名実ともにバイク駐車場が増えるのはいつか バイク表示あるのに止められない現実
千代田区や港区など、東京都心のビルの駐車場で、バイクの表示を掲げる場所が増えてきました。入口に乗用車とは別に、バイクのピクトグラム(絵文字)が描かれているので、それとわかります。ようやくバイク駐車場も増えてきたかのように見えるのですが、中に入ると断られるケースがあります。なぜなのでしょうか。
“なんちゃってバイク駐車場” 表示があるのに止められない
乗用車の場合、日本全国どこでも駐車場に困らないのは、収益が見込めること以前に、自治体の条例で設置が義務付けられているからですが、その対象は乗用車か自転車に限られています。バイクは対象外で、国土交通省は、ようやく駐車場政策のあり方の検討に入りました。しかし、今も駐車場があるのに止められない状態が続いています。

放置駐車で民間監視員制度を導入した警察庁もこの状況を把握し、2022年3月の交通課長名による通達で、次のような認識を示しました。
「自動二輪車等の保有台数当たりの駐車場台数を見ると、依然として自動車(四輪車)に比べて少ない水準にあり、特に大都市において自動二輪車等の駐車場が不足している状況にある」
そのせいでしょうか。建て替えが進む再開発地域の新しいビルでは、バイクの受け入れを示す例が増えてきました。条例で縛らなくても、バイクの受け入れが進んでいるように思えますが、実はそうではありません。バイク駐車に関するルールには統一的な指針がなく、駐車場の独自解釈がまかり通っていいるからです。
そのため駐車場の「P」マークに「二輪車」の文字やバイクのピクトグラムが表示されている場合でもバイクが利用できない“なんちゃってバイク駐車場”が、日本の名だたる不動産関連会社でも許されてしまうのです。
乗用車ではありえない対応、バイクでは平然と入ると「止める場所はない」
これから紹介するのは、いずれも「P」表示があり、二輪車の駐車ができるかのように、看板に表示がされているケースです。

再開発の進む品川区大崎駅近くにできた大規模商業ビルの地下駐車場の地上の入口には、乗用車のほかに二輪車の表示があります。ところが、車室の利用率を示す満空表示はひとつしかありません。駐車場管理者によくよく聞くと、満空表示は乗用車のためにあり、バイクの状況は地上ではわからない仕組み。
バイク駐車場整備を地方自治体に要望すると、駐車場が不足している場所ほど「バイクの利用者が少ない」と難色を示します。ただ、現実はこんな小さな表示問題ですが、乗用車では考えられない表示がされています。バイクには入庫しやすい表示が、そもそもありません。
港区海岸、伊豆七島への貨客船が就航する港玄関口になっている竹芝地区にも、二輪車表示の看板が地上にあるビルがあります。「バイク駐車場が設置される可能性がある」と地方自治体が説明する再開発地域ですが、周辺にはバイク駐車場がほとんど無いので期待の存在ですが、地下に降りると係員から「止める場所がない」と拒まれることに。
ビルはコンベンションホールを備えた最新で、駐車場内には四輪車用として立体式と平置きの2種類があります。物流のための荷捌き駐車スペースもあります。バイク駐車場もあります。ところが、よくよく聞くと時間貸しのスペースは無く「定期貸し」のみ。
通常、乗用車の定期貸しの駐車場には「P」マークを掲げません。一時利用と思い込んで誤進入する車両を防ぐため当たり前の措置ですが、なぜ地上の表示に、わざわざバイク駐車可能のような表示をしたのでしょうか。
「入ってきたら、常駐する警備員が説明するように言われている」と係員は説明するのですが、地上の入出庫口には四輪車用に立体式と平置きの満空情報が掲出されています。四輪車にはこれだけきめ細かい表示ができるのに、バイクは別モノ?
じつは、都心の地下駐車場では、こうした例が少なくありません。
東京都千代田区有楽町駅の近くで最大規模の収容台数を誇る地下駐車場のケース。ここは公道に面した駐車場案内にはバイク表示はありませんが、地上の駐車券の発券機には、こんな説明が小さく貼り付けてあります。

「自動二輪の時間貸しは取り扱っておりません。誠に恐れ入りますが、他の駐車場をご利用下さい」
バイクだから簡単に方向が変えられると事業者は思っているかもしれませんが、駐車場のほとんどは一方通行です。後続車両が続いた場合はインターフォンで問い合わせすることも、方向転換することもできません。
前述の警察庁通達では、都道府県警察に対して、次のように命じています。
「交通の安全と円滑の確保を担う交通警察としても、自動二輪車等が駐車可能な駐車場の整備は重要な課題であることから、自動二輪車等の駐車需要や地域の交通実態を踏まえ、地方公共団体、道路管理者、民間事業者等に対して、自動二輪車等の駐車需要が認められる場所において、既存路外駐車場における自動二輪車等の利用を可能とする設備等の整備や自動二輪車等が駐車可能な路外駐車場の新設が図られるよう働き掛けること」
バイクだと駐車を断る“なんちゃって駐車場”の存在。名実ともに都心に止められる駐車場が増えるのは、いつになるのでしょうか。
Writer: 中島みなみ
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。



