「ブイハチ」と「ナナハン」に魅了される ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.139~
レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、クルマは「ブイハチ」、バイクは「ナナハン」が好きだと言います。どういうことなのでしょうか?
クルマの「ブイハチ」、バイクの「ナナハン」は絶滅危惧種?
レクサス「RCF」は漢(おとこ)のイメージだ。搭載するパワーユニットはV型8気筒5リッターNA、最高出力481ps、最大トルク535Nmを発揮する。エキゾーストサウンドは勇ましく、いかにもV8(ブイハチ)らしくドロドロと喉を鳴らす。いまにも襲い掛からんばかりの獰猛な雰囲気を発散しているのだ。

世界はカーボンニュートラル時代。ガソリンを燃やしながら走る内燃機関は劣勢で、エンジンを積まないBEVか、エンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッドに集約されつつある。
そのガソリンエンジンとて、環境性能という大義名分を旗印にダウンサイジング化が進む。排気量を下げることでCO2を減らし、排気量ダウンのトルク不足をターボで補う。排気量が下がったことで気筒数が減っていく。ダウンサイジングがすべて理想型ではないのだが、世間ではそう解釈されているようだ。だからダウンサイジングは正義であり、多気筒エンジンは悪だ、のような風潮である。
だが、このV型8気筒が素晴らしい。高回転までよく回る。ターボではないことで、吹け上がりは淀みなく、エキゾーストノートも刺激的。過給の遅れが無いからレスポンスも優れ、大排気量だから低速トルクも太い。だというのに、「悪」みたいな言われなき誤解を背負っているのだ。
でも、V型8気筒5リッターという数字に痺れてしまうのである。僕(筆者:木下隆之)もその口で、この30年間、V型8気筒を欠かすことなく所有し続けてきた。今でも自宅のガレージにはV型8気筒が鎮座している。「V型8気筒5リッター」は永遠のキーワードなのだ。
バイクの世界で同じ境遇なのが「ナナハン」(=排気量750ccクラス)だろう。1976年にバイクの世界に足を踏み入れた僕は、1975年から1985年まで少年チャンピオンに連載された「ナナハンライダー」を見て育った世代である。
日本で900ccだ1300ccだと大排気量モデルが幅をきかせても、僕の中での最上位は「ナナハン」であり、数カ月前に大型二輪免許(排気量400cc以下に限る、の条件無し)を取得したのもナナハンライダーになりたかったからだ。
しかし気がつけば、国内4メーカーのラインナップを見てもナナハンのバイクはスズキ「GSX-S750」しか残されていない。あとは1300ccとか650ccとか、僕に言わせればキリの悪い数字に移行してしまっている。まさかこんなことになっていたとは……。
いくら性能が上がっても、僕はナナハンの方がしっくりくる。その意味ではレクサス「RCF」のV型8気筒5リッターと同じ感覚である。絶滅危惧種かもしれないが、僕には「ブイハチ」と「ナナハン」が無くなるとは思いたくない。
Writer: 木下隆之
1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。





