国産250ccビッグスクーターを紐解く

最近では人気が薄れてきたと言われることの多いビッグスクーターですが、一昔前には「ビッグスクーターブーム」が巻き起こるほどの人気を博していました。当時は、どんなモデルがブームをけん引していたのでしょうか。

2000年代初頭に最盛期を迎えたビッグスクーター

 1995年頃から始まったとされるビッグスクーターブームですが、ビッグスクーター自体はそれ以前から発売されていました。中でもビッグスクーターの元祖として取り上げられることが多いのは、1984年に販売されたホンダ「スペイシー250フリーウェイ」と、1986年に販売が開始された同じくホンダの「フュージョン」です。

1984年に販売されたホンダ「スペイシー250フリーウェイ」

「スペイシー250フリーウェイ」は、当時発売されていたスクーター「スペイシー」の最上級モデルとして販売されたモデルです。そのスタイルは原動機付自転車の延長線にあるものであり、文字通り大きなスクーターという印象でした。

タンデムを意識し開発されたホンダの「フュージョン(1986)」

 一方の「フュージョン」は、タンデムと長距離走行を意識したロングボディをもち、当時のスクーターとしては異例のクルーザー的なスタイリングを持っていました。その独特なデザインや、スクーターでは珍しい、フットペダル式のリアブレーキを持つことなどから、発売当初は賛否両論を呼びましたが、後のビッグスクーターブームで脚光を浴びるなど、根強い人気を持つモデルでした。

若者を中心に人気を集めたヤマハの「マジェスティ250(1995)」

 ビッグスクーターブームに火をつけたのは、1995年にヤマハから発売された「マジェスティ 250」です。250ccのバイクは、大型バイクや400ccバイクに比べて小柄な印象が強かった当時、250ccにもかかわらず、その名の通り威風堂々たるボディを持つマジェスティは、若者を中心に人気を集めることになります。

 また、大柄なボディを活かした29Lの大容量トランクを備えている点や、最高出力が21馬力と、当時としてはパワフルなエンジンを搭載している点もユーザーに評価されました。

 当初ヤマハは年間生産台数を3000台としていましたが、実際には1万台以上の生産台数を記録するなど、予想を大幅に上回るヒット作となりました。

 マジェスティのヒットをうけて、バイクメーカー各社もビッグスクーターを投入し始めました。

スズキ「スカイウェイブ250(1998)」

 まず、1998年にスズキが「スカイウェイブ250」を販売開始します。その後、1999年にはヤマハが「マジェスティ250」のモデルチェンジを行い、「マジェスティC」や「グランドマジェスティ250」といった、複数の派生モデルが登場しました。中でも「マジェスティC」は2006年の生産終了まで、約8年間にわたって販売されるロングセラーモデルとなりました。

 一方、現代的なデザインが特徴のマジェスティやスカイウェイブとは異なり、クラシカルで独特なデザインのフュージョンが改めて注目されるようになったのもこの頃です。しかし、2000年にはホンダも新型ビッグスクーターとして「フォルツァ」の発売を開始、さらに翌2001年には500ccの2気筒エンジンを搭載する「TMAX」を発売し、ビッグスクーターでもスポーツ走行ができることを知らしめました。

 この頃にはすでに「ビッグスクーター」というカテゴリーが確立し、若者を中心に人気を博していました。

スズキの大型スクーター「スカイウェイブ650(2002)」

 そこからもビッグスクーターの人気はとどまるところを知らず、各社はデザインや機能性に富んだモデルを次々と発表します。ホンダからは、600ccクラスのエンジンを搭載し防風効果に優れたデザインや大型のウインドスクリーンを備えた「シルバーウイング」が2001年に発表され、2002年にはスズキからスカイウェイブの大型版である「スカイウェイブ650」が登場します。さらに、2004年にはヤマハから欧州向けモデルとして「マジェスティ400」が発売されるなど、ビッグスクーターは海外にも進出しはじめます。

ヤマハのロングボディ低重心スクーター「マグザム(2005)」

 また、個性的なモデルも登場しました。例えば、ホンダからはフレームむき出しの無骨なデザインが特徴の「PS250」が2004年に発売され、翌2005年にはヤマハからロングボディで低重心の「マグザム」が登場します。

 この頃にはビッグスクーターブームが最盛期を迎え、ドレスアップパーツやカスタムパーツも多く登場し、渋谷や原宿のストリートを賑わせました。

 ただ、そこから徐々にビッグスクーターブームは陰りを見せ始めます。ビッグスクーターブームが下火になった理由は諸説ありますが、その大きさから保管場所や駐車場所が課題となったこと、過激なドレスアップやカスタムが横行したことで一般ユーザーが敬遠するようになったこと、バイクメーカー各社が海外で売れ筋の125ccや150ccクラスの開発にシフトしたことなどが要因と言われています。

左右非対称のヘッドライトを搭載したスズキの「ジェンマ(2008)」

 2008年にはスズキが、左右非対称のヘッドライトを搭載した「ジェンマ」を発売しますが、当時すでにビッグスクーターブームは過ぎ去っており、ヒット作とはなりませんでした。そして、2007年にフルモデルチェンジを果たしたマジェスティも、2014年には生産終了となるなど、火付け役の引退によってビッグスクーターブームは姿を消すこととなりました。

ホンダ「PCX160」

 ただ、スクーターそのものが消えたわけではありません。上述の通り、バイクメーカー各社は近年125ccおよび150ccクラスのスクーターに力を入れており、2009年に登場したホンダ「PCX」シリーズは、現在に至るまで爆発的なヒットを記録しています。

 現代人は「ビッグ」であることよりも、「ちょうどいい」ことを求める傾向があると言われており、スクーターのトレンドにもそうした傾向が表れていると言えるかもしれません。

※ ※ ※

 いまではあまり見かけることのないビッグスクーターですが、最盛期には爆発的な人気を誇っていたことは多くの人の記憶に残っていることでしょう。

 バイクの世界でも今後電動化が進むと言われていますが、そうなった時、大容量のバッテリーを搭載できるという点でビッグスクーターには大きなメリットがあります。電動化のトレンドによって、ビッグスクーターは再び脚光を浴びるかもしれません。

【了】

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