EV時代の到来でクルマもバイクのように季節を感じることに!? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.146~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、4輪EVの普及によって、ドライバーはライダーのように季節を意識するようになると言います。どういうことなのでしょうか?

車内空間の快適性は電気に依存、でも電欠が心配……

 6月、初夏である。本格的な梅雨がやってくる前の、バイクで走るには心地いい季節だ。ただ、僕(筆者:木下隆之)にはちょっとした悩みがある。服装に困ってしまうのだ。天候によっては薄着でも爽やかだが、気温が下がってくればブルゾンを羽織りたくなる。昼間はちょうど良くても、夕方には肌寒い。天気予報の確認は怠れない、季節の変わり目は寒暖の差が大きい。バイクに乗る際は、服装にはとくに注意が必要なのだ。

真夏のレースは「暑くて熱い」。レーシングドライバーの筆者(木下隆之)が装着するヘルメットには、真夏のレース用では冷気を導入するシステムが装備されている
真夏のレースは「暑くて熱い」。レーシングドライバーの筆者(木下隆之)が装着するヘルメットには、真夏のレース用では冷気を導入するシステムが装備されている

 ただ、それもまたバイクの魅力だと思う。四季を感じる、季節の移り変わりを肌で意識する。バイクという乗り物は、自然との戯れでもある気がする。クルマでは味わえない感覚なのかもしれない。

 とは言うものの、最近増殖中のEVが、じつは季節のうつろいに敏感であることに気がついた。バッテリーパワーだけで走行する電気自動車で季節の移り変わりを? と、不思議に思うかもしれない。ガソリンエンジンならば、外気によってエンジンコンディションが変化するから、あるいは四季を実感するのかもしれないが、意外なことにEVこそ、四季に敏感なのである。

 EVドライブの心配の種は航続可能距離だろう。バッテリー残量が消耗すれば充電をしなければならないが、充電には時間がかかる。車種によっては30分の急速充電で100kmほどしか航続可能距離が伸びない。おのずと、電欠を心配しながらエコドライブを意識することになる。

 しかし EVがもっとも電気を消耗するのは、走り方ではなくエア・コンディショナーの作動だ。とくにヒーターは電気を喰う。エンジンという熱源を持たないことから、強制的に電熱にエネルギーを注ぐ。あるいは冷房も、エンジンという回転エネルギーが無いから、強制的にコンプレッサーを回す。よってエネルギーを消耗する。それが理由で、カーエアコンを作動させず、暑さ寒さを堪えながらドライブすることになる。

 つまり、寒ければ厚着をし、暑ければ薄着で窓は全開だ。車体までキンキンに冷えるEVでは、冬場には、まるで冬山に登らんばかりにハイテク素材の服を着込み、マフラーで襟元を保温し、ニットのグローブでドライブすることになるだろう。ライダーがそうであるように、出掛けには天気予報に注意を払い、服装を準備しなければならないことになるのだ。

 エアコンが高性能になり、遮熱性が高まった最近のガソリン車で過ごしているうちに、僕も含めクルマ乗りは空気から感じる四季の移り変わりに鈍感になってしまったようだ。だがEVにはまだ、自然との戯れがあるかもしれない。もちろんバイクの方が数100倍も、ネイチャーな感覚が強いことに変わりはないのだが……。

【画像】真夏でも快適!? レーシングドライバーのヘルメットを見る(6枚)

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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