ドイツ仕込みのド迫力クルーザー BMWモトラッド「R18クラシック・ファーストエディション」に乗る

BMW Motorrad史上最大排気量のボクサーエンジンを搭載する「R18クラシック・ファーストエディション」に試乗しました。どのような特徴があるのでしょうか。

往年のBMWデザインを表現する、圧倒的な存在感を放つクルーザー

 1801ccという、とてつもない排気量を持つBMW Motorradのクルーザーが「R 18」(アール・エイティーン)です。2020年の秋に発売され、エンジンそのものが走っているかのようなド迫力スタイルで道行く人々を圧倒。ハーレーの存在感をかすめさせるほどのインパクトを残しました。

BMW Motorrad「R 18 Classic First Edition」に試乗する筆者(伊丹孝裕)

 そんな「R 18」の兄弟モデルとして、2021年の春にラインナップされたのが、この「R 18 Classic(クラシック)」です。今回は2つあるグレードの内、上位に位置する「R 18 Classic First Edition(クラシック・ファーストエディション)」に乗ってみました。

「R 18」と「R 18 Classic」の間にある主な違いは、大型スクリーン、フォグライト、レザー製サドルバック、パッセンジャー用シート、クルーズコントロールなどが追加された他、フロントホイールが19インチから16インチに小径化され、マフラーが変更されたことです。

「R 18 Classic First Edition」は、そこにクロームメッキパーツやホワイトのピンストライプ、専用ロゴといったスペシャルアイテムを追加。質感が大幅に引き上げられた高級仕様になっています。外装は1940年代から1950年代のアメリカンスタイルを意識したもので、ちょっと野暮ったいところに古き良き時代の大らかさが感じられます。

排気量1801ccの空油冷水平対向2気筒エンジン、通称「ビッグボクサー」を搭載

 とはいえ、巨大なシリンダーが左右に突き出たエンジンは決してのほほんとはしていません。セルボタンを押すと「ドドンッ」という爆発音とともアイドリングし始め、その時のブルブルとした揺れは鼓動ではなく振動と表現して差し支えないもの。今どき珍しいほどに主張してくるのです。

 実際、それはエンジンモードにも表れていて、ROCK/ROLL/RAINの3パターンを用意。つまり、ロックンロールという粋なネーミングが与えられ、暴れ度合いを変更することができるのです。最も激しいROCKを選択すると、驚くべきことにアイドリング音から豹変。走らせる前からあからさまにアグレッシブになる演出は極めて珍しく、開発陣が楽しんで作り込んでいる様子が伝わってきます。

シート高690mmの車体に身長174cmの筆者(伊丹孝裕)がまたがった状態

 全長は2465mm、全幅は964mmもありますから(ちなみ同社のスーパースポーツS1000RRは全長2070mm/全幅740mm)、フロントタイヤは遠くに感じられ、ハンドルを操作する時は身体ごと左右へ振るような感覚になるでしょう。反面、シート高は690mmと抜群に低いところに位置し、その低重心のおかげで車体は安定。車重が374kgもあると聞かされれば正直ビビるものの、簡単に後退へ切り換えられる電動バックギアも備わっていますから、中途半端なツアラーやクルーザーよりも思いのほか取り回しは楽です。決して余裕とまでは言いませんが。

 ただし、ひと度動き出してしまえばあとは快適そのものです。エンジン回転数は2000rpmも回っていれば充分以上の力強さを発揮し、ROCKモードのダッシュは過激なほど。そのスタイルも含めて、普通じゃないモノを扱っているスペシャルな感覚に浸れることでしょう。

 それでいて、加速や巡航に特化しているわけでもありません。驚くのは軽やかなハンドリングで、タイトなコーナーが連続するような場面でも車体はヒラリヒラリと反応。バンク角の深さこそそれなりですが、巨体をまったく意識させない高い運動性も持ち合わせているのです。

 このあたりのシャープな動きは16インチになったフロントホイールの影響が大きく、タイヤのクッション性も増しているため乗り心地も向上。コーナリング時の一体感を優先したいライダーは、19インチホイールの「R 18」よりもこちらをお勧めします。

ファーストエディションにはティアドロップ型燃料タンクの2本のピンストライプや、クロームメッキ仕上げのパーツなど細部の質感がより高められている

 見た目は悠々としたクルーザーにもかかわらず、その気になればワインディングをかなりの勢いで走れてしまうスポーティさが、この「R 18 Classic First Edition」の魅力と言えるでしょう。また、きらびやかなクロームメッキパーツを磨き上げたり、カスタムする楽しみもたっぷりあるなど、スキのない完成度が光ります。

 今後、排ガス規制がどんどん強化され、2輪界にも電動化の波が広がっていくことが予想されます。にもかかわらず、あえてバカバカしいほど巨大な空冷2気筒を新規開発してくれたところにBMW Motorradの意地が感じられてなりません。遠慮なくガソリンを燃焼させられる内に、どうか体感しておいてください。

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 BMW Motorrad「R 18 Classic First Edition」の価格(消費税10%込み)は326万2000円、ETC2.0標準装備です。

【了】

【画像】BMWモトラッド「R18クラシック・ファーストエディション」の詳細を見る(11枚)

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Writer: 伊丹孝裕

二輪専門誌「クラブマン」編集長を務めた後にフリーランスとなり、二輪誌を中心に編集・ライター、マシンやパーツのインプレッションを伝えるライダーとして活躍。鈴鹿8耐、マン島TT、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムといった国内外のレースにも参戦するなど、精力的に活動を続けている。

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