【警視庁白バイ安全競技大会】 周囲の安全を確保する運転を評価 30人の審判員が見極める技術とは

2022年3月30日、「警視庁白バイ安全競技大会」が白バイ訓練所(世田谷区喜多見)で開催されました。おなじみの課題を盛り込んだコースですが、想像を超える難易度設定。車重300kg超のリッターバイクで戸惑うことなくクリアする運転技術は驚くばかり。精鋭の警察官を見極めたのは約30人の審判員でした。

コースに入ることも躊躇する難しさ

 2022年3月30日、「警視庁白バイ安全競技大会」が白バイ訓練所(世田谷区喜多見)で開催されました。おなじみの課題を盛り込んだコースですが、想像を超える難易度設定。車重300kg超のリッターバイクで戸惑うことなくクリアする運転技術は驚くばかり。精鋭の警察官を見極めたのは約30人の審判員でした。

2022年3月30日に行なわれた、「第44回警視庁白バイ安全競技大会」
2022年3月30日に行なわれた、「第44回警視庁白バイ安全競技大会」

 2022年の警視庁白バイ安全競技大会は、交通機動隊と高速道路交通警察隊を中心に、警察署、機動隊員などを含めた警察官63人が参加して行なわれました。

 白バイを使った「バランス走行競技」と「傾斜走行競技」、パトカーを使った「交通パトカー走行競技」の3種類。どの競技にも踏み込むことをためらうほどの課題が待ち受けていました。

 午前中に行なわれた「バランス走行競技」は、低速走行でのバランスを重視した競技です。一本橋、8の字走行、2mに満たない道幅の狭路展開、緊急回避行動などの課題で技能を競いますが、その中身が特別でした。

 例えば、通常の一本橋は、姿勢と速度を保つために助走でまっすぐ入るようなコース設定です。しかし、白バイ安全競技大会の場合は、一本橋侵入の直前にカーブがあります。ブロックの段差がある屈曲一本橋です。さらに、課題をクリアしたのちに一時停止で姿勢を保持、再び発進した直後に転回など、静と動のメリハリが効いた操縦が要求されます。

 さらに狭路の低速S字では、わざわざシート高ぐらいあるポールが両側に立てられ、車体の安定を問います。ゆっくり歩くほどの速さで直立姿勢を維持します。反対に、緊急回避行動では速度50から60km/hで走行、前方の信号の指示でコースを逸脱しないように左右どちらかに回避することが求められます。

 この課題に、一本橋なら15秒、応用バランスなら23秒など基準タイムが設定されています。

パイロンに触れても、倒し過ぎてステップをこすっても減点
パイロンに触れても、倒し過ぎてステップをこすっても減点

 午後からの「傾斜走行競技」は、高速走行で「より速く、より安全に走行する技能」を競います。基準タイムと走行タイムの差が減点の対象となります。また、車体をバンクさせ過ぎてステップをこするようなことがあっても減点。スピードを重視する中で抑制の効いた運転技術が求められます。転倒車が出ることもある緊迫した競技です。

サスペンションを限界まで沈ませる激しい動きで、狭い道幅を攻めるパトカー
サスペンションを限界まで沈ませる激しい動きで、狭い道幅を攻めるパトカー

 一方、両者の間で実施された「交通パトカー走行競技」は、S字やクランク走行の課題は白バイと同じですが、乗用車ならではの方向転換、車庫入れが加わります。設定されたコース幅がかなり狭く、車両を車庫に入れた時の状態は、ドアを開けても人が出られるかどうかというほどの余裕しかありません。スピードを上げた後退もスラロームを組み合わせて行います。

 警察車両から逃亡しようとする映像がテレビニュースではよく放送されますが、競技大会を知っていれば、そんな気はまったく起きない。それほど高い運転技術を競っている大会でした。

運転者だけではない、安全運転技術を審査する

 白バイ安全競技大会は、一般の競技とは根本的に違う審査の視点があります。

スタート時、一時停止時の後方確認では、選手は審判員の掲げるプラカードの文字を素早く読み取ることを要求される
スタート時、一時停止時の後方確認では、選手は審判員の掲げるプラカードの文字を素早く読み取ることを要求される

 前述の3つの競技に共通するのは、一時停止した白バイやパトカーが必ず後方を振り返って確認。選手が大声で叫んでいることです。振り返った先には審判員が「救急車」「消防車」という文字が書かれたプラカードを持って立っています。選手は後方確認でこの文字を読み取り、審判員に伝えているのです。

 大会会長・早川智之交通部長は選手への挨拶で、その趣旨をこう伝えていました。

「安全運転技術の向上はみなさんの職務中の安全に加えて、関係者の安全を確保するということが含まれている。今日はその成果を発揮していただく大会」

 交通警察の業務では違反車両などの追跡で他の交通車両を巻き込まないための安全技術は必要不可欠なものですが、事故を誘発しないために周囲の安全を確保するということは、どの運転者にも共通して求められることです。

 運転者が人的被害を受けやすいバイクでは、後方確認の重要性が折にふれて訴えられています。サイドミラーでチェックするだけでなく、首を後ろに振って確認するべき、と言われるのが普通です。しかし、記者も公道で試してみましたが、後方確認でどんな車両が見えたかを意識すると、漫然とした形だけの後方確認にならずに済みます。運転者の安全に加えて、周囲の安全に配慮できるようになる技術の審査は、一般のレースにはない視点です。

63人の選手を約30人の審判団が見極める
63人の選手を約30人の審判団が見極める

 白バイ安全競技大会では、63人の選手に対して約30人の審判員が選手車両に密着し、コースの逸脱、パイロン接触、路面設置、乗車姿勢などの安全技術を見極めました。大会の成績優秀者は以下の通りです。

■総合

1.第四方面交通機動隊
2.第三方面交通機動隊
3.第十方面交通機動隊

■バランス走行競技

「交通機動隊・高速道路交通警察隊の部」
1.中野敬介(高速道路交通警察隊)
2.北田奨悟(第四方面交通機動隊)
3.伊藤順一(第六方面交通機動隊)

「全国白バイ大会特別練習生の部」
1.油谷和敏(第九方面交通機動隊)

■交通パトカー走行競技

1.遠山健太郎(第一方面交通機動隊)

■傾斜走行競技

「交通機動隊・高速道路交通警察隊の部」
1.中野敬介(高速道路交通警察隊)

「警察署の部」
1.江口慎(板橋署)

「機動隊の部」
1.小林大翼(第七機動隊)

「女性白バイの部」
1.石川真結子(第八方面交通機動隊)

「全国白バイ大会特別練習生の部」
1.前川淳史(第七方面交通機動隊)

【画像】難易度高過ぎ!! 白バイ操作の妙技を見る(13枚)

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Writer: 中島みなみ

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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