【MotoGP第16戦日本GP】Moto2小椋藍選手快挙! 日本人ライダーとして日本で16年ぶりの優勝を飾る

2022年9月25日、MotoGP第16戦日本GPの決勝レースが栃木県のモビリティリゾートもてぎで行なわれ、Moto2クラスで小椋藍選手(イデミツ・ホンダ・チームアジア)が母国グランプリで優勝を飾りました。

勝ち獲った表彰台トップ、母国日本で見事なレース展開を見せた

 2022年9月25日(日)、MotoGP第16戦日本GP(グランプリ)の決勝レースが栃木県のモビリティリゾートもてぎで行なわれました。日本GPの開催は、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年、2021年が中止となったため、2022年は3年ぶり。2021年にMoto2クラスにステップアップした小椋藍選手(イデミツ・ホンダ・チームアジア)にとって、このクラスでは初めての日本GPのレースとなります。

日本GPで優勝を飾った、2022年シーズンのMoto2クラスにフル参戦する唯一の日本人ライダー、小椋藍選手(#79/イデミツ・ホンダ・チームアジア)
日本GPで優勝を飾った、2022年シーズンのMoto2クラスにフル参戦する唯一の日本人ライダー、小椋藍選手(#79/イデミツ・ホンダ・チームアジア)

 日本GPが行なわれた週末は土曜日に雨となり、Moto2クラスの予選Q2中に激しい雨のため赤旗中断。その後再開されましたが、フルウエットコンディションでの予選となりました。小椋選手は予選13番手。5列目から挑む決勝レースとなりました。

 決勝レースが行なわれる日曜日は好天となり、青空が広がりました。小椋選手は1周目で大きく順位を上げ、5番手に浮上。その後もポジションを上げていきます。7周目には2番手に浮上し、トップのアロンソ・ロペス選手(ベータ・ツールズ・スピードアップ)に迫っていきました。残り10周、小椋選手はロペス選手とトップ争いを展開すると、11コーナーでパス。これが優勝を決定づけるものとなりました。

レース中盤にトップに立った小椋選手(#79)。以降、トップを譲ることはなかった
レース中盤にトップに立った小椋選手(#79)。以降、トップを譲ることはなかった

 トップに立った小椋選手はその座を譲ることなく、フィニッシュラインを駆け抜けました。チェッカーを受けた瞬間、小椋選手は左手で力強くガッツポーズ。全身で喜びを表していました。これは今季3勝目であるとともに、小椋選手にとって日本GPでの初優勝となりました。

 また、日本人ライダーが母国グランプリで優勝するのは、2006年に250ccクラスで青山博一氏が成し遂げて以来のことです。青山氏は現在、小椋選手が所属するイデミツ・ホンダ・チームアジアの監督を努めています。日本人ライダーが日本GPで優勝するという青山監督の記録を、小椋選手が更新した快挙のレースでした。

2006年、日本GPで優勝したのはイデミツ・ホンダ・チームアジアの青山博一監督だった(右)
2006年、日本GPで優勝したのはイデミツ・ホンダ・チームアジアの青山博一監督だった(右)

 小椋選手は決勝レース後の会見の中で、まず「ホームグランプリでの優勝で、本当に素晴らしい気持ちです」と喜びを語りました。

「レースはとてもタフでした。ライダーが何人か前にいたので、序盤から攻めなければなりませんでしたから。そして終盤は(後ろの)アウグスト(・フェルナンデス)もすごくハードに走っていました。とても長く、タフなレースでしたが、レースと自分自身をマネジメントできました。日本のファンのみなさんに本当に感謝したいです。それから、チームにもね」

母国グランプリ優勝は「今季の3勝の中でもベスト」と語る小椋選手
母国グランプリ優勝は「今季の3勝の中でもベスト」と語る小椋選手

 Moto3クラス時代に初めて日本GPに参戦した2019年は、さすがにナーバスになっていたと小椋選手は振り返ります。しかし今回は集中し、そして「日本のファンの前で最高の走りをしようと思っていた」そうです。

 その言葉通り、最高のレースを日本のファンの前で披露した小椋選手。しかし同時に、13番手スタートからポジションを上げていくレースは、彼の言葉にあるように「とても長くてタフ」だったことでしょう。

 そんな「長くてタフ」なレースで、いつ優勝を確信したのか? と質問すると、小椋選手は「アロンソの後ろにいたとき、2周、3周の間、彼がバイクを止めるのに苦戦していたのがわかったんです。それで“オーバーテイクするときだ”と。あのタイミングは正しかったと思います」と語りました。残り10周でロペス選手をかわしたそのタイミング、その判断がカギだったということでしょう。

「そのあとマネジメントに集中していましたが、残り3周、2周まで、(2番手の)アウグストとギャップが近づいているのがわかっていました。優勝を確信したのは、たぶん最終コーナーを立ち上がったときかなと思います」

日本GPのトロフィーを手にする小椋選手。日本らしい扇形のデザインが印象的
日本GPのトロフィーを手にする小椋選手。日本らしい扇形のデザインが印象的

 母国グランプリでレースを制し、表彰台の頂点に立った小椋選手に、日本のファンがたくさんの拍手を贈っていました。

 チャンピオンシップはランキング2番手の小椋選手が優勝し、ランキングトップのフェルナンデス選手が2位を獲得したことで、ランキングとしては変わっていません。

 ただ、2人の差は2ポイントに縮まりました。また、ランキング3番手のアロン・カネト選手(フレックスボックスHP40)、チェレスティーノ・ヴィエッティ選手(ムーニー・VR46・レーシングチーム)が転倒リタイアとなったことで、チャンピオン争いは事実上、フェルナンデス選手と小椋選手の2人に絞られました。

2位を獲得したのは、現在ランキングトップのアウグスト・フェルナンデス選手(レッドブルKTMアジョ/左)
2位を獲得したのは、現在ランキングトップのアウグスト・フェルナンデス選手(レッドブルKTMアジョ/左)

 2022年シーズンは残り4戦。小椋選手にとって、チャンピオン争いに挑むシーズン終盤戦となります。次戦の第17戦タイGPは、10月2日にチャン・インターナショナル・サーキットで決勝レースが行なわれます。

■Moto2クラスとは……

 Moto2クラスはトライアンフ「ストリートトリプルRS」の3気筒765ccエンジンをベースに開発されたオフィシャルエンジンと、シャシーコンストラクターが製作したオリジナルシャシーを組み合わせたマシンによって争われる。2021年8月、トライアンフによるエンジン供給は2024年まで延長された。タイヤはダンロップのワンメイク。クラスとしてはMotoGPクラスとMoto3クラスの中間に位置する。

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Writer: 伊藤英里

モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。

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