バイクは多少不便なくらいが面白い!? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.152~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、電子制御なんて無かった時代のバイクが懐かしいと言います。どういうことなのでしょうか?

半導体不足と、キャブレター?

 世の中、半導体不足が深刻である。一方、消費者の購買意欲は旺盛で、バイクの受注は好調な様子。コロナ禍に端を発したバイクブームの再来もあり、ライダー人口は右肩上がりだと聞く。

バイクのキャブレター(イメージ)
バイクのキャブレター(イメージ)

 だというのに、半導体が足りない。作ればバイクは売れるのに……これではメーカーは商機を逃しかねない。あんな小さな部品に生産計画を混乱させられるなんて想定していなかったのか、半導体がヤバいと気付いた時にはすでに遅し。ユーザーにしても、注文してから納車まで数カ月以上待たされるというから、さぞかしもどかしいだろう。

 だったらここはひとつ、国策を投じて「キャブレター復活」を宣言してはいかがだろうか? バイクの燃料消費量や排ガスに神経を尖らせても、自然環境への影響なんてたかが知れている。

 コンピューター管理されている現代のバイクは半導体がなければエンジンもかけられない。ならば、コンピューター不要の「キャブ車」にすれば、すべて解決だ。ファンネルから大きく空気を吸い込んで、ジェットから燃料を吹く。そこに点火プラグで着火させればエンジンはバリンバリンと元気に回る。

 そのかわり、ABSやトラクションコントロールだなんだと言った、半導体絡みのコンピューター制御はアウトだが、それでもいつになるかわからない納車を待つより、はるかに幸せであろう。

 キャブ仕様になれば、エンジンの始動には神経を使うことになる。全体重をかけてキックペダルを踏み込んでもエンジンがかからない、なんてことも度々起こる。だがそれも楽しみのような気がする。

「おい若造、ちょっと貸してみろ」

 なんてバイクを奪って華麗にエンジンをかけてしまったり……昔はそんな手練れのバイク親父がいたものだ。スターターボタンを押せば、誰彼構わずエンジンが始動してしまうバイクには無い、アナログな感覚が懐かしい。

 もともとライダーは、不便を好む(楽しめる)人種なのだ。

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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