購入代金2台で350万円 ローンを組ませたあげくにショップが詐取!! なぜ?

警視庁は2021年9月2日、江東区在住の42歳、江戸川区在住の52歳と27歳の男3人を「販売意思もその事実もないのに」信販会社から購入代金を詐取したとして逮捕しました。

納品前に全額支払い!? あり得ない犯罪

 警視庁は2021年9月2日、江東区在住の42歳、江戸川区在住の52歳と27歳の男3人を「販売意思もその事実もないのに」信販会社から購入代金を詐取したとして逮捕しました。

消費者からの相談を受け、警視庁が動いた(写真はイメージです)

 バイクショップを経営する江東区在住の52歳の男は、2018年の4月と8月に、このショップのバイク情報が掲載されたポータルサイトで購入を希望した2人の個人情報を使って、信販会社のバイクローンを組ませました。

 また、信販会社には虚偽情報を提供して納車が完了したかのように装い、2台で合計350万円の購入代金を振り込ませ、着服した容疑です。

 虚偽のローン契約をもとにした詐欺ですが、正当なバイクショップの店主はあり得ない犯罪だと驚きます。

「通常の売買では、車両の引き渡しと同時に購入代金を支払ってもらいます。1万円から5万円の手付金をいただくことはありますが、顧客の手元に車両がない状態で、購入代金全額を要求することはありません」

 また、ある信販会社はローン契約について次のように説明します。

「一般的なバイクローンは、契約が成立して、納車完了約1か月後から支払いが始まります。カスタム車のように納車時間がかかる場合は、納車がされるまでは精算を停止します。その整合性は重要です」

 被害にあった2人は、ローンを払い続けたにも関わらずバイクが届かないことから警視庁に相談。インターネット上の売買では代金先払いということは珍しくないため、今回の事件のような形も受け入れられてしまうようです。しかし、とくにローンを組んで車両を購入する場合に、商品が届かないのに支払い請求が始まることはない、と関係者は強調します。

 信販会社はこう警告します。

「ローン契約では必ず契約書面が交付されます。そこには必ずカスタマーセンターなど相談窓口が記載されています。不審な点に気が付いた場合は、すぐに連絡してください」

ローンは信販会社のほかにも銀行系、損保会社系などさまざま。どこも納車後に支払いが始まる(写真はイメージです)

 今回の事件は通常の詐欺ではなく、組織犯罪第二課が事件化しているため、反社会的勢力の関与も報じられています。類似の事件が浮上することも予想されます。正当な商取引では、納車ができない時点で契約を白紙に戻す、販売者が購入代金を受け取っていれば返却するのが通常ですが、こうした事件で被害を回復することは非常に困難です。

 被害者がローン契約で、商品が届かないうちに支払いが先に始まることはない、という基本的な商取引を理解していれば、未然に防ぐことができたのかもしれません。ただ、事件はコロナ禍以前の出来事でした。

 最近は生産能力の低下などで、とくにバイクでは半年から10か月待ち、納期未定というモデルも珍しくありません。

 そんな状況で「商品確保のため先に全額支払いしたほうが納車が早い」といったセールストークで煽られたとしても、けして前のめりにならないよう、納車時期未定の売買は慎重に考えましょう。

【了】

【画像】バイク販売サイトでローンを組む際は慎重に!!(4枚)

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Writer: 中島みなみ

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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