、クラッシュしないように走っていました。6番手、7番手あたりから後退して13位になってしまい、がっかりです。でも、最善の選択だったと思います。もしバイクを乗り替えていたら、もっと後退していたと思います」

MotoGPバイクに装着される、ミシュランのレインタイヤ

 このレースで優勝したのは、残り3周でピットインせずにスリックタイヤで走り切ったライダーで、2位と3位はレインタイヤを履いたバイクに乗り替えたライダーでした。急速に変わっていく路面状況に対し、いかにピットインのタイミングの判断が難しいレースだったのかがうかがえます。

 波乱のレースとなったオーストリアGPを終え、次戦は第12戦イギリスGPです。イギリスGPの決勝レースは2021年8月29日に行なわれます。日本人ライダー、中上選手の奮闘に期待しましょう。

【了】

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Writer: 伊藤英里

モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。

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