奈良県「助人トンネル」ケーブル垂れ下がりバイク転倒死亡事故 奈良県の中間報告を2023年1月に公表

奈良県の荒井正吾知事は2022年12月12日の会見で、「助人トンネル」ケーブル垂れ下がりバイク転倒死亡事故について、2023年1月中にも県独自の発生の因果関係、再発防止についての中間報告を取りまとめることを明らかにしました。

再発防止の徹底、安心の説明を

 2022年5月2日12時45分頃に奈良県十津川村川津の国道168号「助人トンネル」で発生したケーブル垂れ下がりバイク転倒死亡事故は、普通自動二輪を運転していた53歳男性が死亡、大型自動二輪を運転していた31歳会社員が頸部打撲の軽傷でした。8カ月目を迎えた現在も捜査が続いています。

事故を契機に、トンネル手前にはライダーへの注意看板が設置されたが、トンネル事故はスピードの出し過ぎだったのだろうか
事故を契機に、トンネル手前にはライダーへの注意看板が設置されたが、トンネル事故はスピードの出し過ぎだったのだろうか

 奈良県の荒井正吾知事は、会見で次のように話しました(2022年12月12日)。

「再発防止はなかなか難しいが、ケーブルのぶら下がりがどうして起こったのか。ケーブルがなければ同種再発は絶対ないが、電線のあるところでの再発防止をどのように徹底するのか。徹底したから安心だということを管理責任者である私に説明できるように、来年1月までに持ってきてくれと改めて言いました」

 この事故はトンネルの補強工事中に起きました。天井照明のために供給する電源ケーブルが側壁に移設され、大型連休中のため作業は休止していましたが、別の大型車両が移設ケーブルに接触。その後にバイクが通行し、ケーブルの垂れ下がりを原因とする転倒につながったとされています。

 しかし、ライダー、大型車両、道路管理者である奈良県の関係について明らかになったことは、今のところありません。

2023年1月に転倒死亡事故に関する中間報告を出すと話す奈良県・荒井知事(2022年12月12日)
2023年1月に転倒死亡事故に関する中間報告を出すと話す奈良県・荒井知事(2022年12月12日)

「私どもは(道路管理者なので)捜査には間接的な協力にすぎない。再発防止につながる捜査結果が出たら、それに越したことはないが、(奈良県独自の)調査でないとできないことがある。捜査結果が出ないと調査しないということではなく、再発防止に走れと(指示している)」(荒井氏)

狭いトンネルの通行ルール、再考の必要も

 助人トンネルと、その周辺の同種のすれ違いがしにくいトンネルの手前には、8月にバイクと大型車のそれぞれに向けた注意看板が設置されました。大型車両向けの注意看板には、こう書かれています。

旧道、新道関係なく、工事関係車両は道路環境に熟知する運転者だけではない
旧道、新道関係なく、工事関係車両は道路環境に熟知する運転者だけではない

「この先トンネル路肩注意」

「トンネル対向注意」

 トンネルのある国道168号は、一方で高規格化の工事が着々と進んでいます。いままでの道路の拡幅だけでなく、新たなトンネルを貫通させ新ルートによる拡幅道路で、現在も大型車両が通行していますが、その注意喚起は具体的ではありません。

「看板の意味はあいまい。減速、路肩走行注意は当然のこと。はずかしながら書くとすれば、このトンネルは狭いから気を付けましょうと書くのが普通かもしれない」と、荒井氏は不十分さを認めました。

 ただ、トンネルの通行では高さ制限はありますが、車幅による制限はありません。運転者が気を付けるしかないのですが、トンネルに入ってくる対向車を運転者が選ぶことはできません。こうしたルール作りについては、国土交通省の協力を求めました。

狭いトンネルには路線バスも走る。補修工事でトンネル内はさらに狭く、大型車にとっては走りにくかったのかもしれない
狭いトンネルには路線バスも走る。補修工事でトンネル内はさらに狭く、大型車にとっては走りにくかったのかもしれない

「私の持論だが、安全規則は国が中心になってやってもらわないと、奈良県だけで解決できる話ではない。他県で従来通りだと事故が起きる場所が変わるだけ。道路の安全は国が全面的に責任持ってやってもらうのが一番良いと思う」

 中間報告の結果を見た上で、荒井氏は国への働きかけを行なう可能性があることも示しました。

【画像】バイク死亡事故発生現場「助人トンネル」の現状を見る(7枚)

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Writer: 中島みなみ

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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