『バイク・ラブ・フォーラム』って何? 第10回開催で問われる経産省自動車課の役割

BLF(=バイク・ラブ・フォーラム)が2022年8月25日、大分県日田市で開催を予定しています。完成車メーカー、部品メーカー、インポーター、販売店ほかバイク業界に関わる団体が一堂に集い、関連する諸課題を議論する会議です。今回の開催テーマは好調な販売の維持。明るいテーマですが、一方で2021年に公表された2030年をゴールとするロードマップ、目標達成までの手法が気になります。

海外と国内、2つの市場の明と暗

 BLF(BIKE LOVE FORUM:バイク・ラブ・フォーラム)は2013年、業界全体でバイクに関する諸課題に取り組むために、三重県・鈴鹿サーキットで第1回が開催されました。経済産業省自動車課が二輪車業界8団体を結びつけて、オール二輪車で課題解決を図ろうとする画期的な試みでした。

2013年第1回BLFは鈴鹿サーキットが会場。世界で活躍したレーサーも多数参加した
2013年第1回BLFは鈴鹿サーキットが会場。世界で活躍したレーサーも多数参加した

 BLFの分岐点は2020年開催が中止された時期にあります。第1回開催後に2020年をゴールとするロードマップを作成。解決すべき目標を設定しました。

 主な柱は2つ。日本自動車工業会が中心となり提案した「グローバル市場で世界のバイクの2台に1台はジャパン・ブランドに」という外需目標と、販売店、インポーターらが中心となり提案した「国内100万台市場の復活」の内需目標でした。

 結果、グローバル市場での目標は達成。国内市場は目標を大きく下回る約38万台に留まり、未達であることが、2021年のBLFオンライン会議(第9回)で報告されました。

 ジャパン・ブランドがグローバル市場でシェアの過半数を超えることができた背景には、BLFの事務局である経産省自動車課の活躍がありました。製造産業局の中にある自動車課は、グローバル市場での支障となる関税など海外取引の障壁を引き下げて産業振興を図ることが仕事。その役割が遺憾なく発揮された結果でした。

 一方、国内市場についても、前向きな取り組みを続けてきました。第7回BLF山梨では、当時の自動車課長が「排気量125ccの免許取得を今までより簡単にするというような取り組みにチャレンジした」と発言するなど、経済産業省を超えた課題にも挑戦しましたが、成果にはつながりませんでした。

 内需拡大には、行政の縦割りを超えた規制に手を付けることが必要でしたが、その障壁は簡単に超えることはできなかった、ということになります。

注目される内需拡大に向けた、経産省の役割

 2021年のオンラインBLFでは、2030年をゴールとした新たな「ロードマップ2030」が同時に公表されました。2020年と2030年は、内需拡大に迫る手法が大きく違いました。

2030年をゴールとするロードマップはBLFのウェブで読むことができる
2030年をゴールとするロードマップはBLFのウェブで読むことができる

 2030年のロードマップでは、2020年の市場100万台の内需目標は「ありたき姿」=「理想のイメージ」に置き換えられました。2020年のロードマップで並んだ国内市場を直接拡大する手法は手控えられ、バイクの周辺環境を改善することで間接的に需要の底上げを図る、という計画です。

 2030年、新たに設定された4つの政策課題が次のようなものです。
1.二輪車死亡事故半減(2020年比)
2.電動化、合成燃料対応車などによるカーボンニュートラル達成への貢献
3.駐車場拡充、高速料金二輪区分設定、免許制度の見直し、イメージ向上などによる利用環境整備
4.若者への情報発信、訪日バイクツーリズムの活性化

 2030年ロードマップの政策課題は、いずれも経産省本来の仕事ではありません。とくに3番目「購入・利用環境の整備と社会・他モビリティとの共生」をテーマとする政策課題は、駐車場の拡大は地方自治体、高速道路料金は国土交通省、免許制度は警察庁や国家公安委員会を、検討の場に引き込まなければ前には進みません。

 BLFは三重県、熊本県、静岡県の3県、鈴鹿市、浜松市、磐田市の地方自治体も主催団体ですが、2013年以来、関係省庁の広がりはありません。バイクに留まらない内需拡大の課題にどう貢献できるのか。行政縦割りの規制が重荷となり成長を鈍化させることは、日本全体の問題です。バイク環境の課題解決に取り組む国会議員の1人は、経済産業省の役割を重視します。

「第10回 BIKE LOVE FORUM in大分・日田」は2022年8月25日13時30分から、大分県の日田市民文化会館パトリア日田大ホールでの開催を予定します。この会議にはバイクユーザーをはじめとした一般も傍聴可能です。

 ロードマップ2030の1年目の成果報告のほか、パネルディスカッションでは「再評価されている二輪車。人気継続のためには」をテーマに、上向きに転じた国内二輪車市場について、関係者と専門家が意見を戦わせます。

【画像】これまでのBLFの様子を見る(5枚)

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Writer: 中島みなみ

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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