ニュルブルクリンクの24時間は、世界の365日 ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.117~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、ドイツのサーキット「ニュルブルクリンク」はマシンを鍛えるのに都合が良いと言います。どういうことなのでしょうか?

「スポーツカーの聖地」「緑の地獄」と呼ばれる、ニュルブルクリンク

 自動車業界の方なら、ちょっとは認識していただけていると期待していますが、僕(筆者:木下隆之)は自称「ニュル男」なのです。

1989年からニュルブルクリンク24時間レースに挑戦し続けている筆者(木下隆之)

 日産契約ドライバー時代の1989年に、初めてニュルブルクリンク24時間レース(ドイツ)に参戦してからというもの、世界一過激とされているニュルブルクリンクに魅せられ、「ニュル詣」を続けて久しく、気がつけば日本人最多出場となり、日本人最高予選5位と最高位5位記録、日本人最速3位というレース中のファステストを記録、正真正銘の自称「ニュル男」なのです。

 という自慢話はさておき、バイクの世界にもニュルブルクリンクというサーキット名は轟いているようで、先日イタリアの高級バイクブランド「MVアグスタ」が、150台限定で「ブルターレ1000ニュルブルクリンク」という特別仕様車を発表した記事を見て頬が緩んだ。

 ニュルブルクリンクは、ドイツ・フランクフルトから約200kmの片田舎にあり、総延長20.8kmという超ロングなサーキットである。高低差は300m、大小のコーナーが170カ所以上あり、ほとんどが高速コーナーで先の見えないブラインドだ。急勾配も点在し、ジャンプスポットもあれば急バンクもある。コースオフエリアは無いに等しく、危険極まりない。そして路面は荒れ放題。世界の自動車メーカーが開発のステージとして日参している。

 メーカーがニュルブルクリンクをテストの場に使う理由は、過激だからだ。カーブレイクコースとしても有名でもあり、クルマを鍛えるには都合がいい。ニュルブルクリンクの24時間は世界の365日と言われるほど、短期間にマシンの素性が試されるからである。

 テストコースとしても有名ならば、タイムアタックのステージとしても有名だ。ここでのタイムがそのままマシンの性能を証明する。

ニュルブルクリンクで宙を舞うレクサス「LFA」。クルマを鍛えるには都合の良い過激さがある

 過去には日産「GT-R」が7分26秒のタイムを記録し、世界にその名を轟かせた。レクサス「LFA」が7分14秒でそのタイムを塗り替えた。ポルシェやフェラーリも交えてタイム合戦が繰り広げられているのだ。

 日産は「GT-R」の最速グレードに「GT-Rニュル」の名を与え、レクサスは「LFA」の世界限定50台の限定マシンを「ニュルパッケージ」として売り出したほど。日本のメーカーにとって「ニュル」はひとつの称号でもあるのだ。

 さすがにニュルブルクリンク詣を繰り返す2輪メーカーを目にすることは珍しいが、MVアグスタはこのマシンを徹底的にニュルで鍛えたに違いない。バイクの世界でもニュルブルクリンクブームが再燃したら、個人的に嬉しい気がする。

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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