電動バイクで長距離ツーリングは、まだまだ先の話 ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.148~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、クルマと違って大きなバッテリーを積めないバイクで長距離移動はまだ先の話だと言います。どういうことなのでしょうか?

クルマのようにはいかない、バイクのEV化

 バイクもクルマも、EVの普及に向けて数々の障害を抱えている。頻繁に語られるのが航続距離と急速充電設備の問題だ。EVにはガス欠ならぬ電欠の心配がある。ずいぶんと減ったとは言え、ガソリンスタンドはまだどの町にもなくはないし、燃料補給にかかる時間もわずか数分、それで航続可能距離は数百kmに達する。まだ内燃機関のほうが圧倒的に便利だ。

ハーレー・ダビッドソンから分離・独立した電動バイクブランド、「LiveWire(ライブワイヤー)」の最新モデル「S2 Del Mar」ローンチ・エディション
ハーレー・ダビッドソンから分離・独立した電動バイクブランド、「LiveWire(ライブワイヤー)」の最新モデル「S2 Del Mar」ローンチ・エディション

 それでも徐々にEVも浸透してきているようで、急速充電施設に1時間前後の順番待ちが発生することもある。クルマやバイクのEV普及率はまだ1%前後だと言うのにこの惨状なのだから、先が思いやられる。EVは不便だとユーザーが思うのも納得せざるを得ない。

 ただし、航続可能距離の長いEVも登場しつつあるから、光明が見えなくもない。日産アリアは、もっとも足の短いB6でも470km(WLTCモード)を達成。つまり、一度満充電にすれば、常識的な1日の活動距離は賄える。目的地のインフラが整っていれば、という前提だが、長距離旅行とて可能だ。

 日産はこの秋、さらに大容量バッテリーを搭載するB9を発売する。B6のバッテリーが66kWhなのに対してB9は91kWhもの容量だ。航続可能距離は610kmらしい。ここまで伸びれば、途中無給電の日帰り旅もできなくはない。

 となれば、EVバイクの普及にも弾みがつきそうなものだが、事情は異なる。クルマと違ってコンパクトなバイクに、大容量のバッテリーを搭載するのは現実的ではない。

 アメリカを象徴するバイク、ハーレー・ダビッドソンも、EVバイクをラインナップする。現在は電動バイクブランド「LiveWire(ライブワイヤー)」として分離・独立しているが、その初代モデル「ライブワイヤー」が積むバッテリーは15.5kWhで、航続可能距離は235km(市街地)となっている。電費の悪化する高速道路では153kmだ。

 バッテリー残量が減ればその度にどこかの急速充電可能な設備の前に並び、フル充電に1時間を費やす……想像するとゲンナリする。仲間とのツーリングでは足を引っ張るだろう。そう考えると、2輪EVでの長距離移動は、まだまだ先の話のような気がする。

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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