バイクならでは!? 深いバンク角で魅せる迫力とスポンサーロゴ ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.158~
レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、深いバンク角で魅せる迫力の姿とスポンサースペースは、バイクならではと言います。どういうことなのでしょうか?
レースの活動資金集めに、スポンサーには好立地を?
バイクもクルマも、モータースポーツになると走る広告塔の意味合いを深める。マシンを企業カラーに、あるいはブランドカラーにラッピングし、支援企業のロゴを貼る。モータースポーツは基本的に、スポンサーの支援で成り立っている。そしてその原資の多くは、協賛企業の宣伝費である。

バイクやクルマのメーカーによっては、技術部が抱える開発費が原資になる場合も少なくないが、その話は今後に譲るとして、基本的には宣伝のための予算がレースの活動資金になる。
だから、チームは可能な限りスポンサーを募集する。ロゴが貼れるスペースを提供することで、資金を得る。
4輪のレーシングカーの場合、「地価」がもっとも高いのはサイド面であり、次いでボンネットが高価格だ。基本的には目立つスペースの値段が高く、ロゴが小さくなれば価格も安い。
という点で言えば、4輪のツーリングマシンは都合がいい。「売れるスペース」が広いからだ。ボディが大きいばかりか、屋根の上も金になる。
一方、スポンサーを獲得しづらいのはレーシングカートだ。サイズが小さいばかりか、ボディの「面」が少ない。スポンサーステッカーをボディに貼ると言うより、鉄のフレームパイプに巻く。これではスポンサーは喜ばない。ほとんど何が書いてあるのかわからないからだ。
さらに言うならば、バイクもサイズが小さいという点では、スポンサー活動はしづらいだろう。クルマの方が資金獲得は有利なような気がする。
しかし最近、僕(筆者:木下隆之)が目にするのはバイクの「底」である。「裏」か「腹下(はらした)」とも言うだろうか。バイクが深くバンクすると、普段は見えにくいバイクの「腹下」が露わになる。そこが新たなスポンサースペースとして活用されている。
レーシングドライバーの身からすると、これは目の付け所が凄いと感じた。最近のバンクの深いコーナリングは観ていて興奮を誘う。どれほど傾けているかに視線が集まり、その瞬間にスポンサーロゴが脳裏に焼き付く。
4輪にこの真似できない。クルマの裏が見える時にはクラッシュしているからだ。まさかその時のためにスポンサーをお願いするわけにもいかない。
バイクもタイヤも性能が上がり、ライダーは膝を畳んで肘、はたまた肩を擦るほどにバイクを傾けて走っている。その姿に興奮しながらロードレースを観ていて、ふと最近、バイクの裏側が気になってきた。
Writer: 木下隆之
1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。